地底の世界に赴くこと
ノームさんは、岩をどけると穴の中にひょいっと飛び込みました。
あたしたちも続きます。
あれ? この岩、見た目より全然軽くて、中身はからっぽです。
軽いから、小さいノームさんでも運んだりできるんだね。
「グレーテ、ほら、手!」
先に飛び込んだお兄ちゃんが、あたしに向かって手を伸ばしています。
穴って言っても、あたしやお兄ちゃんが入ると、腰から上が出ちゃうくらいの浅さです。
あたしはお兄ちゃんに手を引いてもらって、転げ落ちないように注意して穴に入りました。
「それじゃあ行くぞい。わしについてくるんじゃ。段々深くなるからのう!」
ノームさんはそう言うと、こっちをチラチラ振り返りながら先へ行きます。
続いて、あたしとお兄ちゃん。
立っては歩けないから、膝をついてハイハイするみたいに進むんです。
頭のすぐ上には地面があって、今にもつっかえそう。
「上がくずれてこないかなあ」
「大丈夫じゃない? だってノームの人たち、ずーっとここ通ってるんでしょ。なんか魔法みたいなのでがんじょうになってるんだよ」
「そっかー」
お兄ちゃんは結構物知りなのかもしれません。
あたしはちょっと見直しちゃいました。
そう言えば、あたしが絵本を読んでる時、お兄ちゃんは横で聞いてることが多いのでした。
あたしが知ってる絵本の中身は、お兄ちゃんも全部知ってるのです。
「ほら、だんだん天井が高くなっていくよ」
お兄ちゃんの言う通り、頭の上の地面と手の下の地面が、どんどんはなれていきます。
もう少ししたら、立って歩けそう。
「うしろはいじょうなし。なるほど、ノームたちのぼうびはかんぺきらしい」
あたしたちの後ろには、ボーリスさん。
グレちゃんに乗っているみたいで、時々、ぶい、ぶい、と言う鼻の音が聞こえてきます。
「どうしたグレ」
「ぶうー」
「あちこちをくんくんしておるな。キノコのかおりがするのか?」
「ぶいー!」
「たべてもいいが、少しだけだぞ。おいていかれてしまうゆえな」
「ぶっぶっ♪」
グレちゃん、キノコ食べてる?
あたしも振り返って、グレちゃんがもぐもぐしてる姿を見たいです!
だけど、地下はまだまだ狭いので、後ろを見たりできません。
「あーん、早く広くなってよう」
そう思いながら、どんどんと進むしかないのです。
先に先に行きますと、やっとあたしが立って歩けるようになりました。
道も両手を広げられるくらい広がっています。
「へへっ、なんか冒険みたいだね」
お兄ちゃんがうれしそうに言いました。
「もう、冒険そのものだと思うよ!」
「そっか!」
お兄ちゃんがスキップしながら前に出ました。
そうして、ノームさんをひょいっと拾います。
「おおー! 高い高い! ちょっと待ってるんじゃぞ。もうすぐみんな集まってくるぞい! おーい、おーい皆の衆ー!」
周りは、真っ暗闇じゃありません。
なんだかボウーッと薄暗くって、でも夕方くらいの明るさ。
その理由が分かってきました。
地下はあちこちから、半透明な石が顔を出してて、それがふんわり光ってるんです。
「きれいー」
「ありゃあな。わしらが掘った鉱石じゃよ。それがぼんやりと光るんじゃ。原理はよう分からん」
ついに、お兄ちゃんと並べるくらい広くなりました。
そこで、あたしもちょっと小走りで前に出ます。
「わっ」
思わず声を出しちゃいました。
だってそこには、たくさんのピカピカ光る石が並んでいたんです!
それは、石を抱えた数えきれないくらいいっぱいのノームさんたちでした。
「おかえりー」
「なんじゃなんじゃ。人間連れてきたのかー」
「おいおい、大丈夫なのかー? 後ろから魔女の手下が来てないか?」
「んー、誰も来ないから大丈夫じゃないかのう?」
お兄ちゃんの手の上で、ノームさんが背伸びしながら振り返りました。
そしたら後ろで、「えいやー! えいやさー!」と声が聞こえます。
「ぶーいー!」
「来たっぽい? だけどししょーがやっつけた!」
お兄ちゃんが言うと、ノームさんたちはみんな、「おー」「おおー」とびっくりしました。
ボーリスさんが戻ってきます。
彼が握っている木の枝の槍には、たくさんのビスケットが刺さっていました。
「ゆだんもすきもござらんな! まじょの手下に、小さいものがおったとは! しかしせっしゃがいればこのとおり」
ボーリスさんは、重なったビスケットを高く掲げました。
わーっと、ノームさんたちが喜びます。
「やっつけたのか!」
「魔女に勝てるのか!」
「なんじゃこのすごいリス!」
「ボーリスさんだよ! リスの騎士なの!」
あたしの言葉に、みんな、「へー」とか「ほおー」とか感心します。
「魔女の手下だって次々やっつけちゃうの!」
そうしたら今度は、「おおー!」「すごい!」「強い!」とか感心しました。
なんだろう。
ノームさんたち、すごく素直なので喋ってると気持ちいい。
「そういうことじゃ! という事で、ボーリス殿は魔女のところへ行く! わしらの村を通ればすぐというわけじゃ!」
お兄ちゃんの手の上にいるノームさんが説明すると、みんなふんふん、とうなずきました。
そして、村の方へと案内してくれます。
こうしてあたしたちは、魔の森の下にある、不思議なノームの村にやって来たのです。




