8、ようやく出港
8話です
食堂をあとにして、俺とラルドさんは港へ向かって歩いていた。
潮風が強くなり、鼻をくすぐる海の匂いが濃くなる。遠くで波が砕ける音が聞こえ、船乗りたちの怒鳴り声や笑い声が交じり合っていた。
「それにしてもミツキの魔法は凄いな。氷をどんな形でも出せるなんて、見たことがない。化け物みたいな龍から、さっきはナイフまで……魔法って、そこまで自由なものなのか?」
ラルドさんが不思議そうに尋ねる。
「いやぁ……わかりません。元から使えてた、って感じで」
「ほう、そうか! ワハハハ!」
ラルドさんは豪快に笑った。なぜ笑うのかはわからないが、まあ楽しそうならいいか。
港が見えてきた。左には白い灯台、すぐそばには石造りの倉庫が並び、荷馬車や人足たちが忙しそうに行き交っている。
木製の大きな帆船が二隻、桟橋に停泊しており、甲板では水夫たちが縄を引いたり、樽を転がしたりしていた。
俺と同じくらいの年頃の少年少女たちもちらほら見える。きっと同じように学校へ向かうのだろう。
「ちょっと手続きをしてくるから、ここで待っててくれ」
そう言ってラルドさんは足早に去っていった。
俺は木箱の上に腰を下ろし、頭のドラをぷにぷに押し潰して遊んでいた。
「やあ、君。また会ったね」
突然、背後から声をかけられた。
え……ナンパ? と思って振り返ると、そこに立っていたのは白いスーツに身を包んだ、あのイケメンだった。
「あ、あのときの……」
ギルド前でぶつかった青年だ。
長身で整った顔立ち、外ハネの緑髪が陽光を反射してやたら眩しい。
「こんなところで何をしているんだい?」
「護衛をしながらアプテットに行って、学校に入ろうかと思ってます」
「ふふ、奇遇だね。僕も今から学校へ向かうところなんだ」
(……は? こいつ学生なの!? 貴族のお坊ちゃんか先生だと思ったのに……)
「ジン様、そろそろ出発です」
背後から澄んだ声が響く。
見ると、金髪を揺らしたエルフのメイドが立っていた。ピシッとした姿勢、切れ長の瞳。全身から「お堅い」オーラが溢れ出している。
(おいおい……やっぱり貴族かよ! メイド連れとか、リアル貴族テンプレじゃねーか!)
「おっと、行かないと。向こうで会ったらよろしく」
ジンは軽やかに笑い、船へと向かっていった。
メイドも俺に一礼し、静かに後を追う。
(ちくしょう……金持ちめ……。侍らせやがって……ペッ!)
心の中で毒づいていたら、ラルドさんが戻ってきた。
「どうしたんだ、ミツキ? 怖い顔して」
「な、なんでもありません」
やべっ、顔に出てた。俺は慌てて取り繕った。
……べ、別に嫉妬なんかしてないんだからね!?
「準備ができた。船に乗り込むぞ」
ラルドさんの声に、俺は大きく頷いた。
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荷物の積み込みを手伝ったあと、俺たちは帆船へと乗り込んだ。
帆が張られ、風を受けて膨らむ。
船がきしみを上げて動き出し、やがて港が小さく遠ざかっていった。
海鳥の鳴き声が空を渡り、潮風が頬を撫でる。
(おおお……出航だ! ……って、ベタに船酔いすると思ったか? 残念だったな! 俺は昔から船酔いしないタイプだ! ハーハハハ! ……って誰に言ってんだ俺……)
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「いやぁ、すまなかったな。手伝ってもらって」
「いえいえ、こちらこそ色々世話になってますから」
船縁に並んで立ちながら、ふと疑問を口にした。
「そういえば、僕と同じくらいの子たちが船に乗ってますけど、あれも学校に行くんですか?」
「そうだな。今は春の月だから、この船に乗る若い者の多くはアプテットへ行くはずだ」
「春の月……?」
「おお、知らんのか。春の月は一日から九十日まであって、あとは夏の月、秋の月、冬の月……全部で三百六十日だ」
「三百六十日……一か月九十日!? 長すぎだろ!」
思わず声が裏返った。
ラルドは肩を揺らして笑う。
「もともとは商人が使っていた暦だがな。今では王国全土で使われている」
(なるほど……地球より五日少ないし、一月三倍長いのか。慣れるまで混乱しそうだな……)
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「ミツキ、到着は明日になる。先に部屋を確認してこい。あとは自由だ」
「護衛はいいんですか?」
「船の上で襲われはせんだろう」
そう言って、俺たちは船室へ向かった。
階段を下りると、木の通路がまっすぐ続き、左右に等間隔で扉が並んでいる。
ラルドは少し気まずそうに言った。
「……部屋が取れなくてな。一緒なんだが、いいか?」
「別に構いませんよ」
(まあ……おっさん相手に間違いは起きないだろ。……大丈夫だよな? いや、大丈夫なはずだ! もし何かあったら凍らせて海に捨てればいいし!)
105号室を開けると、二段ベッドと小さな机だけの質素な部屋が現れた。
ラルドは荷を置き、ベッドに腰を下ろす。
「ワシは休む。ミツキは自由にしていいぞ」
そう言われ、俺は再び甲板へ向かった。
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外に出ると、夕焼けが一面を染めていた。
海は真っ赤に輝き、帆の影が長く伸びている。
波の音と木材のきしむ音だけが響き、時間がゆっくりと流れていた。
「……暇だ」
手すりに顎を乗せ、ぼんやりと海を眺める。
胸の奥に少しの不安と、大きな期待が渦巻いていた。
その時。
「あの……すみません」
背後から少女の声がした。
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グヘヘヘようやくミツキが寝たか。
今行くぞミツキちゅうわーん\(^^)/←おっさん
シネーパキン←凍る音(# ゜Д゜)←ミツキ
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ポイ( ・_・)ノΞ●
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