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2・姫をお城に連れてって

 あっという間に、立派なお城が見えてきました。

 石造りの尖塔が何本も建っていて、扉も大きくて豪華に飾られています。

 道の脇には、色とりどりの花が植えられていました。


「いかん、むずむずする。おちつくのだ、私のほんのうよ」


 ピョンスロット様が、お花を食べたそうにしておられます!

 ウサギさんですから、お花や草も食べるのですね。


「ピョンスロット様、がまん、がまんです!」


 わたくし、思わずグッと拳を固めてしまいます。

 今のわたくしは、馬車の中。

 ピョンスロット様は騎士ですから、外をぴょんぴょんと跳ねていらっしゃいます。

 ドレスにシルクの手袋ですから、飛び出してピョンスロット様を抱き上げられないのがもどかしいです!

 いいえ、ショコラはいざとなれば、ウサギさんの毛がつくことを厭いません!

 今すぐにでも扉を飛び出して……。


「こ、今度はやめてくださいね、ショコラーデ姫様!」


 ポールがハラハラしているらしい声で、止めてきました。

 ちぇー。


「ピョンスロット殿、こちら、食べられる花です。これを食べてどうか、気をお鎮めください……!」


「むっ、かたじけない」


 ピョンスロット様は、ポールから質素な見た目の花束を受け取りました。

 さっそく、これをむしゃむしゃし始めます。

 むしゃむしゃしていると、ぴょんぴょん跳ねられませんので、ポールのお馬さんに乗ることになりました。

 ああ、もう。

 ポールが羨ましいです!


「で、殿下。貴い身分にある方が、そのように窓から身を乗り出されては……」


「あら、ごめんなさい」


 わたくしは、スッと体を戻しました。

 メイドのアマエさんがなんだか汗をかいています。


「わ、私、殿下に対してただいま、ご無礼を申し上げました……! こ、この罰はいかようにも」


「罰なんて! わたくしが変なことをしただけなのですから、気になさらないで下さいね。でもアマエさん。外を御覧になってくださいますか?」


「はい……?」


 アマエさんが、わたくしに言われた通り、窓から外を見ます。

 そこには、お馬さんの首に腰掛けて、むしゃむしゃと花束を食べるピョンスロット様の姿。

 お口いっぱいに食べ物を含んで、もぐもぐしている姿がとても可愛らしいです!


「あっ──」


 アマエさんもハートを射抜かれたみたいです。

 クラクラしています。

 わたくしたち二人、窓で顔を寄せ合って、じーっとピョンスロット様を見ていました。

 そうしましたら、馬車が停まります。

 いつの間にか、お城の門をくぐっていたようです。


 馬車の外には、たくさんの兵隊の方々がおられて、彼らの前には、立派な鎧を纏った騎士が数名。

 そして、騎士を従えるのは、赤をベースにした豪奢な衣装に身を包んだ、背の高い殿方です。


「お待ちしておりましたよ、ショコラーデ姫!」


「お久しぶりです、オマール様」


 窓ごしの挨拶では、失礼というものですね。

 わたくしは、扉を開けようとするアマエさんより先に、バーンと馬車の扉を開きました!


「あっ──! シ、ショコラーデ殿下ーっ!?」


「ふふふふふ」


 わたくし、シュリンプ王国のお城に降り立ちます。

 うーん、外の風が気持ちいいです!

 大きくのびをしたいのを我慢します。

 わたくしが姿を見せますと、兵隊の方々が、どよどよっとどよめきました。

 なんでしょう?


「ショコラーデ姫、以前にお会いした時よりも、美しさに磨きがかかりましたね……」


「そうでしょうか? ありがとうございます」


 オマール王子が褒めてくださるのですが、どうもピンと来ません。

 この方は、親同士が決めたわたくしの婚約者……候補です。

 わたくしに向けて、何やら間をあけてにっこり微笑むのですが、なんでしょう。

 わたくしもにっこり微笑みを返します。


「おお……」


 騎士の方々もどよめきました。

 なんでしょう、なんでしょう?


「ショコラーデひめさまは、ご自分のはなつかがやきのようなものにむじかくですな」


「はい。凄い方ではあるのですが……、あのカリスマと行動力を無自覚に振り回されるので……。ですが、この度の事態は、カッとなったショコラーデ殿下が迅速に動かれたおかげで、魔女の機先を制することに成功したのです」


 ポールとお話ししたピョンスロット様が、お馬さんから飛び降ります。

 そして、わたくしの横までトコトコと歩いてきました。


「……? うん? なんだい、このウサギは……?」


 オマール様の疑問に、わたくしはにんまりと笑みを浮かべます。


「ふふふ。それをお聞きになりますか。それでは、お教えしましょう!」


「ひ、姫……!?」


「この方こそ!」


 わたくしはピョンスロット様を抱き上げました!

 少し身をかがめられたオマール様が、ピョンスロット様と同じ視線になります。


「わたくしだけの騎士、ピョンスロット様なのです!」


「ええ……」


 オマール様が唖然となさいました。


「ショコラーデ姫、お戯れを。これはただのウサギではございませんか……」


「私はピョンスロット。いごおみしりおきねがおう」


「う、うわー!! ウ、ウサギが喋ったぁぁぁぁぁぁ!?」


 オマール様が、あまりにもビックリなさって、腰を抜かしかけました。

 慌てて騎士の方々が、オマール様を後ろから支えます。

 さあ、これからピョンスロット様の宮廷デビューなのです!

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