インタビュー・ウィズ・村人
村の入口をくぐる一行。
先頭はニンジンを背負った白ウサギ、ピョンスロット。
後に続いて、妙に自信満々な姫騎士ココア。
その後に、おどおどしながら周囲をきょろきょろする、メイド騎士ナーデ。
最後に、白馬のミルクレープ。
空から羽ばたきが聞こえて、ミルクレープの頭に真っ白なフクロウが止まった。
「ていさつしてきたか。どうだった、ヴィヴィアン」
「ホッホーウ」
白フクロウのヴィヴィアンは、翼を広げて何事か言った。
ピョンスロットは、うんうん、とうなずいている。
「どうしたのピョンスロット卿。ヴィヴィアンさんの言葉は、わたくしには分からないわ! 一人でうんうん納得しないでくださいな!」
ココア姫が、ウサギの騎士を後ろから持ち上げる。
バンザイしながら抱き上げられたピョンスロットは、ココアの腕の中でぐるっと回転し、姫騎士を見上げた。
「うむ。ヴィヴィアンが先に村をていさつしてきたのです。やっぱりどこまで行っても、かっきがなかったようですな。こどものかずもあまりおおくないとか」
ピョンスロットの言葉に、ナーデ目を伏せた。
「残念です。ピョンスロット卿を見たら、子どもさんたち大喜びしそうなのに……」
「あんまりよろこばれて、もってかえられそうになったこともありますな。あれはこまった」
「まあ!」
ナーデが目を輝かせた。
ココア姫はむすっとして、わしわしとピョンスロットのお腹をもみ始める。
「むわーっ、な、なにをされるのかー」
「あなたがお持ち帰りされたら、わたくしたちが路頭に迷うでしょう! ぜーったいにお持ち帰りされたらだめよ!」
「あっあっ、姫様うらやましい! 私にもピョンスロット卿をもみもみさせてください!」
少女騎士が二人揃って、ウサギをもふもふする。
村の入口からすこし進んだところでこの有様なので、全然先に行くことができないでいる。
これを見かねて、ミルクレープが鼻先を突っ込んできた。
ココアとナーデが、白馬の鼻息で我に返る。
「あっ、い、いけない」
「思わずもふもふに全力を出していました……!」
「たすかった。かんしゃするぞミルクレープ!」
「ブルル」
というわけで、ヴィヴィアンが見てきた村の様子を確かめるべく、村人たちへの聞き込みを始める一行なのだった。
以降、村人たちへのインタビュー。
「魔女フォクシーが出てきてから、世界中こんなもんさ! えっ、ボンボン王国はちがう? いいなあ……俺たちもボンボン王国に移住したいよ」
「魔女はね、最初は小さい森だった魔の森を、魔法の力で大きくしちまったのさ。あいつはお菓子の家に住んでいて、近づいた子どもをみんな食べちまうんだ」
「魔の森が大きくなりすぎて、子どもが入ってこなくなったのじゃ。だから魔女は、お菓子を魔物に変えて周りの国をおどし、子どもを生け贄として連れてこさせるんじゃよ」
「魔女の手下には武器が通じないんだ。軍隊だってかなわなかったんだぜ。もうだめだあ」
「ウサギさんかわいいねえ。もらってもいい?」
「うーわー」
途中、ピョンスロットが持ち帰られそうになった。
慌ててココアとナーデが彼を取り戻した。
「ほ……本当に持ち帰られそうになりましたわね」
「子どもには注意しないとですね! ピョンスロット卿、ちょうど抱っこしやすいサイズですもんね」
「めんぼくない」
謝ってはいるが、どーんと胸を張るピョンスロット。
真の騎士は後ろ向きな気持ちは持たないのだ。
だが、彼をお持ち帰りされてはたまったものではない二人の少女。
「むっ」
ピョンスロットを胸元に抱きかかえているのはナーデ。
いつもはしている手袋を外し、むぎゅっとウサギの騎士を素手で抱きしめる。
「どうしててぶくろを外すのですかな」
「手袋をしていたら、ピョンスロット卿のもふもふが存分に味わえないじゃないですか。役得役得……」
「ちょっとナーデ! 次はわたくしの番ですからね! ひとりじめは許しませんからね!」
「はぁい」
二人はかわりばんこにピョンスロットを抱っこ……護衛しながら聞き込みを続けることになった。
結局、この村で集まってきた情報は、魔女フォクシーが働く悪さのことばかり。
魔の森を根城にする、その恐ろしい魔女は、この辺りの国々ですら手に負えないでいる。
結果、魔女の言いなりに、子どもたちを次々に生け贄として魔女に送っているのだ。
「これはっ、許すまじですわね!!」
むふーっと鼻息も荒く、ココア姫が憤る。
ナーデもまたうなずいた。
「ココア様の正義を見せつけてやる時ですねっ。私は応援してます!」
「何を言ってるの。あなたも来るのよ」
ココアはナーデの手をがしっと握りしめると、村の出口に向かって歩いていった。
向かうは魔の森。
姫騎士ココアは、正義の騎士として魔女を見過ごしてはおけない。
ところで。
「ひめさま、まのもりはどっちにあるか分かるのですかな?」
「あっ」
それを聞いていなかった。
「こっ、これから聞くんです!!」
顔を真赤にしながら戻ってくるココア姫。
「できれば、ずうっと知らないままでも私はいいんですけどぉ」
ナーデのつぶやきは、無視された。
そこに、駆け込んでくる者がいる。
村の入口にたどりついたのは、狩人らしき男性。
肩で息をしながら、
「た、大変、大変だっ、たいっ」
「落ち着きなさいな。何かあったの?」
真っ先に尋ねるのはココア。
狩人は彼女を見て、一瞬ぽかーんとした。
銀色の鎧を着た女の子なんて、この村にいるような人間には見えないからだ。
「まかせよ。われわれはきし。何かおこったのならば、たちまちかいけつしてみせよう」
今度はウサギが喋った。
狩人の頭は真っ白になり、考えることをやめた。
「あの、森に、魔女の手下の獣人が……」
「出ましたわね!!」
「でたようですな」
「出たんですかぁ!?」
三者三様の言葉を口にして、一行は立ち上がる。
向かうのは村の外れ。
魔の森に近い、雑木林だ。




