59、フェンリル
59話です。
真っ黒な世界に来た。
俺の精神世界か、久々に来たな。
俺は起き上がって周りを見渡すと、フェンリルが腕を組ながら、目をつぶって立っていた。
何してんだ?そう疑問に思いながらも近づいた。
「あんたには、感謝するわ。
僕の敵を取ってくれたわけだしね。」
「何だよ、急に感謝なんかしやがって?」
「僕がお礼を言うことなんて滅多に無いんだからな!光栄に思いなさい。」
「あーー、うん。」
どうしたんだろうか?フェンリルは?
「これで僕も帰ることが出来る。」
「え!フェンリル帰るのか?」
「当たり前でしょ、僕は死んだんだから大人しく神の元に帰るのは仕方ないことよ。」
フェンリルが帰るのか、今までさんざん振り回されたのだが、いざ居なくなると寂しくなるな。
「最後に手合わせするわよ。
あんたがどれだけ強くなったか見てあげるわ。」
フェンリルが魔力を練り上げて拳を構えた。
最後の手合わせか、せめて1発でも当てて終わりたいものだな。
俺も魔力を練り上げて、拳を構えた。
「あんた、準備はいい?」
「いつでもいいよ。」
「「《氷を纏え》」」
俺とフェンリルがあ互いに、身体強化を行って飛び出した。
フェンリルが俺に向かって殴り付けてくる。
両手で手首を掴み、そのまま背負い投げをした。
フェンリルが空中を回転しながら、地面に着地して再び向かってくる。
「動けるようになったじゃない。」
「死ぬ気で頑張ったからな。」
フェンリルが楽しそうに語りかけてくる。
今度はフェンリルが俺の横に移動して頭を蹴りに来た。
すぐさましゃがみ、蹴りを避けてフェンリルの顔面を殴り返す。
フェンリルが俺に背中を向けた状態で俺のパンチを首だけで避けて、俺の腹に肘を放ってきた。
俺はお腹にもろに喰らながらも後ろに下がり距離を取った。
いってー、場数の違いなのだろうか、この差は。
お腹に手を当てながらフェンリルの方を向いて警戒する。
「僕の動きについてこれていることは誉めてあげられるわ。
このスピードで戦えるのは世界でも少ないわ。
でも、あんたはまだまだ経験不足ね。」
「俺は、まだ最近戦いだしたばっかりだからな。」
「次いくわよ。」
すぐさま、フェンリルが俺に向かって突っ込んでくる。
「相手の攻撃は避けることに意識をしなさい、世界には喰らってはいけない攻撃もあるのよ。」
フェンリルが乱打を放ってくる。
言われたとおりに、避けることに集中する。
フェンリルの頭から体のすべてを次々に拳を放ってくる。
体を必死に動かし、フェンリルの乱打をひたすら避ける。
乱打を止めて俺から距離を取った。
「これだけ出来る魔力があるのなら、最後に技を教えておくわ。
両腕と両足に魔力を集中させなさい。」
俺は魔力を練り上げて両腕両足に集中させる。
すると水色の光で覆われていく。
「その状態なら刃物も触れられるわ。」
マジですか、これで刃物触れても大丈夫なのかよ。
半信半疑だが、信じることにしよう。
「そして、この状態で放つ必殺技があるわ。
あんた魔法障壁は出せる?」
「やり方がわからない。」
「はぁーー、いい《プロテクション》
これで出せるわ。」
「《プロテクション》」
すると、俺の体がムネモシュネが使っていたように障壁で囲まれた。
「これで防げない攻撃は守りなさい。
で今から教えるのはプロテクションを通り抜ける技、しっかりと覚えておきなさい。」
フェンリルが魔力を纏わせて、殴りかかってくる。
「《浸透氷撃》」
フェンリルが俺の障壁を殴りつけてくる。
すると拳は届いていないのに、衝撃だけが俺のお腹に当たり、あまりの痛さに膝を付いた。
「がはぁ!!、ぐっ!!いてーこれ。」
「この技は、相手の防御をすべて無視して放つ技、あんたの役に立つはずだから覚えなさい。」
俺は痛みを我慢して、立ち上がった。
するとフェンリルが障壁を張って、立っている。
「やってみなさい!!」
魔力を纏わせて、両腕両足に纏わせて、息を吸って、ゆっくりと吐いた。
地面を力強く踏み抜き、フェンリルに向かう。
「うをーー!、《浸透氷撃》」
フェンリルの障壁に俺の拳がぶつかった。
だが、フェンリルにダメージが通っていない。
「違う、そうじゃない。
拳を撃ち抜くんじゃなくて魔力を貫きなさい。
魔神の魔法は、イメージなのよ。」
魔力で貫くか。
俺は再びフェンリルに向かって、駆け出して、拳を障壁に当てた。
「《浸透氷撃!!》」
するとフェンリルが障壁をといた。
そして、お腹を押さえて、俺に笑顔を顔を向けた。
「やれば出来るじゃない。
僕が教えられることはこれだけだよ。」
フェンリルがそういった瞬間、体から、光が漏れ始め、ゆっくりと光の玉が空に浮かんで消えていく。
「僕もここまでか。」
徐々にフェンリルの体が薄くなっていく。
本当にお別れなのかよ。
嘘だろ、何だかんだで最後まで一緒なんじゃないのかよ。
「きっとシヴァは自分の事を責めると思うから、こう言いなさい。
僕を倒したことを光栄に思いなさい、と。」
「わかった。いままでありがとう、ハチャメチャなことも多かったけど、楽しかった。
フェンリルのお陰で、強くなったのは確かだったよ。」
「当たり前じゃない、僕が修行して上げたんだから、強くなるに決まってるでしょ。
それじゃぁね、世界は頼んだわよイツキ。」
俺に指を指して、フェンリルが光と共に周りに弾けて、消えていった。
「最後に名前なんか呼ぶなよ、ばか野郎が。」
俺は最後に優しかったフェンリルに涙を流した。
フェンリルさんとお別れです。




