二人の騎士
小さな影と、中くらいの影がいた。
一つは、リス。
「ふうむ。みちが、二つにわかれておるな」
「そのようだねえ」
リスが、妙に人間じみた仕草で顔をくしくしと撫でる。
「せっしゃのヒゲがびんびんしておる。ま、であるな。まのものがいるぞ」
「へえ、そうかい」
中くらいの影は、リスの時代がかった言葉づかいに、適当なうなずきを返す。
それは、ビーバーだ。
リスとビーバーの二人……いや、二匹連れ。
奇妙な組み合わせだった。
彼ら二匹は、Y字路に差し掛かっているのだった。
「この先は……くんくん。森のにおいがするな」
「こっちはしおのかおりだねえ。海だよこれは」
「せっしゃはおよげぬわけではないが、水はおぬしのとくいぶんやであろう」
「そうだねえ。森はきらいじゃないけど、川がないと僕はあんまりかつやくできないねえ」
「では、みちはきまったな」
「きまったね」
リスとビーバーが、背中合わせになる。
「せっしゃは、森へいこう」
「それじゃあ、僕は海だ」
「「そのまえに」」
二匹をはさみ込むように、何者かが集団で現れる。
『この動物ども……、騎士のにおいがしやがるぜ』
『王国を盗りに言った魔女がやられたそうだ』
『そこにも騎士がいたそうだぜ』
空気から滲み出すように現れた彼らは、覆面を被った大男たちだ。
『魔王様の呪いを受けているってのに、まだ逆らうのか』
『この先に行く相談をしてたようだが、先はねえ』
『毛皮のえりまきにしてやる』
『帽子や手袋にしてやる』
「ほう」
リスが目を細めた。
ビーバーが肩をすくめる。
「君たち、あやまったほうがいいぞう。そこにいるリスは、せいけんをもったナイトリーダーとごかくにやりあえる、どうぶつきしきってのぶとうはだ。彼はやるきだぞ」
『へっ、リスが一体、何をできる……』
大男は半笑いで、武器を振り上げた。
その前で、リスは……どこからか棒が刺さった松ぼっくりを取り出す。
「うぬらになのるも、おこがましいが……めいどのみやげにおぼえて行け。せっしゃはボーリス。リスのきし!」
名乗ると同時に、リスの姿が掻き消えた。
『な、なにっ!?』
上だ。
飛び上がり、大男の武器を駆け上がったリス、ボーリス卿が、その腕を伝って走ってくる。
「おそいぞ、まものめ! えいやーっ!」
枝に刺さった松ぼっくりは、すなわち槍だ。
鋭く突き出された小さな槍が、大男の頭をちくちく、ちくちくと刺す。
『オボアーッ!? ま、松ぼっくりのくせにぃーっ!?』
衝撃を受けて、よろける大男。
彼の頭上でボーリスはジャンプし、回転しながら槍を振り回した。
「えいやさーっ!」
ぼいーんっと、松ぼっくりが大男に炸裂する。
大人と子供どころではない体格差だというのに、大男の体が吹き飛んだ。
そして、巨体が地面に叩きつけられ、泥人形に変わってしまう。
『ば、バカな! リスにやられただと!?』
「だから言っただろう。ボーリスきょうはつよいよ。ちなみに、僕もわりとつよい」
ゆうゆうと歩み出たビーバーが、大男たちの武器をかじった。
カリカリカリカリとかじって、あっという間に半ばからかじり折ってしまう。
「水のなかならもっとつよいけどね」
ビーバーはおざなりな動作で、くるりと回った。
尻尾が跳ねて、ぼいーんと大男を打ち倒す。
『や、やばい! こいつら強いぞ!! フォクシー様に伝えろ! どうぶつ騎士は想像以上……!』
「させぬぞ! うぬらのおやだまは、フォクシーか! ならばせっしゃがのりこんで、ふんさいしてくれよう!」
逃げ出そうとする大男に、ボーリスが追いつく。
そして、どこからかかじりかけのクルミを取り出し、これをカリカリとかじり、破片に変えてしまう。
その破片を、まるで手裏剣のようにどんどん飛ばしてくる。
『ぐわわーっ!?』
『まずいぞ! このリス、全ての攻撃に破魔のちからがある!!』
「さよう! せっしゃの手にしたものはすべて、せいけん!! つぎはこれだ!」
ボーリスはすばやく地面を掘った。
土の中には、いつの間に埋められていたのかドングリがある。
これをボーリス、次々に枝で突き刺し、ドングリの槍を作っていく。
それを次々に、大男たちに放り投げていくのだ。
『ぎょえーっ!?』
『ぎょわわーっ!』
「ボーリスきょう、そっちはまかせていいかな? 僕はうみににげたやつを、おっかけるよ」
「うむ。せっしゃはこやつらのあとをおう! そしてきゃつらのあるじである、フォクシーとやらをたおしてくるぞ!」
「わすれないでよ、ボーリスきょう。僕らのもくてきは、ナイトリーダーとごうりゅうすることだ。ま、僕はまだあえなくてもいいんだけど」
「ははは、わすれてはおらん! では、しばしのわかれだ、ケイきょう!」
「ああ。げんきでね!」
リスと、ビーバーの騎士が二手に分かれる。
リスは、森へ。
ビーバーは、海へ。
続きは、もう何日かあとのこと。




