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7、リーフ街

7話です

俺は荷馬車のそばに立ち、まだ震えている商人のおじさんに声をかけた。


「おじさん、大丈夫ですか? どこか怪我はありませんか?」

「あ、あぁ……すまない。本当に助かったよ」


 おじさんは安堵の息をつき、にこりと笑った。

 髭を蓄えたその顔は優しげで、頭には緑色の丸い帽子をちょこんと乗せ、ゆったりした青の服に白のズボン。どこかおっとりした雰囲気をまとっている。


「嬢ちゃんは小さいのに強いんだな」


 あ、今の目……娘を見る時の目だ。完全に勘違いされてる。


「ところで嬢ちゃん、名前は何て言うんだ?」


 名前……一樹だけど、今は女の子の姿だしな。イツキをちょっといじって……


「ミツキ、です」

「ミツキか。可愛い名前だな! ワシはラルドだ、見ての通り商人をしておる。……それで、どこへ向かっていたんだ?」


「えーと……リーフ街に行って、船に乗って、アプテットっていう街の学校に入ろうかなと」


 地名を思い出しながら説明する。まだ慣れないから舌を噛みそうだ。


「学校に通うのか。それなら……どうだ、ワシの護衛としてアプテットまで一緒に来ないか? 金も少しなら出せるぞ」


 願ってもない提案だった。どうせ道は分からないし、1人より安全だ。


「お願いします! これからよろしくお願いします、ラルドさん」

「礼儀正しいな、ミツキは。よし、荷台に乗りなさい」


 俺は木箱の上に腰を下ろした。ラルドが馬に鞭を入れると、荷馬車はガタゴトと音を立てて動き出す。



---


 しばらく揺られていると、風が心地よい。草原を抜け、木立の間を通ると小鳥の声が響き、川辺では魚が跳ねるのが見えた。

 俺は退屈しのぎに、頭のドラを持ち上げて投げたり、ぷにぷに引っ張ったりして遊んでいた。


「ところでミツキ、そのスライミーはどうしたんだ?」


 ラルドが振り返り、興味深そうにドラを見つめる。


「草原で出会って、なぜか懐いてついてきたんです。そのまま連れてきちゃいました」

「へぇ……そんなこともあるんだな。しかも緑色とは珍しい。普通は青色なんだぞ、スライミーは」


「え、そうなんですか!?」


 知らなかった。俺の頭で「ピー!」と鳴くドラは、ちょっと誇らしげに跳ねている。



---


 やがて、潮風が頬を撫でた。鼻をくすぐる海の匂い。遠くから波の音が聞こえる。


「ミツキ、リーフ街にもうすぐ着くぞ」


 視線を前に向けると、石造りの街並みの向こうに広がる青い海。船の帆が並び、カモメが鳴き交わしていた。


 リーフ街に入ると、人の活気に圧倒された。魚を並べる市場、網を直す漁師、海藻を売る子供、そして港の方には大きな帆船が停泊している。


 ラルドは荷馬車を宿屋の隣に止めると、俺を振り返った。


「そうだ、腹が減ってないか? まだ船が出るまで時間があるから飯にしよう」

「でも……お金、盗まれてませんでした?」

「ワハハハハ! あれは銅貨しか入ってなかったんだよ。本物はここにある」


 ラルドが服の中から財布を取り出す。どこに隠してたんだよ……魔法か?


「飯は奢ってやる。行くぞミツキ」

「ありがとうございます!」


 俺もドラも「ピー!」と喜んで跳ねた。



---


 宿屋の一階は小さな食堂になっていた。木の床に丸いテーブル、壁には古びた地図。冒険者風の男たちや漁師が集まり、笑い声と酒の匂いが渦巻いている。


 席に着き、テーブルのメニューらしき紙を手に取る。……が。


「……読めねぇ」


 言葉は通じるのに、文字は別物らしい。やばい。


「ミツキ、決まったか?」

「あ、あの……文字が読めなくて」


 ラルドの目が一瞬驚きに見開かれる。


「そうか……孤児だったんだな」


 勝手に勘違いされた。いや親いるから! でも今さら否定もできないし……まあいいか。


「なら、オススメを頼もう。すみません!」


 厨房から出てきた恰幅のいいおばさんが近寄る。


「はいよ、何にするんだい?」

「オークのステーキとスライミージュースを二つずつ!」

「はいよ!」


 威勢のいい声が響き、奥で肉を焼く音が弾けた。



---


 やがてテーブルに白い皿が運ばれてくる。

 分厚い肉に香ばしい匂い。表面にはソースがかかり、じゅうじゅうと音を立てている。


「いただきます!」


 フォークで刺してかぶりつく。


「……うまっ! やわらか! 豚肉みたいな味だけど全然臭みがない!」


 噛むたびに肉汁があふれる。俺は感動しながら口いっぱいに頬張った。

 隣でラルドも豪快に食べ、ジョッキのジュースを飲む。


 俺も青色の液体――スライミージュースを口にした。


「……サイダー!? これ完全にサイダーだ!」


 発泡の刺激が喉を抜け、爽快感が広がる。


 ふと、頭の上のドラに目をやった。


「あ、そうだ。ドラにも食わせないと」


 机に下ろし、氷のナイフで肉を切り分ける。するとドラは触手で肉を掴み、体内に吸い込んだ。

 ぷるんとした体の中で肉が浮かんでいる。


「ピー! ピー!」


 机の上でぴょんぴょん跳ね回り、大喜びしている。


「良かったな。……ほら、もう一切れだ」


 俺は笑いながら肉を差し出した。

 ラルドは驚いた顔をしていたが、何も言わず優しい目でこちらを見守っていた。



---


 腹が満たされ、俺は椅子にもたれた。

 窓の外からは港のざわめきと波の音。

 明日はいよいよ船に乗り、海を越えて新しい街へ。


(……船旅か。楽しみだけど、不安でもあるな)


 ドラが「ピー」と小さく鳴いた。

 まるで「大丈夫だよ」と言ってくれているようで、少し心が軽くなった。



---

お巡りさんこっちです、こっちにロリコンがいます。(ФωФ)

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