↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
29/80

2・じごくのベジロード

ピョンスロットの語り……つまり、戦いのお話です。

 さあ、出発だ。

 ショコラーデ姫様は、既に旅装を身にまとっている。

 私が以前に用意したものよりも上質な服は、シュリンプ王国が厚意で用意してくれたものだ。


「ひめ、たびすがたがにあうようになりましたな」


「そうですか? うふふ、わたくしも、一人前の旅人になりつつあるのです」


 びしっと決めてみせるショコラーデ姫様。

 彼女は常に前向きなのだ。

 素晴らしい。


「ではまいりましょう。行くぞ、ミルクレープ!」


「カタカタカタ」


「お久しぶりですミルクレープさん! さあ、びゅーんっと走っていっちゃいましょう!」


 姫様にお尻を撫でられると、骨の馬ミルクレープはテンションが上がる。

 彼女には、人ならざるものでさえも従わせてしまう、不思議なカリスマがあるのだ。


「ナイトリーダー、ごはんつみこんだよー」


「ごくろう、カピバッドきょう! ミルクレープ、ハイヨー!」


 私はミルクレープの背中に飛び乗ると、彼の首をペチペチ叩いた。


「カタカタカタ!」


 ミルクレープが走り出す。

 向かうは、王都の入り口。

 明かりを持って迫ってくる、魔女の手下の真正面だ!


「ほいー、はやいー」


 カピバッド卿が、馬車の上に立つ。

 お尻の辺りを、姫様に押さえてもらっている。


「カピバッドきょう、タイミングをはかってとびこむぞ!」


「うんー!」


 びゅうびゅうと吹く風に煽られて、カピバッド卿の毛が逆だっている。

 手に構えるのは、お芋を輪切りにしたような、真っ白な盾。

 私のキャロンダイトを受け止める、知る限りでは最強の盾だ。

 これを扱えるのは、世界広しと言えどカピバッド卿だけであろう。

 何しろ、お芋型なので持ち手も何もない。

 それを両手で抱えて、自在に取り扱うのだ。


「ふわわわっ、カボチャの兵隊さんが近づいてきました!!」


 ショコラーデ姫様が緊張の声を上げる。


「しんぱいはありません、ひめ! こちらには、ウサギとカピバラがそろっているのです! あれしきのやさいなど、この前歯でおやつにしてやりましょう!」


「おやつー!!」


「ようし、今だカピバッドきょう!! とあーっ!!」


 私はミルクレープの首を駆け上がると、鼻先からカボチャ軍団目掛けて跳躍した。


「ちょーっ!」


 カピバッド卿も飛ぶ。

 二人の騎士が、魔女の手下たちと激突だ。


「おいものたてーっ!」


 白い盾を展開したカピバッド卿は、まさに投石機から放たれた大岩の勢いで、カボチャたちを撥ね飛ばす。


「うわーっ!? ごわごわした毛むくじゃらが突っ込んできた!」


「うおーっ!? み、見えない壁が!?」


「剣も槍も通らないぞ!」


「むぎゅーっ! 押すな押すな!」


 大地に降り立ったカピバッド卿は、たった一人……一匹で、カボチャの兵隊の大群を受け止める。

 白いお芋の盾は、広い範囲に見えない守りの壁を発生させた。

 ダンスの時に寄りかかってきた姫様を受け止めるより、カボチャたちをまとめて食い止める方が彼にとっては楽なのだろう。


「ほらほらーっ、おしもどしちゃうぞーっ」


「うわあーっ! このカピバラ強いー!!」


 わあーっと悲鳴を上げて、カボチャ達は総崩れだ。

 そこに、私が飛び込む。


「うなれ、キャロンダイト!」


 一直線にカボチャ達の中を駆け抜けながら、次々に頭をポカンポカンと叩いて割っていくのだ。

 割れたカボチャ兵は、ただのオレンジ色のカボチャに戻ってしまう。

 キャロンダイトが、魔女の魔法を解いているからだ。


「カタカタモフッ」


 後ろから走ってきたミルクレープが、カピバッド卿をくわえた。

 こうなると、まるで先端に大きな盾を構えた馬車のようになる。


「らくちーん」


 ぶらーんとぶら下がったカピバッド卿だが、彼が展開する見えない壁は健在だ。

 カボチャたちを押しのけながら、骨の馬車が疾走する。


「ここ、通らせてもらいますね! ごめんあそばせ!」


 姫様はそう告げながら、馬車の上で行く先を指し示す、かっこいいポーズを取る。

 我が主君ながら、なかなか決まっている。


 私は、そんな馬車の前を猛スピードで走りながら、カボチャ頭を割っていく。

 どんどん、道を切り開いているのだ。

 そして、ついに兵隊たちの最後尾。

 まとめて三人ほどなぎ払いつつ、飛び出した。


「貴様が噂のウサギか」


 そこに、赤い影が立っていた。

 いや、赤いのではない。

 痩せぎすのその男は、口を開く度に、そこから炎が漏れるのだ。

 身につけている鎧は、恐らくボンボン王国における高位の騎士が纏う物。


「我が名は騎士団長サルミック。お后様の命に従い、貴様を毛皮の帽子にしてくれよう!」


「そのたたずまい、ただものではないな。さては、上位のまぞくか!!」


 振り下ろされる、炎を帯びた剣。

 これをキャロンダイトで受け止めながら、私もまた名乗る。


「私はピョンスロット! ショコラーデひめさまのきしだ!」


「ウサギ如きが騎士だと!? だが、ベジマイを退け、パプリカを倒したその力、見過ごすわけにはいかん! ごあーっ!」


 騎士団長サルミックは、私とつばぜり合いをしながら、大きく口を開いた。

 そこから、炎が溢れ出す。


「むっ! ほのおのこうげきか! こうだー!」


 私はサルミックの剣を素早く受け流すと、迫る炎に向けてキャロンダイトをぐるぐる回転させた。

 我が聖剣が起こす風が、押し寄せる炎を散らしていく。


「ごあーっ! 我が呪われた炎を弾くとは! そのニンジン、まさか聖なる力を帯びているとでも言うのか! いや、呪われし我が野菜兵たちを容易く砕くならば、まさにそのニンジンは聖剣……!!」


「いかにも! だがお前ともんどうしているひまはない! おしとおるぞ!」


 私は地面の泥を足にこすりつけると、これを断熱材にして、燃える剣を蹴って跳んだ。

 ぴょーんとサルミックの頭まで到達し、キャロンダイトでポコッと叩く。


「ぐわあーっ!? 軽い音に反する恐るべき威力!」


 サルミックの被っていた兜が砕けた。

 むき出しになった兜の下には、燃え上がる骸骨の顔がある。


「いままでのまぞくとは、かくがちがうか! だが、私のかちだサルミック!」


 私は宙を跳びながら宣言する。

 これと同時に、ミルクレープが私に追いついてきた。


「ピョンスロット様、キャーッチ!!」


 ショコラーデ姫様が、見事なタイミングで私を受け止める。

 そしてさりげなく、私のお腹をもふもふする。

 あらゆるタイミングでもふもふを忘れぬ、恐るべき腕前……!


 その後、彼女はサルミックに向けて、あかんべーをした。


「サルミック! お義母様……いいえ、シュネーケに言いなさい! わたくし、ぜーったいにボンボン王国をあなたから救い出してみせますから!」


「ショコラーデ姫ェッ!!」


 サルミックが吠えた時には、我々は既に、魔女の手下たちを大きく引き離していた。

 少なくとも、兵隊たちでは追ってはこれまい。


「これで安心……」


「ひめ! まだですぞ! サルミックが馬にのっておいついてきます!」


「まあ!」


 骨の馬が、馬車に迫ってくる。

 またがっているのは騎士団長サルミック一人。


「行かせるものか、ショコラーデ姫!」


 恐ろしい執念だ。

 大臣ベジマイとは大違いなのだ。


「ひめ! 私をキャッチしたまま、手をのばしてサルミックにむけてください! くうちゅうせんとしゃれこみましょう!」


「はい! わたくしもいっしょに戦います!」


 私と姫様のコンビネーションで、この魔族を撃破するのだ。

 シュリンプ王国脱出行は、終盤を迎えようとしている!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。