2・心もよう
パッと目覚めました!
これは、夢の中でシュネーケと戦ったからに違いありません!
「おはようございますひめ。じゅくすいでしたな」
あれ?
すっかり朝になっていました。
わたくし、魔女が夢に出てきた後も、ぐうぐうと寝ていたみたいです。
「ひめさまおはよー。僕がぬけだしてもぜんぜんおきなかったねー。ねるこはそだつよ」
「お恥ずかしい……! すっかり快眠してしまいました!」
わたくし、一度寝ると、簡単には起きないのでした。
お陰で、眠気もなく、頭はスッキリと冴え渡ります。
途中の小川で汲んだ水を沸かし、お茶にします。
騎士の皆さんの朝ごはんを配って……。
あら?
パーシハムさんがいません。
「パーシハムさんー」
「チュー!」
わたくしの頭の上で元気な声が聞こえました。
ずっと頭の上にいらっしゃったみたいです!
この小さな騎士様は、神出鬼没なのです。
「いいペースです。ばしゃが重いのではやくははしれませんが、このペースならひるにはシュリンプ王国につくでしょう」
牧草を固めたものをもぐもぐしながら、ピョンスロット様が説明されます。
村でカピバッドさんに、太るよと言われたので、気になっているみたいです。
ピョンスロット様の今日の朝ごはん、牧草多めでお野菜少なめです。
わたくしは、お腹がもちもちとしたピョンスロット様も好きなのですが。
「ホッホウ」
「おかえりヴィヴィアン。みはりごくろうさまだ」
ヴィヴィアンさんが降りてきました。
眠そうに目をショボショボさせると、わたくしの懐に飛び込んできます。
「ヴィヴィアンもひめさまがすきなんだねー」
「ひめはいろいろやわらかいからな」
カピバッドさんとパーシハムさんが、なんだか羨ましそうにヴィヴィアンさんを見ています。
わたくしは、ふわもこのヴィヴィアンさんを抱っこしながら、ご飯を食べることになりました。
パンに、野菜とお肉を挟んで食べます。
もりもり食べて、お茶を飲みます。
ヴィヴィアンさんにこぼさないようにしなくちゃ。
「ところでひめ、おぼえておいでですか」
「ふぁい」
「あ、お口のなかのものをのみこんでからおへんじしてください。ゆめの中で、シュネーケがついにひめをおそってきましたな。これはおおごとですが、ついにやつもなりふりかまっていられなくなったのでしょう」
「なんでー?」
カピバッドさんが、もぐもぐしているわたくしの代わりに、聞き役に回ってくれます。
「うむ、それはひめがしんじつのかがみを手にいれられたからだ。これで、せかい中をみわたしていた、シュネーケのかがみにたいこうできる」
「ゆめの中では、まじょのまほうもうちけしたな」
パーシハムさんが、大きな野菜を頬袋に詰め込みながらおっしゃいます。
それは大きすぎると思います。
あっ、無理したら頬袋が破けそう。
わたくし、パンを食べながらハラハラします。
「大きすぎた」
パーシハムさん、諦めてカリカリと、野菜をかじって小さくし始めました。
「ああ。だが、かがみの力は私のいしでは使えないようだ。きっとこれは、ひめのききにはんのうしたのだろう。かがみのつかいては、きよき心をもつおとめだとされている。つまり、ショコラーデひめさまなのだ」
カピバッドさんと、パーシハムさんがうなずきました。
なるほどー。
真実の鏡は、わたくしでなければ使えないのだそうです。
これはショコラ、皆さんに負けないくらいの役割ができたのでは?
もう守られるお姫様ではありません!
「あっ、ひめさまはないきをあらくしているー!」
「この人やるきだぞ。ぜったいむちゃする」
「カピバッドきょう、パーシハムきょう、われらの新しいにんむだ。ひめにむちゃをさせない」
なんでしょう。
三騎士の皆さんが、じいっとわたくしを見ているのでした。
お昼に差し掛かった頃、本当にシュリンプ王国に到着しました。
ミルクレープさんが、夜通しぱかぽこ歩き続けてくれたお陰です。
「ミルクレープさん、ありがとうございます。あなたは偉いお馬さんです」
すべすべのお顔を、なでなでさすさすすると、彼は「カタカタ」と骨を鳴らしながら、鼻先をわたくしの髪に押し付けてきます。
「うふふ、くすぐったいです」
わたくしがミルクレープさんと遊んでいますと、王都の入り口からどやどやと兵士の方々が出てきました。
「あっ、ショコラーデ殿下!」
「お姫様が帰ってこられた!」
どうされたのでしょう。
とてもたくさんの兵隊さんが、きちんと鎧を来て、槍や盾を持って並んでいます。
先頭にいた何人かが、わたくしの事を知らせに、都の中に戻っていきます。
「これは、シュリンプ王国も、シュネーケとたたかうつもりなのでしょうな。たしかに、目とはなのさきに、カボチャのたいぐんをさしむけられたら、だまってはいられぬでしょう」
ピョンスロット様が、的確に分析されます。
「あら、誰かいらっしゃいます。馬に乗っておられるみたい」
「ひめ、ちょっとだっこしてもらっていいですか。私のたかさではみえません」
あら、ピョンスロット様からだっこのお願いをされるなんて!
わたくし、ニコニコしながら彼をだっこします。
カピバッドさんは抱き枕としてボリューム満点ですし、パーシハムさんはちっちゃくて可愛いです。
ですけれど、やっぱりピョンスロット様が、だっこするには一番ちょうどいいですね。
「ほう、あれはオマールおうじではないですかな」
ウサミミがピコピコしています。
もしかして、遠くでオマール王子が発している声を拾っているのでしょうか。
しばらくすると、真っ白な馬がやって来ました。
確かに、乗っておられるのはオマール王子です。
わたくしと見つけると、彼は馬から降りて駆け寄って来られました。
「ご無事でしたか、ショコラーデ姫!」
「はい! 真実の鏡を持って参りました!」
「なんと……! あの魔物の群れを通り抜けて、よくぞ……!」
「あのていどのぐんぜいなど、われらきしのてきにはなりません」
ピョンスロット様が、わたくしの腕の中で自慢げにおヒゲをひくひくさせます。
「そのばに、俺がいなかったことがざんねんだぜ。チュチュー」
わたくしの肩に駆け上がってきたパーシハムさんが、二本足で立ち上がって腕組みしました。
「ひ、姫。また一匹増えているような……」
「はい! どうぶつ騎士が一羽と二匹になりました! とっても心強いです!」
「ショコラーデ姫が不思議な幕僚を集め始めている……。い、いや、だがあの強さを見れば、姫を守るには彼らが適任なのかもしれない」
オマール王子が難しい顔をなさっている内に、カピバッドさんもやって来ました。
ミルクレープさんが、パーシハムさんがいる側とは逆の肩に、顔を乗せてきます。
「うわー」
オマール王子が思わず、という感じで呟きました。
そして、慌てて咳払いします。
「こ、これから、私たちオマール軍は、ボンボン王国を解放するべく正義の戦いを開始する。ショコラーデ姫。君の願いは必ずや果たして見せよう」
えっ!
ここに集まっていらっしゃる兵隊さん方は、わたくしの国を救うために集められた方々なのですか!?
びっくりです。
でも、わたくし、嬉しくなってきました。
ピョンスロット様を小脇に抱えて、「むぎゅう」オマール王子の手を握ります。
「ありがとうございます! 皆さんが味方をしてくださるなら、百人力です!」
そうしますと、オマール王子は、急に顔を真っ赤にして、「い、いや、その当然のことを」とかぶつぶつ言っておられます。
「皆さんに、どうぶつ騎士の方々。これはもう、千人力と言っていいのでは……!」
でも、わたくしも今は興奮しています。
オマール王子が赤くなっているのも、きっと血気盛んに闘志を燃やしておいでなのでしょう!
おー!
わたくしもやりますよー!
「ひめさま、またはないきあらくしてる」
「あれはぜったいむちゃをするぜ」
脇の方で、カピバッドさんとパーシハムさんが、ぽしょぽしょお話しをしていらっしゃるのでした。
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