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3・カピバッド危機一尻

「いくぞ! とあー!」


「小癪な、ウサギめえ!!」


 なんということでしょう!

 わたくしが伸ばした腕の先で、抱えられたピョンスロット様が戦い始めました!

 相手は、魔女シュネーケがボンボン王国に連れてきた騎士。

 騎士団長サルミックです。

 凄腕の剣士で、王国の誰も彼には勝てませんでした。

 そんな相手が、口から火まで吹いて、しかも燃え上がる剣を持っているのです。

 こんな恐ろしい敵に、ピョンスロット様は一歩も退きません。


 正しくはわたくしが抱っこしているので、退けないだけの気もするのですが。


「ほりゃーっ!」


「ぬおおーっ!? 我が剣がーっ!?」


 あっ!

 ニンジンさんが、燃え上がる剣を折りました!

 まさかのニンジンさんの勝利です!

 動揺するサルミックは、思わず骨のお馬さんの速度を落としました。

 ここぞとばかりに、ミルクレープさんが駆け足になります。


「きゃーっ」


 大変揺れるので、わたくし、悲鳴を上げてしゃがみこみました。

 ピョンスロット様を抱きしめて、振り落とされないように必死です。


「むぎゅうー」


 ピョンスロット様が、聞いたことのない声を出しています。

 いけないいけない。

 ピョンスロット様をぺちゃんこにしてしまうところでした。


 サルミックは追ってくる気配がありません。

 炎の剣をニンジンさんで折られたのが、よほどショックだったのでしょう。

 そこへ、ミルクレープさんの頭の上から、つるーんとお尻で滑り降りて、カピバッドさんがやって来ました。


「やったねー」


「やりました!」


 わたくしとカピバッドさんで、ハイタッチします。

 でも、こんな凄い速さで走っているミルクレープさんの上を、お尻でつるつる滑って移動できるなんて、やはりカピバッドさん、のんびりしているように見えて凄い騎士様なのですね。


「あれはなかなかすごいまぞくだったねー。おひめさまがぶじで良かったよー」


 カピバッド様は身を乗り出して、わたくしのほっぺたとかをペタペタ触ります。

 しっとりひんやりしていて、ピョンスロット様とは違った心地です。


「ありがとうございます! カピバッドさんも凄い活躍でした!」


 わたくしもお返しに、カピバッドさんのほっぺをさわさわしました。

 毛がとっても太くて、量は少なめみたいです。

 もちもちしたお肌に触れることができます。

 このもちもち、なかなか癖になるかも知れません……!

 しばらく、二人でさわさわ、もちもち、と触り合っていますと、ピョンスロット様がわたくしの懐から、ニュッと顔を出されました。


「カピバッドきょう、後ろからおってはこないか?」


「こないねー。なにもこないねー」


「よし、われわれのしょうりだ!」


 わたくしの膝の上で、ピョンスロット様がガッツポーズをします。

 わたくしたちは、見事、シュネーケが遣わした軍勢をくぐり抜けたのです!


「これで、後は祠があるという村に向かうだけですね」


「そうですな。だが、シュネーケの鏡がふっかつしたというのが気になります。このあいだ、のぞいているのがわかったので、私がキャロンダイトでわってやったはずなのですが」


「まあ! ピョンスロット様は、こちら側からシュネーケの鏡を割ることができるのですか」


「ええ。のぞかれていれば、近くに鏡のまりょくがきていますからね。これをこうして、こう!」


 わたくしの膝から飛び降りたピョンスロット様。

 ニンジンさんを振り回して、馬車の縁でアクションしてみせてくれます。


「これをこうしてー、こうー?」


 それを、ミルクレープさんのお尻の上で、カピバッドさんが真似します。

 カピバッドさんは大きいので、いつ落っこちてしまわないかハラハラです!


「あっ」


 あーっ、つるんと滑りました!

 わたくし、慌てて手を伸ばします。

 すると、腕の中にドシーンとカピバッド様が落ちてきました。


「あーっ、お、重いー! ショコラには無理かも……いえ、ここで諦めたらカピバッドさんが地面にお尻をぶつけます! がんばるのよわたくしー!! とりゃーっ!!」


 わたくし、多分、生まれてきて一番踏ん張りました。

 カピバッドさんを受け止めながら、気合を込めて起き上がります。


「ひめさまパワフルー」


「ひ、ひめ! ごむりをなさらず……! すごいかおをしていますぞ!」


「ふ、ふう……。ご心配をおかけしました」


 わたくしは、カピバッドさんを抱っこした体勢になりました。

 ここで一息つきます。


「カタカタ?」


 ミルクレープさんが心配して、速度を落として振り返ります。

 わたくしは笑顔を浮かべて、彼に手を振りました。

 ミルクレープさんは、カクカクうなずきます。

 骨のお馬さんなので表情はわからないのですが、なんとなく安心した雰囲気を感じます。

 すると、彼の頭の上にヴィヴィアンさんが止まりました。


「ホッホーウ」


「ヴィヴィアンがていさつからかえってきたようです。どうだった?」


「ホーウ」


「まじょたちはそうくずれか。てったいしているならよかった」


「ホウホーウ」


「ふむ、このさきに村が?」


 どうやら、たくさんの情報を集めてきて下さったようです。

 わたくしたちは、このまま目的の村まで一直線。

 一路、真実の鏡を求めて突き進むのです。

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