↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/73

16、ネリーの試験

16話です

しばらくミツキさんと他愛ないおしゃべりをしていましたら、前方に人影が現れました。

先生でしょうかしら? 場の空気が一瞬で張り詰め、ざわめいていた広間が静まり返ります。


「――それでは試験を開始します。お手元の受験票を破ってください」


……あぁ、先ほど渡された紙のことですね。

改めてよく見れば、複雑な紋様が刻まれ、転移魔法の術式が絡められておりますわ。

ならば――破るしかありません。


紙を裂いた瞬間、視界がぐにゃりと歪みました。

足元がなくなったような、頭を鷲掴みにされて引きずられるような、不快な浮遊感。


「っ……これは……なかなか気持ちの悪い感覚ですわね」


瞬きを繰り返すうちに、やがて視界が澄み――気づけば、私は円形の闘技場の中央に立っておりました。

結界空間……高度な術式で構成されたものに間違いありません。ここならば確かに、死なぬ程度に戦いを試せるでしょう。


前方に、ローブ姿の人物が一人。顔は影に覆われ、男か女かも分かりません。

……人間味が感じられませんわね。やはり分身でしょうか。


「では今から試験を開始します。一騎討ちです。どちらかが倒れれば自動的に戻されますので安心してください。痛みは伴いますが死には至りません。全力で挑んでください。

それでは――五、四、三、二、一……開始!」


号令と同時に、試験官が剣を構えて突進してきました。


「まぁ……随分と遅い剣筋ですこと」


上段からの一撃を軽やかに横へ躱す。薙ぎ払いはステップでかわし、突きは身を捻ってすり抜ける。

靴音が石床に響き、衣服がひらりと舞う。

――まるで舞踏会でのダンスのように、攻撃を避け続ける私。


「避け続けるだけというのも……そろそろ退屈でしてよ」


横薙ぎの剣を右手で掴み、そのままへし折りました。金属が鈍い悲鳴をあげる。

そして返す足で胸元を蹴り飛ばすと、試験官の体が鈍く弾かれ、床を擦って後退していきました。


それでも冷静に体勢を立て直し、距離を取る。ふふ、なかなか落ち着いていらっしゃいますわね。

さて、次はどのように出てくるのかしら?


「炎の槍よ、敵を貫け――《ファイアランス》!」


赤々と燃え盛る槍が生まれ、矢のように迫る。

熱風が頬を焼き、前髪がぱちりと焦げた。


「詠唱……おそいですわ」


「――《ウォーターランス》!」


無詠唱で放った水槍が炎を貫き、蒸気を撒き散らして相殺する。

白い霧が一瞬、視界を覆いました。


すぐに次の呪文が響きます。


「風の刃よ、敵を切り裂け――《ウィンドカッター》!」


空気が震え、鋭い刃となって奔る。

これは真正面から受けるのは危ういですわね。


「《ウォール》!」


土壁が隆起し、風の刃を受け止めました。

鋭い音と共に切り込みが走る。壁の表面が裂けるも、突破は許さない。


「……あぁ、つまらなくてよ。そろそろ終わりに致しましょう」


これは少し難しい魔法。私も詠唱を必要とします。


「原初なる雷よ――今、目の前の敵に裁きを下しなさい。《ジャッジメント》!」


掌に現れた雷球が、バチバチと音を立てる。

青白い光が空間を照らし、髪が逆立つ。

空気が焦げる匂いが漂い、床石がパキパキとひび割れていく。


次の瞬間――


轟音と共に光線が走り、壁を薙ぎ払い、爆発が炸裂した。


「きゃっ……!」


耳を打つ轟音、目を焼く閃光。

衝撃で床が揺れ、煙と瓦礫が舞い上がる。

まるで戦場の惨状。試験官の姿は、もうどこにもありませんでした。


「……少々、やり過ぎてしまいましたわね」


肩を竦め、深呼吸で胸の鼓動を落ち着ける。

その瞬間、視界が再び揺れ、気づけば元の広間に。

どうやら試験は終了のようです。


近くの先生らしき方が声をかけてくださいました。


「合格者ですね。本日はこれで終了です。そのまま寮へ。二日後に入学式がありますので、その時はまたこの部屋に集合してください。寮までは《ライト》の光が導きます」


淡い光球がふわりと浮かび、私を導く。


「……寮、ですか。ミツキさんと同じ部屋であれば……」


胸が少しだけ高鳴ります。


案内の光を追い、私は56号室に辿り着きました。

中は二人部屋。ベッドが二つ、机が二つ。窓からは中庭が見え、木々のざわめきが心を落ち着けます。

殺風景ながらも清潔で、学舎で過ごすには十分すぎる環境でした。


「ふふ……二人部屋ということは、もしや……」


頬が緩む。ミツキさんと共に学べる未来を夢想しながら、私は再び会場に戻り、彼女を待ちました。


しかし――いくら待っても、ミツキさんは現れない。


「まさか……不合格に……?」


いいえ、そんなはずありません。あの方が落ちるなど……。

焦燥が胸を焦がし、指先が冷えていく。


私は寮の廊下にいた合格者に声をかけました。


「すみません、少しよろしいかしら」

「はい? あ、合格者の方ですね。不都合でも?」

「いえ、お友達を探しているのです。ミツキ・カガミさんをご存じありません?」

「ああ……それならジン様が試験を担当された方ですね。今、治療室にいるはずですよ」


「治療室……! 怪我をなさったのですか!?」


血の気が引きました。

頭が真っ白になる。足元が崩れ落ちるような錯覚。


「その場所を――はやく教えてください!」


慌てふためく私に、その生徒は《ライト》を飛ばしてくれました。


光を追い、息を切らしながら廊下を駆け抜ける。

靴音が響き、影が揺れる。心臓は早鐘のように打ち、喉が痛いほど乾いていた。


やがて辿り着いた治療室。扉を押し開ける。


「――ミツキさん! 大丈夫ですの!?」


震える声が室内に響き渡った。



---

戦闘書くのが難しいです、すみません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。