1・しゃきしゃきしてあまい
村についたのは真夜中でしたので、ご迷惑をかけてはいけないと思ったわたくしです。
入り口に馬車を停め、そこで一夜を明かすことにしました。
馬車の中で眠るわけですね。
普段はベッドですので、ちゃんと眠れるか心配です。
おはようございます!
わたくしはさやわかに目覚めました。
気分爽快、熟睡です。
ごわごわ抱き枕のカピバッドさんと、体温が高くてあったかなピョンスロット様のおかげで、風邪も引いていません。
どうぶつ騎士さんたちは、毛布代わりとしても優秀なのです。
「うわっ、人がおる!」
通りかかった村人さんがびっくりされています。
朝の畑に向かう途中だったようですね。
彼は、ミルクレープさんがぼんやり立っているのを、オブジェか何かだと思ったらしいです。
「おはようございます。こちらは祠の村でしょうか」
荷車を改造した馬車から、わたくしは体を起こして尋ねます。
そうしますと、村人さんはコクコクとうなずきました。
「そうだけども、あんたは……? 娘さんが一人で旅をしとるのかい?」
「わたくしはショコラーデと申します! 一人ではないのですよ? ほら、ピョンスロット様とカピバッドさん、ミルクレープさん……」
「ホッホーウ」
「そうそう、ヴィヴィアンさんも! みんなでこちらに参りました!」
「みんなって、動物じゃないかい!? えっ、この骨の馬、飾りじゃなくて動くの……?」
「カタカタ」
「ヒャアー」
村人さんが腰を抜かしてしまいました。
「だいじょうぶー?」
カピバッドさんが馬車から飛び出て、村人さんを助け起こします。
村人さん、カピバラが喋ったので、また「ヒャアー」と驚きの声を上げていらっしゃいました。
村人さんが落ち着いたところで、村に入れてもらいます。
ちょうど、朝ごはんの支度をあちこちでなさっているようで、家々の煙突から煙が上がっていました。
ミルクレープさんが、パカポコと蹄を鳴らし、村の中央広場までやって来ます。
広場の中心には、大きな井戸がありました。
「あっ、骨の馬が歩いてる!」
「ヒャアー」
水を汲んでいた奥様方が、驚いて皆さん腰を抜かしました。
この村の方々は、とってもびっくりしやすいみたいです!
「皆様落ち着いて下さい! こちらのお馬さんは、ミルクレープさんと言って、良い骨のお馬さんなのです。怖がらなくてもいいのですよー!」
「こわくないの?」
「ほねうまー」
奥様方についてきていた、お子さんたちはすぐに警戒を解いたみたいです。
わーっと寄って来て、ミルクレープさんをぺちぺちします。
「カタカタカタ」
「わー」
「何か言ってるー」
「あまりぺちぺちしたら、ミルクレープさんだって痛いんですよ」
わたくしはお子さんたちに目線を合わせてしゃがみ、諭します。
その横に、ピョンスロット様がニュッとかおを突き出してきました。
「うむ。こうきしんからぺちぺちするのは分かる。だがぺちぺちしていいか、きくべきだ」
「あっ、こんどはウサギがしゃべった!!」
お子さんたちがびっくりします。
そして、一旦わーっと散っていきます。
「むむ。ウサギがしゃべったことで、こわがらせてしまったか」
ピョンスロット様、ちょっとしゅんとしています。
ちなみにカピバッドさんは、井戸の近くに生えている草をもぐもぐ食べていらっしゃいました。とってもマイペースです。
少ししますと、お子さんたちが手に手に何かを持って戻って来ました。
「あら、なんでしょう?」
「おねえさん、ウサギさんにやさいあげていい?」
「あら! いいですよー」
わたくしはにっこり微笑んでうなずきます。
お子さんたちは、両手に握りしめたお野菜を、ピョンスロット様に差し出しました。
さあ、ここからチェックタイムです。
わたくし、野菜を厳しく審査して、どうぶつが食べられるお野菜とそうではないものをより分けます。
「お芋はカピバラさんじゃなければダメです。玉ねぎもほうれん草もダメです」
「ふえー、おねえさんきびしい」
わたくしの厳しい審査眼に、お子さんたちはタジタジです。
ちなみに、わたくしはピョンスロット様を懐に収め、ガッシリと掴まえています。
なぜなら……。
「むむむーっ、ショコラーデひめ! ごしょうだ、てをはなしてくれー! や、やさい、やさいー!」
ピョンスロット様がすっかりウサギの本能に負けて、お野菜目掛けて突進しそうな勢いだからです!
「いけませんピョンスロット様! ステイ、ステイです! 今から食べてもいいお野菜だけ並べますからね!」
わたくし、お子さんたちに、ウサギが食べていい野菜を教えながら、順番に並べていきます。
そして、再チェックを終えたところで、ピョンスロット様をリリースです。
「むおー!」
ウサギの騎士様は雄叫びを上げながら、お野菜に突進しました。
猛烈な勢いで、もぐもぐもぐもぐとお野菜を食べます。
ちなみにカピバッドさんも、素知らぬ顔で混ざり、もぐもぐお野菜を食べています。
ほっこりする光景です。
「おねえさん! おねえさんも食べなよ!」
お子さんたちが、わたくしにとうもろこしを差し出しました。
まあ、こんがりと焼けています!
「ぼくたちの朝ごはんなんだよ!」
「おいしいよー」
「とってもいい匂いですね! では、わたくしもいただきます。ありがとうございますね」
わたくしがお礼を言うと、お子さんたちの中の男の子たちが、ぽわーっとした顔になりました。
ピョンスロット様たちと並んで、わたくしももりもりと、とうもろこしをいただきます。
「ナイトリーダー、おやさいばっかりじゃだめだよ。草たべなよー」
「むむっ、私はたべものにはうるさいのだ。草はあじがなくてな」
「ふとるよー?」
「ふとるだと? (もぐもぐ)みよ、私のこのきたえぬかれたにくたいを。(もっもっもっ)カピバッドきょう、君のめは(もぐもぐ)ふしあなかね」
「ほらー」
カピバッドさんが、もりもりお野菜をかじるピョンスロット様のお腹を突きます。
あっ、ぷよん、とお腹の肉がはずみました!
「あっ」
ピョンスロット様が一瞬動きを止めます。
「ふかく……!(もっもっもっ)」
でも食べるのを止めないピョンスロット様です!
ふと、一番の大物であるカブに食らいついていたピョンスロット様。
ひょいっと後ろから、小さな女の子に抱き上げられました。
「あっ」
「あっ」
わたくしとカピバッドさんが驚く間に、女の子がピョンスロット様を抱えて走っていきます。
「ママ~! わたし、このウサギさんかうー」
「うわー、な、なんということだー! このピョンスロットいっしょうのふかくー! た、たすけてくれ、ひめー、カピバッドきょうー」
これはピョンスロット様の一大事!
慌てて助けに向かう、わたくしとカピバッドさんなのでした。




