ふたごとリスの騎士、作戦を立てること
「むむむむ! じゅうじんどもを見ていたら、もりもりとやる気になったでござる! いくぞー!」
突然ボーリスさんが興奮して、ぴょーんと跳びあがりました。
「いけない!」
あたしは慌てて、ジャンプしたボーリスさんをキャッチします。
あんまり運動は得意じゃないけど、今日は上手にキャッチできました。
ボーリスさん、あたしの手の中から顔と尻尾だけを出す感じになっています。
「どうしてとめるのだ」
「だって、ボーリスさん今、いきなりやるぞーってゆったでしょ。一人でだだだーって行っちゃったら、みんなこまるもん」
「むむむ」
あたしの手の中で、ボーリスさんは落ち着いてきました。
「ちぇー。ししょーが行くなら、僕だって行こうと思ってたのに」
「お兄ちゃんが行ったらつかまっちゃうでしょ! 魔女に食べられちゃうよ!」
「えー! 僕はししょーにワザを教わって、強くなったんだぞ!」
お兄ちゃん、そのへんの枝をひろって、ぶんっと振ります。
そしたら枝が天井に当たって、コキーンと音がしました。
「むっ、まずい! あなの中にひくでござる!」
「う、うんっ」
ボーリスさんに言われて、みんなであわてて穴の中に引っ込みます。
お兄ちゃんは、腕がじーんとしびれてるみたいです。
「ヘーゼルどの! てきちで大きなおとをだすとは、きがゆるんでいるでござるぞ!」
「うっ、ご、ごべんなざい」
お兄ちゃん、ボーリスさんに叱られてちょっと涙目です。
でもボーリスさんはさすがで、怒りっぱなしじゃありません。
「わかればいいのでござる。ひとりではなく、みながきけんになるでござるからな。ヘーゼルどのは次からは、きちんと気をつけられるゆうしゅうなお子だと、せっしゃはしんじておる」
「う、うん! ちゃんと気をつけるよ!」
「えらいでござる!」
「えへへー」
あっという間にお兄ちゃんの機嫌が直っちゃいました。
あたしたちは、しばらく出口の穴の奥でじーっとしてました。
でも、とくに穴の外に動きはないみたい。
ボーリスさんがあたしの手からちょろっと抜け出して、外を見に行きました。
「グレちゃん、ボーリスさんがまた走っていきそうになったら、尻尾をかんで止めてね」
「ぶいぶーい」
グレちゃんはお鼻を鳴らして返事をすると、てくてくとボーリスさんの後ろについていきます。
二人は、じーっと外を見ているみたいです。
ボーリスさんの尻尾がぶんぶんと振られます。
グレちゃんのお尻がふりふりされてます。
「だいじょうぶでござるな。ちょうどみまわりがいなかった」
「ぶっぶ」
ふたりはいっしょに戻ってきました。
「しかし、ちょっと大変じゃのう。リスの旦那は強いからいいが、わしらノームは魔女どころじゃない。獣人に見つかってもおしまいじゃ」
「うむ。わざをきたえてたたかえるようになるにも、おぬしらのうごきでは10年くらいかかるな」
「それまでの間に、みんなおやつになっちまうわい」
ノームさんが肩を落としました。
「戦えないとだめなのかなあ」
あたしはふしぎに感じました。
獣人はこわいけど、さっきボーリスさんが話してた、お耳やお鼻に辛い木の実を入れたり虫をくっつけたりして、力がなくっても何とかなる方法。
これをやればいいんじゃないかな。
そう思ったことを喋りました。
「そう言えばそうじゃった……!」
ノームさんが眼をきらきらさせます。
他のノームさんたちも集まってきて、なんじゃなんじゃとにぎやかになりました。
「皆の衆! わしらは今まで、魔女フォクシーにいじめられておった! 獣人のおやつにされたり、面白半分で穴を埋められたり! じゃが、今わしらにはリスの騎士ボーリスの旦那がおる!!」
「おー」
「おー」
「これは、地の底の神が与えてくれたチャンスじゃ! ボーリスの旦那を先頭に、今こそノームは立ち上がり、反撃をするのじゃー!」
「おおー」
「おおー」
なんだかノームさんたちが盛り上がっています。
お兄ちゃんもいっしょになって、おー! とか言ってます。
「グレーテどのは、よくじょうきょうを見ている。よきことでござる。それはだいじでござるからな」
ボーリスさんがあたしの肩の上に駆け上がってきて、ほめてくれました。
「えへへ。でもボーリスさん。あたしは戦ったりとかこわいし、ぶきだっていたそうでやだし、あんまり役に立ってないと思ってたの」
「たたかうことばかりではない。うしろから見ているグレーテどのだからこそ、ぜんたいを見たはなしができるのでござる。おぬしのひとことで、ほれ、ノームたちはやるきになった!」
ノームさんたち、あちこちから真っ赤な木の実とか、にょろにょろした虫を集めてきてます。
これを棒にくっつけたり、虫さんと協力したりして、獣人と戦うのです。
「みんな、じぶんにあったやりかたというものがある。グレーテどのは、ぜんたいを見ておもったことをいう。それがいちばんよいのでござろう。それもまた、よき力でござる」
ボーリスさんは、あたしのほっぺをさわさわしました。
これ、なでてくれてるのかな?
ちょっと嬉しくなったあたしなのでした。




