リスの騎士、訓練すること
「よし! そうだ! まつぼっくりを、こう! こう!」
ボーリスさんがピュンピュンと、松ぼっくりがついた枝を振り回します。
「お? こうか? こうか?」
「こうじゃろ? こうじゃろ?」
それをマネするノームさんたち。
ボーリスさんが強いので、みんなで剣を習ってるみたいです。
「えいっ、えいっ!」
お兄ちゃんも、木の枝を振り回します。
ちっちゃい人たちが、みんなで棒を振っているのは、ちょっと可愛いなって思いました。
みんな途中から、自分で考えた振り方になってるし!
「ぷぷー!」
「こらーグレーテ、わらうなよー!」
思わず笑っちゃったら、お兄ちゃんに怒られました。
だって、お兄ちゃんもボーリスさんみたいな棒の振り方してないんだもん。
あたしが笑ってたら、ノームの女の人たちが、ちょいちょいと袖を引っ張ります。
「お嬢ちゃん、ちょっと手伝ってくれないかい」
「男たちはあの有様だからねえ。ほんと、いつまで経っても子供なんだよ」
「そうだねえ。お兄ちゃんはこどもっぽい!」
あたしはうんうん言いながら、ノームさんたちについていきました。
到着したのは、あたしたちが入ってきた穴。
そこの周りが壊れて広がっています。
これ、獣人が入ってきて、ボーリスさんがやっつけた後なんだって。
「このままじゃあ、たくさん獣人が入ってくるかもしれないだろ?」
「私ら、おやつにされちまうよ! その前にまた道を狭くしないとねえ」
「ノームさんが食べられちゃうのはかわいそう! あたし、何したらいいの?」
「お嬢ちゃんは大きいから、そっちの大きな石を運べるだろ? そいつを積み上げてほしいのさ」
「私らが、石の隙間を泥と小石で埋めるから」
「分かった!」
あたしは、うんしょ、うんしょ、と石を運びます。
それを入り口まで持っていって、どん、と積み上げるんです。
途中で、うりぼうのグレちゃんが手伝いにやって来ました。
「ぶ、ぶ、ぶ」
「グレちゃん! そうだなあ。グレちゃんは石をはこべないよね。えっと、じゃあ……泥をこっちに集めてくれる?」
「ぶいぶいー!」
グレちゃん、やる気満々です!
あたしが石を持っていく横で、お鼻を泥に突っ込んで、「ぶぶぶぶぶー!」と一気に運んできます。
「すごいすごい! たくさん運んでる!」
「やるねえうりぼう!」
「ちっちゃくても猪だねえ!」
ノームさんたちも大喜び。
グレちゃんはあちこちから褒められて、「ぶっぶー!」と嬉しそうです。
あたしが積み上げ、グレちゃんが足もとを泥で固めて、そこにノームさんたちが小石を詰め込んでいきます。
これが乾くとカチカチになって、頑丈になるんだそうです。
「もっとも、獣人がどしーんとぶつかってきたら壊れちゃうんだけどね」
「それでも遠目で見て、穴が狭いなって見えればやって来なくなるのさ。大事大事」
そういうものなんだなあ。
じゃあ、頑張って穴を小さくしないと!
ふうふうと汗をかきながら石を運んでいたら、結構積み上がってきました。
「その辺にして、お茶にしようじゃないかい」
ガラガラと台車に載って、ノームのお茶がやって来ます。
あたし用の器は、ノームさんのたらいみたいです。
そこに、ひんやりとした甘いお茶が入っていました。
「木の根っこを煮詰めて作るお茶でね。そこから甘い味が出てくるのさ」
「お菓子もお食べよ! お嬢ちゃんなら、私ら十人分くらいペロッと食べちゃいそうだね!」
「二十人分くらい食べちゃうかも!」
あたしが言うと、みんなどっと笑いました。
「ぶ、ぶ、ぶ」
グレちゃんはお茶を飲もうとしているけど、お鼻が汚れたままです。
あたしはポケットからハンカチを出して、グレちゃんのお鼻をふいてあげました。
「ぶいぶい」
グレちゃんが、ぎゅうぎゅうと、あたしの手にお鼻を押し付けてきます。
お礼を言ってるのかな?
「お茶が終わったら、あっちに私らが使ってる泉があるからね。水浴びをして汗を流してお行き」
「今夜はゆっくりと休みなよ? お嬢ちゃんたちは、明日には旅立つんだろう?」
「そうなのかな? たぶん、そうなのかも」
ボーリスさんの予定は聞いてないけど、あのリスの騎士さんは魔女をやっつけるつもりでした。
だから、ノームさんたちの村から、すぐに出ていくと思います。
今ここに残って、ああして戦い方を教えているのは、あたしやお兄ちゃんを休ませるためかもしれません。
「しかし、なんであんたたちを連れて行くんだろうねえ。あんたたちが良ければ、ずうっとここにいたっていいんだよ?」
ノームのおばさんは優しく言ってくれました。
あたしも、ボーリスさんがずうっとあたしたちと一緒にいる理由は分かりません。
だけど、あたしたちだってまだ家には帰れないんです。
あたしたちが帰ったら、他の子供が生け贄になっちゃうから。
「ボーリスさん、何か考えがあるのかも……?」
「難しいねえ。何しろ、リスの顔じゃ何を考えてるかわからないからね!」
ノームのおばさんが言うと、周りのノームさんたちが、もっともだ、もっともだ、と大笑いです。
あたしもなんだか楽しくなって来ちゃいました。
みんながどうして笑ってるのか分からないグレちゃんは、不思議そうにあたしたちを見て首を傾げたのでした。




