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3・お団子時代

 大変な大所帯になりました!

 オマール王子や、彼と一緒に兵隊さんを率いる騎士団長さんによると、わたくしは大切なお客様なので、後ろにいて欲しいのだそうです。

 そのようなわけで、ミルクレープさんはパカポコと、たくさんの方々の後ろを歩きます。


「なにもみえないよー」


 馬車の縁から身を乗り出して、カピバッドさんがぶうぶう言ってらっしゃいます。


「本当ですねえ。これじゃあ、兵隊さんの背中しか見えません。あっ、あそこの方の鎧、サイズが合ってません」


「サイズがあわぬよろいとは、ふだんからきていないのでしょうな。この国がへいわであるというしょうこです」


 ピョンスロット様が、なんだか深いことをおっしゃっています!


「それでは、鎧を着慣れてなさそうなのもいいことなのですね!」


「そうですな。へいわであることは、すばらしいことです」


「もっとも、今はそれが仇になった形ですが」


 馬車の隣を行くオマール王子です。

 むつかしい顔をなさっています。


「私も、これが初陣です。いえ、我が国に、戦った経験がある兵士は一人もいません。まさか、このようなことが起こるとは、誰も思ってもいなかった」


「では、みなでけいけんをもちかえらねばな。ひめ、ちょっと行ってまいります」


「行ってらっしゃいピョンスロット様!」


 ピョンスロット様が、ぴょーんと馬車から飛び降ります。

 そして、ちょいちょい、とカピバッドさんとパーシハムさんを呼びました。


「ほいほーい」


「チュー」


 カピバッドさんも地面に降りて、ピョンスロット様の横をトテトテと走り出します。

 パーシハムさんはその上に乗って、楽をしています。


「いたぞー!」


「国境の辺りでなんかスクラム組んでる!」


「頭がチーズとカボチャだ!」


 あら、前の方から、兵隊さんの声が聞こえてきます。

 どうやら、到着したみたいです。


「カタカタ」


「ミルクレープさん? 背中に乗れとおっしゃっているんですか?」


「カタ」


「ではお言葉に甘えて……」


 わたくしは、ミルクレープさんの背中によじ登ります。

 骨のお馬さんは、実は大きさだけなら、オマール王子が乗っているお馬さんよりも大きいのです。

 わたくしが乗ると、兵隊さんの頭を超えて、ずっと先まで見えました。


「あら? この間、あそこを抜けた時は、みんなチーズの頭をしてたような気がするんですが」


 今は、国境線を守る魔女の兵隊は、チーズ頭の人と、カボチャ頭の人が混じっています。

 そうしたら、わたくしの声が聞こえたみたいです。

 チーズ頭の人が、ぷんぷん怒りながら飛び跳ねました。


「そこにいるのは、俺たちの防衛戦を抜けてった女かー! あの後シュネーケ様に怒られて、半分がチーズフォンデュにされたんだぞ! うんこを投げるとは卑怯な!!」


「わたくしうんこは投げていません!」


 思わず反論です!

 まるで、わたくしがうんこを投げ返すような女の子だと思われてしまうではありませんか。


「うんこしたのぼくでーす」


 カピバッドさんが元気に声を上げました。


「そ、その声! あの時のカピバラか! ええい、グルだったとは……」


「待て。まさかこいつら、またあの時のようにうんこを使って……?」


「な、なんだと……!? 卑怯な……!!」


 その単語が連発されて、皆さん緊張感がなくなってしまったようです。

 兵隊さんたちは、困った顔でこっちとチーズ頭の人を見比べています。

 すると、オマール王子が咳払いしました。


「その話はここまで! 我々はシュリンプ王国軍だ! ボンボン王国を解放に来た! そこを通せ!」


 オマール王子の言葉を聞いて、チーズ頭の人がホッとした雰囲気を漂わせた気がしました。

 やっと普通の人が来たぞ、みたいな。


「それはならん! 我らは魔女シュネーケ様に作られた魔法の兵隊。国境を守るという役割は必ず果たすのだ!」


「そうか、分かった……! 全軍! 突撃! 敵は魔女の兵隊! ボンボン王国までの道を開けるぞ!!」


 おおおーっと兵隊さんが応じます。

 皆さん、やる気になったようで、槍とか棒とか、剣とかを持って、わーっと魔女の兵隊と戦い始めます。

 ですけれど、これはいけません。

 魔女の兵隊には、普通の武器は効かないのです。


「うわあ! 槍が通らない!!」


「まるで石壁を殴っているみたいだ!」


 あっ、やっぱり皆さん苦戦しています!


「な、何ということだ……。まさに魔女の軍勢ということか。これでは、戦いようが無いじゃないか」


 オマール王子が青ざめています。

 そうなのです。

 だから、ボンボン王国はシュネーケが魔女だと分かっても戦えなかったのです!

 ですが、今はわたくしたちには真実の鏡があります!


「では、鏡を使います! ……あっ、馬車の後ろにくくりつけてあります!! ちょっと待ってて下さいね……」


 わたくしは、よいしょ、よいしょとミルクレープさんから降ります。


「ひめ、ここはわれらにおまかせ下さい。しんじつのかがみはきりふだ……。われらのあとに、まんをじして!」


「ピョンスロット様! なるほどー。それもそうかもしれません。では、お願いします、ピョンスロット様! カピバッドさん、パーシハムさん!」


「ぎょい!」


「おまかせされたー!」


「チュチュー!」


 カピバッドさんが、走る速度を上げます。

 その上に、ピョンスロット様が飛び乗りました。

 パーシハムさんが、ピョンスロット様のお腹を駆け上がり、頭の上にちょこんと乗ります。

 こ、これは、どうぶつ騎士お団子モード……!


「ほいほいー! どいてどいてー!」


 カピバッドさんが、どどどどどっと地面を走ります。

 兵隊さんたちが、慌てて道を開けました。

 腕組みをするピョンスロット様に、その頭の上でやっぱり腕組みするパーシハムさん。

 これはすごいです。強そうです!


「なんか動物が縦に並んで突っ込んでくるぞ!」


「シュネーケ様が、動物には気をつけろと言っていたぞ!」


「いや、しかし虎とかライオンとかならともかく、カピバラとウサギとハムスター……」


「おしとおーる!!」


 ピョンスロット様が、すっごく大きな声を出しました!

 ぶるぶるぶるっと、チーズ頭さんたちが震えます。


「間違いない、あいつだ!」


「あれがシュネーケ様が言っていた、動物の騎士!」


 ぎゅーっと、カピバッドさんの前にチーズとカボチャの兵隊さんたちが集まってきます!

 スクラムです!


「詰めろ詰めろ!」


「突破させんぞ!!」


「ここで押しつぶしてやる!」


 とても切り抜けられなそうです!

 でも、カピバッドさんは止まりません!


「いっくよぉー!!」


 カピバッドさんが立ち上がります。

 お芋の白い盾を取り出し、構えながら二本の足で走り、そして、魔女の兵隊とぶつかりました。

 どかーんっ、とすごい音。


「うわーっ!?」


 魔女の兵隊のスクラムが崩れます!


「いくぞっ! とあー!」


 カピバッドさんの頭をジャンプ台にして、ピョンスロット様が跳びます。

 小さな手の中で、ぐるぐるとニンジンさんが回ります。

 当たるを幸いと、チーズ頭の兵隊さんを次々に、ポカポカと叩きます!


「うわーっ」


「ぐわーっ」


「ぐへーっ」


 ぽてぽてと、チーズ頭の兵隊さんが転がっていきます。


「こんなこともあろうかと、シュネーケ様に用意された我らカボチャ兵! やらせはせんぞーっ!!」


「チュチューイ!!」


 三段構えのどうぶつ騎士の戦術です!

 ピョンスロット様の頭から、パーシハムさんが飛び出します。

 頬袋はもうパンパン。

 たっぷりとひまわりの種を含んでいます。


「プププププププ!!」


 パーシハムさんの口から、猛烈な勢いでひまわりの種が撃ち出されました!


「ぎょええ」


「飛び道具だー!」


「ひえーっ」


 カボチャ頭の兵隊さんたちが、ひまわりの種を打ち込まれてオレンジ頭を割られて行きます!

 ひまわりの種強い!

 そして、後詰めのわたくしです!

 ミルクレープさんにまたがり、オマール王子に手渡してもらった真実の鏡をかざします。


「真実の鏡です!! えーい!」


 わたくしが気合を入れて叫ぶと、鏡はピカッと光りました。

 照らされたカボチャが、チーズが、兵隊から食べ物に戻っていきます。

 失敗すると、ミルクレープさんにも当たりそうなので、微調整大事なのです。


「ひいーっ」


「魔法が解けるーっ!!」


「シュネーケ様ー!」


「よーし、全軍、ショコラーデ姫に続けーっ!! この勢いで、ボンボン王国を取り戻すんだ!」


 オマール王子が号令を出しました!

 兵士のみなさんが、わーっと盛り上がります。


「やりましたなひめ!」


「やったー!」


「むちゃしたなー!」


 ピョンスロット様にカピバッドさん、パーシハムさんが馬車に飛び乗ってきます。

 さあ、みんなでボンボン王国に戻るのです!

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