いざ魔の森! ふたごとリスの騎士、出発のこと
あたしたちは、ボーリスさんに自己紹介します。
「僕はヘーゼル。グレーテのお兄さんだよ」
「あたしはグレーテ。ヘーゼルの妹。だけど生まれた時間はほとんど変わらないんだけど」
「ふたごであったか」
なるほどなるほど、とリスさんはうなずきます。
それから、さっきクマ男をやっつけたドングリを、カリカリと齧りました。
「うんどうの後のどんぐりは、びみでござるな」
「うええ」
お兄ちゃんが舌を出しました。
お兄ちゃんも私も、生のドングリを食べてみて、すっごく渋くて大変だったことがあるのです。
だけどボーリスさんはリスだから、ドングリが全然だいじょうぶみたい。
「それで、これからどうするでござるか?」
ボーリスさんは、あっという間にどんぐりを食べ終わって、あたしたちに聞いてきました。
「あたしたち、おうちに帰りたい……けど」
お兄ちゃんがむつかしい顔をします。
「うん、僕たちがかえったら、ほかの子どもがつれてこられちゃう」
そうなのです。
魔女は決まった数のいけにえをよこすように、まわりの国に伝えます。
この数にならないと、魔女は怒って手下をまわりにけしかけて、暴れさせるんです。
そうやって、たくさんの村や町がなくなってしまったそうです。
王様の兵隊さんでは、魔女の手下には勝てません。
魔女の手下の獣人たちは、とっても強いし、しかもふつうの武器じゃ傷をつけられないんです。
だから、国はだまって魔女の言うことを聞くことにしました。
「むむむむ!!」
あたしの説明を聞いて、腕組みをしていたボーリスさんがうなります。
しっぽがぴくぴくしてます。
「むむむむむむ!!」
かわいい耳が、ぴょんと立ちました。
そして、ついにボーリスさんが飛び上がります。
「なんということだ! けしからーん! まじょめ、なにさまのつもりか!」
リスさんって、あんなに高くジャンプするんだ……!
あんまりジャンプしすぎて、ちょっと低いところまで出っ張ってきた枝に、ボーリスさんがひっかかりました。
「うーわー」
ボーリスさんがじたばたします。
あたしとお兄ちゃんは慌てて駆け寄って、ボーリスさんをひっぱりました!
「あいたたた! け、けがぬけるー」
「がまんしてボーリスさん!」
あたしたちは、エイッと気合を入れてボーリスさんをひきぬきました。
「ぎえー」
すぽっと抜けたボーリスさん。
毛もちょっと抜けたみたいです。
「おひょー」
ボーリスさんが、どんぐり型に毛が抜けた頭をさすっています。
あたしは、痛そうなボーリスさんをなでなでしてあげました。
「むむむ、グレーテどののゆびは、ぷにぷにしててきもちよいでござるな」
ボーリスさんがうっとりします。
リスさんの毛って、ふわふわなのにちょっと硬くて、おもしろいです。
「そうゆうことで、あたしたちは森にいかないといけないの。ごめんね、ボーリスさん」
なでなでしながら、あたしは言います。
怖いし、いやだけど、あたしたちが逃げたらほかの子どもたちがひどいめにあっちゃう。
そういうの考えると、とってもいやだし、胸のところがきゅっとなる。
だから、あたしもお兄ちゃんも、行くって決めてるんです。
「よかろう。せっしゃも魔女フォクシーめに用があったところだ。どうこうしよう」
そしたら、ボーリスさんがそんなことを言います。
「用ってなに?」
お兄ちゃんが聞くと、ボーリスさんはおヒゲをなでながら当たり前みたいな顔をします。
「フォクシーめをやっつけるのだ。せっしゃ、旅のとちゅうではあるが、悪いものはみすごせぬ。あとは、おぬしらとかかわったいじょう、みすてるなどきしのなおれ!」
「なおれ?」
「なおれー?」
なおれってなんだろう。
あたしもお兄ちゃんも、くびをかしげました。
「こどもにはむつかしかったか」
ボーリスさんがちょっとしょんぼりしました。
なんだか難しいことばを使うリスさんです。
かわいいけど、実はすごく大人なのかもしれません。
「でもでも、ボーリスさんすげー! だって、魔女をやっつけるんでしょ? そうだ! ボーリスさん。僕をでしにしてよ! さっきとかすっごく強かったじゃん!」
「せっしゃのでしに!?」
「よろしくお願いします、ししょー!!」
「し、ししょう!? む、むむむ。し、しかたないでござるな。まの森では、子どもであっても身をまもれなくてはならない。せっしゃがおぬしらを、少しきたえてしんぜよう……!」
なんか、ボーリスさんのヒゲがひくひくしてます。
うれしいのかな……?
「ではゆくぞ、ヘーゼルどの! せっしゃのはしりについてまいれー!」
「ひゃあ、まってよししょー!!」
いきなり、ボーリスさんが走り出しました!
あわてて、お兄ちゃんがあとを追いかけます。
あっ、二人がいったら、あたしも置いてかれちゃうじゃない!
「もー! 二人ともまってー!!」
そういうわけで、あたしたち二人と一匹は、魔の森の中に飛び込んだのです!




