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6、初めての仲間

6話目です

南の門を抜けると、そこには広大な草原が広がっていた。

 青々とした草が風に揺れ、虫の羽音がどこからともなく響く。空には羊雲が流れ、陽光を受けてきらきらと輝いていた。


「……いい天気だなぁ。ここで昼寝したら気持ちいいんだろうけど……いやいや、魔物の餌コースはごめんだ」


 のんきな妄想を打ち消しつつ、俺は道を進んだ。

 しばらくすると、目の前に緑色の丸い物体がぷるんと揺れて現れた。


「おっ……これは! 定番のスライムじゃないか!?」


 意気揚々と頭上に浮かぶ文字を見る。


【スライミー】


「……微妙に違った! いや、間違ってはないけどさ!」


 じっと見つめると、スライミーはぷるぷると揺れて意外に愛らしい。

 思わず触りたくなる――が、その瞬間。


「むぐっ!?」


 スライミーが跳びかかり、俺の顔にぺたりと張り付いた!

 冷たいゼリー状の感触が鼻と口を覆い、息ができない!


「っぐ、は、はずれろっ……!!」


 必死に掴んで引き剥がし、思い切り草原に投げ飛ばした。


「このくそったれがーッ!!」


 地面に落ちたスライミーは、またぷるぷると震えている。

 俺は息を荒げながら道を進んだ。


(……『少女スライミーに張り付かれて死亡』……新聞の見出しみたいじゃねーか! 死因がシュールすぎて家族も泣けねーよ!)


 だが、背後に気配を感じて振り返ると――また同じスライミーが跳ねてついてきていた。


「……お前、しつこいな」


 掴んで再び投げる。

 だがまた、少し歩けば後ろに現れる。


「なんだお前」

「ピー!」


「鳴いた!? スライムって鳴くのかよ!」


 驚いていると、スライミーは楽しそうに跳ね回っている。


「……ついてきたいのか?」

「ピー!」


 ぴょんと跳ねて返事をする。


「……しゃーねーな。寂しかったし、ついてこい。よし、お前の名前は……ドラだ!」


「ピー!」


 嬉しそうに弾むスライミー。俺はその体を掴んで頭に乗せた。

 ひんやり冷たく、まるで冷えピタを貼ったようで気持ちがいい。


「……おお、意外に悪くないな」


 そうしてドラを乗せたまま、草原を進んでいった。


 やがて前方に荷馬車が見えた。だが――その周囲には三人の怪しい男たちが立ち塞がっていた。


「おいテメー! 金目のもんを出せ!」

「さっさと出すっす!」

「寄越せ」


 太った男、小柄な男、そして背の高いノッポ。

 三人はそれぞれ青竜刀、ナイフ、爪のような武器を持ち、荷馬車の恰幅のいいおじさんを脅していた。


「ひぃ……殺さないでくれ……」


 おじさんが必死に命乞いをする。


「うるせー! 出さねえと殺すぞ!」


 胸ぐらを掴まれ、持ち上げられる。おじさんは震えながら金袋を差し出した。

 太った男はニヤリと笑い、それを受け取ると、おじさんを乱暴に地面に投げ捨てた。


「まだ隠してんだろ? 出せ!」

「ただじゃおかねーっすよ!」

「殺す!」


 ……なんだこいつら。完全に悪党だ。


 俺は荷馬車に駆け寄り、声を張り上げた。


「おいコラ、いい加減にしろ!」


 三人は揃ってこちらを振り向いた。


「「「……あ?」」」


 きれいにハモった。


(いやいや! 仲良しかお前ら! 完全に漫才トリオじゃねーか!)


「なんだこのガキは」

「お前何者っすか」

「驚愕」


 武器を構え、俺を囲むように立つ。だが……豚、猿、馬のような顔。怖がるより笑ってしまいそうだ。


(これどう見ても新手の魔物じゃねーのか?)


「……お前、よく見たら上玉じゃねーか。捕まえて売るぞ!」

「了解っす!」

「承知」


 太った男の号令で三人が一斉に飛びかかる。


 その瞬間――頭にいたドラが、小柄な盗賊の顔に飛び付いた。


「ぎゃああ!?」


 サルテガ(小柄)は顔面にスライミーを張り付けられ、のた打ち回る。


「ナイスだドラ!」


 俺は振り下ろされる青竜刀を軽く避け、ノッポの盗賊メッシュの背中を蹴って太った男に突っ込ませた。二人は見事に転倒。


「なにやってんだメッシュ!」

「謝罪」


(こいつら本当に漫才コンビだな……!)


 俺は両手を地面に突き、想像を解き放つ。


「出ろ……氷の龍!」


 地面に魔法陣が浮かび上がり、そこから巨大な氷の龍が姿を現す。

 硬質な鱗、鋭い角、そして吐息からあふれる冷気。

 氷そのものの硬さだが、質量と冷気が加わり圧倒的な存在感を放っている。


『グルァァァァァァァァ!!』


 咆哮が轟き、周囲の草が凍りつく。

 盗賊二人は顔を青ざめさせ、尻餅をついた。


「や、やべえぞこれは!」

「承知!」


 二人は我先にと森へ逃げていった。


「……よし、脅すだけで済んだな」


 龍を消し、安堵した俺が振り返ると――


「ぴ、ぴくぴく……」


 小柄な盗賊サルテガが、まだ顔にドラを張り付けたまま地面で痙攣していた。


「あーー! ドラ、もういいから戻れ!」


「ピー!」


 呼ぶと、ドラは嬉しそうに飛び跳ねて戻ってきた。

 俺は頭に乗せ直し、盗賊を放置した。


「……生きてるし大丈夫だろ」


 そう呟きながら、助けたおじさんの荷馬車を見やった。


「た、助かった……嬢ちゃん、命の恩人だ!」


 おじさんが涙目で感謝を述べる。


「気にすんな。……俺も道の途中だしな」


 軽く手を振り、俺は再びリーフ港を目指して歩き出した。

 頭には冷えピタ代わりのスライム――相棒のドラを乗せて。



---


何か個性的な盗賊って最後まで使いたいですよね。

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