1・おとこごころとあきのそら
国境を抜けてしまうと、そこから魔女の兵隊さんがぐっと減ります。
わたくしがピョンスロット様と通った時も、街道にはあんまり兵隊さんはいませんでした。
「この間まで、わたくしとピョンスロット様の二人だったのに……。賑やかになりましたねえ」
「ホッホウ!」
「カタカタカタ」
「あっ、ごめんなさい! ヴィヴィアンさんとミルクレープさんも! でもでも、今はカピバッドさんにパーシハムさん、それに、オマール王子様とシュリンプ王国のみなさんがいます!」
「うむ。これもひめのじんとくがなすところでしょう。あなたには、ふしぎと助けたくなってしまうふんいきがあるのです」
「まあ! それって、まるでわたくしが危なっかしくって放っておけないみたいじゃないですかー」
ぷんぷんです。
どうしてなのか、ピョンスロット様もカピバッドさんも、パーシハムさんまで曖昧な雰囲気を漂わせています。
「分かる……」
「むー!」
オマール王子のつぶやきが聞こえましたので、わたくしジロッとにらみました。
彼は慌てて目を逸らします。
むむむ……。わたくし、旅をして人間として一回り大きくなった気がしていたのですけれど、どうやらまだまだみたいです。
「ひめさま、うなってるねー」
「せのびしたいお年ごろなのさ」
「パーシハムきょうはせのびしてもちっちゃいのにね」
「なに、ハートはでかいぜ」
騎士のお二人の会話が聞こえてきます。
このような感じで、のんびりのんびりと、ボンボン王国へ向けて進んでいきます。
兵隊さんはたくさんいらっしゃいますから、どうしても進みがゆっくりなのです。
ただ、さっきの国境線で、わたくしが前に出てきた関係で、ミルクレープさんの馬車が先頭になっています。
たくさんの兵隊さんを引率するみたいで、振り返るとなかなかすごい光景です。
「私は、姫は後ろで安全にされているべきだと思うが……。し、心配だ……!」
すぐ横を、オマール王子がお馬さんに乗って歩いています。
彼まで、わたくしを子供扱いするのでしょうか。
わたくし、まだ未成年ではありますが、もうすぐ大人です!
ぷくっと膨れていますと、わたくしの腕をちょいちょい、とピョンスロット様がつつきます。
「なんでしょう? わたくし、今とってもフキゲンなのです!」
「ははは。やはりそうでしたか。ですがひめ、オマールおうじのしんぱいは、ひめをこどもあつかいしてのものではありませんよ」
「子供扱いでなければなんなのです? わたくし、さっぱり見当がつきません!」
「ええ、そうでしょう。それについては、オマールおうじの方がひめよりは大人ですな。よいですかな? 男というものは、気になるごふじんのことはつねにしんぱいになるものなのですよ」
ピョンスロット様がお鼻をひくひくさせて、得意げにおっしゃいました。
まあ!
オマール王子がわたくしよりも大人だなんて!
でも、大人なのにわたくしを子供だと思っているわけではなくて、そういう殿方の心配というものが、気になる御婦人へ向けられるものだとしますと……。
チラッとオマール王子を見ました。
そうしたら、彼もこちらをチラッと見てました。
目が合いました!
「ご、ごきげんようオマール王子様」
「は、はい。このオマール、一命に換えましても姫をお守りしますから……!」
「命に換えたらダメです! 命がないと死んじゃいますよ!」
「はい! 絶対に死なないようにします!」
「よろしいです!」
わたくしたち、思わずヘンテコなやり取りをしてしまいました。
これをみて、兵隊さんがたが、なんだかほっこりしたお顔をなさっています。
なんでしょう、ほっぺたとかが熱いです。
わたくし、思わず目の前に立っているピョンスロット様に手を伸ばしました。
むぎゅっと掴んで、おなかをむにむにします。
「おおっ、きょうは心のどうようがみえるもふもふですな」
「ピョンスロット様~! みんな分かってらっしゃったんですね! わたくし、てっきりオマール王子様はセイリャク結婚というものでわたくしをお妃にしようとしているものだとばかり……」
「ははは。男ごころというものです。ひめはまだまだおわかくていらっしゃる。気づかぬのもむりはありません」
「ピョンスロット様ー!」
なんというウサギさんでしょう!
わたくし、ピョンスロット様のもふもふな可愛いお手手の上で、ころころ転がされていた心地です。
なんだか悔しくなってきましたので、彼のおなかを全力でもふもふしました。
「ふおおおおー」
ピョンスロット様がバンザーイするような姿勢で、もふられるままになります。
主君をてのひらの上で転がしたお仕置きなのです!
「ナイトリーダーがまるで生まれたてのウサギのようにもてあそばれているぜ」
「ひめさま、もふもふの技がすごいからねー」
「あんがい、あれがきめてになるかもしれんな」
もうもう、知りませんっ!




