ふたご、木の実を食べること
ぐう、とあたしのお腹が鳴りました。
お腹が減ったのです……!
「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
あたしが裾をひっぱると、お兄ちゃんも悲しそうな顔をして振り返りました。
お兄ちゃんもお腹が減ったのです。
だけど、あたしたちは食べ物をもってきてません。
魔の森に入っても帰れるように、道にまくためのビスケットを持ってきたけど、馬車の中でみんな食べちゃったのです。
あたしたちは育ち盛りなのでしょうがないのです。
「むむ、おなかがへったようでござるな」
先を歩いていたボーリスさんが振り返りました。
さっき、ボーリスさんは一人でドングリを食べてたので、ずるいのです。
「なぜせっしゃをうらめしそうに見るのだ……。せっしゃのドングリは、にんげんにはしぶくて食べられないぞ」
「そうだけどー。僕たちはお腹ぺこぺこなので」
一度お腹がすいたと思ってしまうともう止まりません!
あたしもお兄ちゃんも、その場にすわりこんでしまいました。
「おなかへった……」
「おなかへった……」
「わかったでござる……! ちょっとまっているのだぞ」
ボーリスさんはうなずくと、するすると木を登っていきました。
ずうっと上の方から、「えいやーっ」とかけ声が聞こえてきます。
しばらく、木の上でボーリスさんが駆け回る音がしました。
あたしとお兄ちゃんは顔を見合わせます。
「僕たち、わがままを言っちゃったかもしれない」
「そうかもしれないね。どうしよう」
「ボーリスさんがもどってきたら、ごめんなさいしよう」
「うん、そうしよう」
きょうだい会議でそう決定します。
少しすると、上の方でバタバタいう音がやみました。
「そなたらー! そこはあぶないから、どいておれー」
「ボーリスさん! 僕たち……」
ボーリスさんの声がしたので、お兄ちゃんが慌てて空を見上げました。
そしたら、お兄ちゃん、慌ててあたしの所に逃げてきます。
「あわわわわ!」
「ど、どうしたのお兄ちゃ……」
さっきまでお兄ちゃんがいたところに、どさっと大きなものが落ちてきました。
それは、木の枝で編まれたかごです。
その中に、食べられそうな木の実がどっさり入っていました!
「すまぬすまぬ。この大きさになると、せっしゃのからだでははこべなくてな」
トテトテトテっと、木の幹を駆け下りてくるボーリスさん。
「これでどうだ、子どもたちよ。おなかがふくれるであろう。にくやしおけは、せっしゃにこころあたりがある。少しすすんだらな」
なんと、ボーリスさんはあたしたちのワガママを聞いてくれていたのです!
あたしもお兄ちゃんも、ちょっとジーンとして、二人そろって頭をさげました。
「ワガママ言ってごめんなさい!」
「きにすることはない。でしがひとりだちするまで、せわをみるのがししょうだからな」
ボーリスさんは大した事ではない、みたいなお顔をして、おヒゲをなでました。
そっか。
今のボーリスさんは、お兄ちゃんのししょーさんなんでした。
「さあ、はやくたべるとよい。いつまた、まじょの手下が来るともわからぬからな」
「はい! ししょー、ありがとう!」
「ボーリスさんありがとう!」
あたしたちはボーリスさんにお礼を言うと、木の実を食べることにしました。
木イチゴとか、桑の実とか、甘い木の実がいっぱいです。
でも、森の外ならもっと低い所になっているはずなのに、ボーリスさんはすごく高い場所で木の実を取ってきました。
なんでだろう。
「まのもりは、木々もフォクシーをおそれて、高いところにきのみをつけるのでござろうな。下にはあまりどうぶつがいないが、上にはとりやけものが少しいたからな」
「森は、魔女のことがきらいなの?」
あたしが聞くと、ボーリスさんはうなずいたみたいです。
「どう考えてもそうであるな。フォクシーめは、じぶんがすんでいるもりにきらわれている。だからはらいせに、手下のじゅうじんを作ってもりであばれさせてるのだ」
「わるいやつだ!」
お兄ちゃんが立ち上がって怒りました。
「あばれたりしちゃいけないんだぞ!」
でもお兄ちゃん、口とか手が、木の実の汁でべとべとです。
ボーリスさんが大きな葉っぱを持ってきたので、それであたしたち、口と手をふきました。
あたしもお兄ちゃんも、お腹いっぱいになりました。
でも、ちょっとだけ木の実が余っています。
「ポッケに入れてもってけばいいんだよ」
「でもお兄ちゃん、ポケットに入れたらつぶれちゃうよ? ベトベトになっちゃう」
「うーん、じゃあ、手に握ってく?」
「あったかくなっちゃう……」
うーん。
あたしたちは考え込みました。
余った木の実をどうしよう。
むりして食べたら、おなかが痛くなっちゃうかもしれません。
そうしたら、あたしの後ろで、ガサガサって音がしました。
「なにやつ!」
ボーリスさんが、ぴょーんと動きます!
どこからか取り出した木の枝を持って、あたしの肩に飛び乗りました!
「フォクシーの手下か! でてこい!」
だけど、ボーリスさんの声に答えたのは、こわい獣人じゃありませんでした。
「ぶ、ぶいー」
小さい鳴き声がします。
しげみから、おそるおそる鼻を突き出してきたのは、ブタさんでした。
「森のなかに、こぶたがいる!」
あたしはびっくりしました。
「待ってグレーテ! 毛がはえてて、しましまになってる! これ、うりぼうだよ!」
「ぶいー」
現れたうりぼうは、じいーっと余った木の実を見つめているのでした。




