表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/80

3・ききゅうそんぼうのあき

ピョンスロット語りです。

外から見た、ショコラーデ姫の今とこれからの説明。

「ひめ!」


「ショコラーデ姫!」


 なんたることだ!

 魔女の手下め、やってくれた!

 私はカボチャの兵士たちをなぎ倒し、飛び散る野菜の破片を跳び移りながら、我が主君の下へと戻る。

 オマール王子に支えられたショコラーデ姫は、顔色を真っ白にし、まるで眠っているようだ。


「くっ、このピョンスロット、いっしょうのふかく……!」


 私は魔女の動きを読めなかった、自分の不甲斐なさに、頭の毛をもしゃもしゃとかき回した。

 気持ちを落ち着けるために、キャロンダイトをカリカリと食べる。

 むむっ、ニンジンの栄養が脳に回ってきて、少し落ち着いた。

 そこへ、どこからか声がかかる。


「諸君、待ちたまえ。ショコラーデ姫が抱いた鏡をご覧」


「このこえは……マーチン!」


「マーチン殿だって!?」


 オマール王子が、声の主を探してキョロキョロとする。

 私は、チンチラの魔術師の気配を感じ、鼻をひくひくとさせた。

 風に乗り、チンチラと彼が持ってきたお野菜のにおいが漂ってくる。

 そこは……ショコラーデ姫の馬車の中だ。


「流石はピョンスロット卿。僕はここだよ」


 すうっ、と姿を現す青いチンチラは、馬車の荷物台の中にいた。


「まさか、ずっとにもつの中に!?」


「うん、実は最初から荷物の中に紛れ込んでいたんだ。ちょうどジャストフィットする隙間があったので、そこで野菜を食べながらずっと寝てた」


 チンチラの魔術師マーチンは、己のもふもふした毛皮をぺちぺち叩き、ほこりを落とす。


「それでマーチン、まてとはどういうことなのか。これはいちだいじだぞ」


「言葉の通りさ。ショコラーデ姫様は確かに、魔女の毒によって眠りの底に落ちた。だが、彼女は今は真実の鏡の主だ。覚めない眠りの中にあることを利用して、その魂はもう一つの魔女の城にいる」


 マーチンはお尻を振りながら歩き、ショコラーデ姫の膝に飛び乗った。

 そして、姫が抱きしめている鏡を、前足でぺちぺちする。

 私は鏡の中を見て、あっと声を上げていた。


「こ、これは……! ひめー! あとパーシハムきょう、またも君はひめのむなもとに! はれんちな! じちょうしたまえ!!」


「ピョ、ピョンスロット卿、落ち着きたまえ。どうやらパーシハム卿は、夢の世界に潜り込む術を知っていたようだ。今の姫様の護衛として、彼以上の逸材はいないだろう!」


「むむむー」


 私は唸りながら、しわが寄った眉間を前足でモミモミする。

 落ち着け、ピョンスロット。

 鏡の中のショコラーデ姫様は、ぐねぐねとねじ曲がった城の中を歩いている。

 それはまるで、現実とは思えぬ光景だ。

 燭台が、額縁に収まった絵が、飾られた壺が、人の顔を生やして姫を見つめている。あるいは、話しかけてさえいる。

 明かりは少なく、あの中も、昼なお暗い魔女の世界のようだ。

 こんな世界に、姫が一人で行かなかったことを、幸いと思うべきだろう。


「たのむぞ、パーシハムきょう。だがもどってきたらおしりをたたく」


「ナイトリーダーこわーい」


 戻ってきていたカピバッド卿が、あわわ、と震え上がるのだった。


「ではマーチン。私たちはどうすればいい? このままひめをおいてはおけぬ。おまもりせねばだろう」


「あ、ああ」


 マーチンはなぜか、短い手足で自分のお尻を押さえていた。

 私の言葉を受けて気を取り直すと、彼は咳払いした。


「夢の中の世界。そこが魔女の世界の裏側さ。ここを、ショコラーデ姫が進んでいく。君とカピバッド卿は、表の世界を攻略していくんだ」


「おもてと、うらか……!」


「そう。魔女は表向き、新たなお妃として城に嫁いできた。だが、陰謀を裏の世界である夢の中で張り巡らせていたのさ。どうして町に人の姿がないか分かるかい? みんな、こちらでは姿を変えられて眠らされている。本当の町の人々は、夢の中にいるのさ」


「なるほど……! こっちでは、くにのにんげんと、まじょのてしたが入れかわっているということか! ならば、たしかにわれわれしか行けないな!」


 私の目に、しっかりとした行動の指針が見えてきた。

 マーチンが言うには、裏の世界でショコラーデ姫様が行ったことは、こちらの世界にも影響を及ぼすらしい。

 それは表の世界で、私が行動することで、ショコラーデ姫様を助けることができるという意味でもある。


「よし、では行くぞ、カピバッドきょう。われわれは正面から、あのまじょのしろにいどむのだ!」


「ほーい! わかりやすいね!」


 カピバッド卿がバンザイをする。

 私は彼の腕の上に、ぴょーんと飛び乗った。


「ピョンスロット殿! 私はどうすれば……!」


 オマール王子だ。

 この若き王子は、心の底からショコラーデ姫様を案じている。

 この場は、彼に我が主君を預けても良かろう。


「ひめをたのみますぞ」


「わ、分かった! 私が必ずや、ショコラーデ姫を守ってみせる!!」


「ピョンスロット卿。狙うは城の中にある、魔女の鏡……通称、鏡の悪魔だ。これを完全に壊してしまえば、魔女が国にかけた魔法が解ける。表の世界で壊すだけでは足りないぞ。夢の世界で、ショコラーデ姫も鏡を壊す必要がある。そして鏡が壊れた瞬間、オマール王子は姫様をこちらの世界に呼び戻して欲しいんだ」


「呼び戻す……?」


「夢の世界をたゆたう彼女の肉体は、眠りの毒に侵されている。毒は消せても、毒の魔力が彼女の目覚めを許さないだろう。これに打ち勝つのは、彼女を思う者の愛が必要だ。それはこの場で、君が一番強く持っているものだろう?」


「な、なな……」


 オマール王子は赤面した。

 うむ。好ましい反応だ。


「オマール王子、その時が来たならば、ショコラーデ姫様に口づけをしたまえ。それで彼女を侵す毒は消え、姫はこちらの世界に戻ってくる」


「わ、分かった。だが、同意もなく口づけは……」


「ほっぺや額でもいいよ」


「そ、それなら」


「なんとフェアなおとこであろう」


 私はちょっとジーンと来た。

 彼にならば、ショコラーデ姫を任せておける。それに。


「カタカタカタ!」


 ミルクレープが、骨の体を勇ましく鳴らす。

 彼が、王子や兵士たちとともに姫を守るのだ。

 魔女の魔力で作られたミルクレープならば、例え魔女の手下がやって来ても、戦うことができるだろう。


「まかせたぞ、みんな!」


「ああ! 魔女との戦いは頼むぞ、ピョンスロット卿!!」


「ひきうけた!」


 私とオマール王子は視線を交わすと、己の戦いへと向かうのだった。


「ホッホーウ」


 気づくと、青白い羽のふくろうが、カピバッド卿のお尻に止まっている。

 ヴィヴィアンもまた、ともに行くつもりなのだ。


「頼りにさせてもらうぞ、ヴィヴィアン!」


「ホーウ!」


 我らは行く。

 一路、ボンボン王国城へ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ