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1・どうぶつ無双

ピョンスロットサイド。

「おしとおるぞ!」


「どいたどいたー!」


 カピバッド卿にまたがり、私はキャロンダイトを振り回す。

 群がる野菜の兵隊たちを、次々に叩いていく。

 キャロンダイトはニンジンゆえ、切ることはできないが、叩くことができる。


「うわーっ!」


「ぐえーっ!」


「ぎゃーっ!」


 魔女の手下は、悲鳴をあげて逃げまどう。

 こちらに攻撃しようにも、カピバッド卿の盾が正面にいる相手を弾き飛ばしていくのだ。

 疾走する彼の上を、私とヴィヴィアンが縦横に走り回る。

 ヴィヴィアンは飛べばいいのだが、カピバッド卿のふさふさとした毛が気に入ったようだ。


「ホウホーウ」


 翼を広げながら、カピバッド卿の頭の上でポーズを決めるヴィヴィアン。


「ヴィヴィアン、そこをふさがれるとまえが見えないー!」


「僕もたてでまえが見えないよー」


「な、なにー!」


 まさか我々は、前も何も見ないで走っていたのか!

 いかん、私もカピバッド卿も、頭の中がどうぶつになっているようだ。

 ここは落ち着いて、現状を確認せねば……。

 そう思った瞬間、我々はボンボン城の扉にドカーンとぶつかっていたのだった。


「ひゃー!」


「うわー!」


「ホーウ!」


 白きお芋の盾は、かんぬきがされていた門を、軽々と打ち破る。

 後ろで門を支えていた、魔女の兵士たちが「うわーっ!?」と悲鳴を上げながら、吹き飛ばされていく。

 カピバッド卿は、城の中に向かってころころ転がりながら突き進む。

 私は衝撃に打ち上げられて、空をくるくると舞った。


「ヴィヴィアーン!」


「ホッホーウ!」


 そんな私の背中を、ヴィヴィアンがしっかりとキャッチする。

 いや待て、そこは背中じゃない、頭の皮だ、のびるのびる。

 翼を得た私は、ぶらーんとぶら下げられながら、吹き抜けになった入り口を二階に向かって飛んでいく。

 周囲の燭台には、青白い不気味な明かりが灯っている。

 不意に、眼の前を真っ赤な輝きが通り抜けた。

 炎だ!


「来たか、ついに来たかウサギの騎士よ!! 我が魔剣をへし折った恨み、忘れてはおらんぞ!!」


「そのこえは、まじょのきしだんちょうか!」


 飛びかかってくる火の玉。

 これを、私はキャロンダイトで次々に打ち払う。

 悪しき炎では、このニンジンを美味しく焼くことなどできはしないのだ。


「わしもいるぞ! ふはは! ウサギめ、挟み撃ちにしてくれる!!」


「だいじんのベジマイ! ふたりがかりというわけか。よかろう! ヴィヴィアン!」


「ホウ!」


 私の声に答えて、ヴィヴィアンが足を離す。

 そこは、二階へと昇る大階段の踊り場。

 右の階段から騎士団長サルミック、左の階段からは、空飛ぶ大臣ベジマイ。


「サルミック! ここはわしにやらせろ! このウサギめ、わしの頭をポカポカと叩いたのだ!」


「うるさいぞベジマイ。俺とてこいつには恨みがあるのだ! 俺が先に焼きウサギにしてやろう!」


「れんけいがとれていないとは、なげかわしいな! ふたりまとめてかかってこい! むねをかしてやろう!」


 私はもふもふの胸を、ぽいーんと叩いた。

 サルミックの頭は、炎に包まれた骸骨なのだが、これがさらにごうごうと燃え上がり始める。

 ベジマイもまた額に青筋を浮かべて、怒りをあらわにする。


「ええい、吠え面をかくなよウサギ! ふうーっ!!」


 ベジマイが大きく息を吸い込んだと思うと、その口から何かを大量に吐き出した。

 それは、たくさんの小さなベジマイだ。

 みんな、手に手に針を持っている。


「この針で、全身をちくちくと刺してくれる!」


「邪魔をするなベジマイ! これでも喰らえ! ごぉぉー!!」


 サルミックは逆側から、私目掛けて炎を吐く。

 前門のベジマイ、後門のサルミック!


「なげかわしいといったはずだ! とーう!」


 私はあえて、炎の中に飛び込んだ。

 キャロンダイトが唸りを上げる。

 ニンジン色の軌跡が、炎を真っ二つに切り裂いていく。


「ぬう!」


 呻くサルミックの前で、二つに割れた炎が、迫ってきていたミニベジマイを巻き込んでいく。


「ああっ、わしの分身が! サルミック何をする!!」


「ベジマイこそ、俺が炎を吐こうという時に邪魔をするな!」


「けんかをするよゆうなどないぞ! とあーっ!」


 私は猛烈な勢いで、足元のふかふかじゅうたんを蹴る。

 飛び上がった先には、サルミックの胴がある。

 これをポーンっと蹴りつけると、私は宙返りした。

 そして、背後から迫る、残ったミニベジマイに向けて飛びかかった。

 振り回すキャロンダイトが、ベジマイたちを叩き落としていく。


「お、俺を踏み台にしただと!?」


「わしの分身がみんなやられた!?」


「おまえたちにかかわっているひまはない! ヴィヴィアーン!」


「ホーウ!」


 空中で、私とヴィヴィアンは再び合体する。

 今度は上手く、背中の皮を掴んでくれたようだ。


「ま、待てー!!」


 慌てる二人の敵を背に、私は一直線に上の階まで飛び上がっていく。

 目指すは、魔女の部屋。

 鏡の悪魔だ。

 きっと、ショコラーデ姫様もそこを目指しているはずなのだ!

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