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11、学園都市アプテット

11話です

ダイヤル街の大通りを荷馬車で進んでいく。

 両端には色とりどりの店が軒を連ね、果物、肉、魚……本当に様々なものが売られていた。

 果物は見たこともない形や色のものが多く、紫色に輝く実や、切ると中が淡い光を放つ果実まで並んでいる。いったいどんな味がするんだろう。甘いのか、すっぱいのか……いや、もしかして食べたら光るんじゃないか?


 魚もすごい。口を開けたまま鋭い牙を見せるやつ、目が三つ並んでるやつ、そして本当に体全体がキラキラ輝いているやつまで。水槽から顔を出すたびに「ギョロリ」と目が動き、子どもが泣きそうになって母親に抱きついている。うん、俺もちょっと怖い。


 他にも魔道具らしき品を広げている露店、派手な布を売る行商、焼いた肉を串に刺して売る屋台……街全体がまるで祭りのように賑やかだ。鼻をくすぐる香ばしい匂いに思わず腹が鳴った。

 あー、そういえば朝から何も食べてなかったんだっけ。これは完全に飯テロである。焼き鳥みたいな匂い、スープの煮える香り、甘そうな焼き菓子……あぁ、腹減った。


 ――と、そんなことを考えていた矢先。


「ネリー、なんか近くない?」


「え?そんなことありませんよ」


 俺の隣に座るネリーは、笑顔を浮かべたまま腕を取ってべったりとくっついている。

 ……え、コアラ?あなたはコアラですか?

 俺の中で勝手に形成されていた「知的でおしとやかなお嬢様」のイメージが、崩れ去ろうとしている。いや、俺が勝手に思い込んでいただけなんだろうけど。


 まぁ……これも女の子同士のスキンシップ、ってやつなんだろうな。うん、きっとそうだ。俺は今女の子の姿だし、そういう距離感なんだ。……たぶん。


「ミツキとネリーは仲がいいな。いいことだ」


 前で手綱を引いていたラルドさんが、いかにも親目線という感じでうんうん頷いている。

 いやほんと、あなたは俺の父親ですか。


 おまけに通りを歩く人々がちらほらとこちらを見ている。視線の大半はネリーに向いているらしく、若い男たちが思わず足を止めたり、女性たちが「あの子かわいい」と囁いていたり。確かに、銀髪ツインテールでゴスロリ服の美少女なんて目立つに決まってる。俺? はい、添え物です。


 そんなこんなで、ネリーに引っ付かれたまま荷馬車は街道を抜け、アプテットへと向かっていった。



---


 道中、退屈しのぎに世間話を始める。


「なぁネリー、どうして学校に行くんだ?やっぱり学ぶため?」


「……いえ、お家を追い出されてしまって、行くあてもなくて。それで学校に行こうと決めたんです」


 微笑んで答えるネリー。

 ……え、さらっと言ったけど、けっこう重くないそれ!?

 家を追い出された?何やら事情がありそうだけど……聞いていいのか悪いのか、俺のデリカシーセンサーがブンブン鳴っている。


「でも大丈夫。今は大切なものを見つけましたから」


 そう言って、じっと俺を見つめてくる。

 な、なんだろう。目が合った瞬間、心臓がドクンと跳ねた。


「そ、それは……良かったな」


 慌てて話題を変えようとすると、今度はネリーが問い返してきた。


「ではミツキさんこそ、何故学校に?」


「え? えーっと……ギルドに入ろうとしたらお金なくてさ。そしたら受付のお姉さんに『学校に行けば?』って勧められて……それで」


「まぁ……それは大変でしたね。でも、一緒に受かりましょう。きっと大丈夫です。……それにしても」


 ネリーは頬に手を当て、目をとろんとさせて顔を赤らめた。


「ミツキさんは可愛いですね」


 ゾワリ、と背筋に寒気が走った。

 プレッシャー。やばい、これはヤバい。まるで見えない鎖で拘束されているような圧力を感じる。

 今にも“ぱくり”と食べられそうな……いや、比喩じゃなくて本気で。


「もう……食べちゃいたいくらい可愛いです」


「ひっ!」


 ね、ネリーさん?そのセリフ、洒落になってませんけど!?

 俺の頭の中でサイレンが鳴り響く。「逃げろ!」と叫ぶが体が動かない。目の前にいるのは獲物を狙う猛獣だ。笑顔なのに、全然笑ってない。


「ミツキ、ネリー。そろそろ着くぞ。ここまでご苦労だったな」


 ラルドさんの声で、張り詰めていた空気がふっと軽くなった。

 ネリーの表情もいつもの微笑みに戻り、俺は一気に解放感に包まれる。


(あ、危なかった……!ラルドさん、あなた本当に神ですか?)



---


 荷馬車はそのままアプテットの街へ。

 門番に止められるのはお約束だったが、事情を説明すればすぐに通してもらえた。


 ネリーは最後まで俺の腕にしがみつき、にこにこと笑顔を絶やさなかった。

 ……その笑顔が逆に怖い。蛇に睨まれた蛙ってこんな気持ちなんだろうな。



---


 アプテットの街に入ると、ラルドさんが俺たちに向き直る。


「ここまで護衛してくれて助かった。ミツキには命も救ってもらったし、本当にありがとう」


 そう言って、深々と頭を下げてきた。


「いえいえ、俺も道を知らなかったので、逆に助かりましたよ」


「これは感謝を込めた礼だ。受け取ってくれ」


 服の中から財布を取り出し、金色のコインを差し出してくる。

 ネリーが横からさらっと言った。


「金貨ですね」


 き、金貨!?まじか!?

 俺は驚いてラルドさんを見返したが、彼は穏やかな笑みを浮かべている。


「いいんだ。これは命を救ってもらった礼だ。むしろ受け取ってくれた方が、私も気が楽になる」


 そう言われては断れない。恐る恐る金貨を受け取り、両手で大事にポケットへしまった。


「そうだ。学校はあの城のような建物だ。受かるように祈っているから、頑張れよ」


 ラルドさんの言葉に、自然と胸が熱くなる。

 ありがとう、ラルドさん。あんた、本当にいい人だ。俺の中ではもう完全に“父親ポジション”である。



---


 ネリーと二人、学校へ向かう。

 街を見渡すと、中心にそびえる城のような建物、その隣には巨大なコロシアム。

 あれ……何万人収容できるんだ?試験って、もしかしてあそこでやるのか?

 城を囲むように家々が立ち並び、さらにその外周を円形の街壁が取り巻いている。防御力の高さは折り紙つきだ。攻める側としては悪夢の構造だろう。


 城の前まで来ると、すでに大勢の子供たちが門の前に並んでいた。

 なっ、長い……いったい何人受験するんだ。


 とりあえず後ろに並び、前の男の子に声をかける。


「あの、すみません。ちょっといいですか?」


「あ、ああ……な、なんだよ」


 振り向いた少年は、俺の顔を見るなり真っ赤になった。

 うん?どうした?熱でもあるのか?


「あ、いや、その……何か用か?」


 カミカミで挙動不審。さらに俺の背後を見た途端、顔が青ざめて震え出した。

 ……あぁ、なるほど。後ろにいるネリーがプレッシャーをかけたんだな。にっこり笑ってるけど、笑顔の圧力がやばい。


「ここって、学校の受付ですか?」


「あ、ああ」


 少年は小刻みに頷いて答えると、すぐに顔を背けて黙り込んでしまった。

 ……なんかごめん。


「ネリー、ここで合ってるって」

「ありがとうございます。……でもあまり男の人に話しかけちゃだめですよ。ミツキさんは可愛いですから、襲われます」


 いやいやいやいや、襲われる心配よりもネリーさんに襲われそうなんですが!?

 内心突っ込みながらも、表情には出さず頷いておいた。



---


 しばらく列で待っていると、受付の人が声をかけてきた。


「次の方、どうぞ」


「すみません、面接を受けたいんですけど」


「はい。ではお名前をお願いします」


「ミツキ・カガミです」


「ミツキ・カガミ様ですね。ではこちらをお持ちください」


 差し出されたのは、木目の模様が刻まれたコイン。


「明日、午前十時から試験を行います。その際に必ず持参してください」


「……あ、今日じゃないんですね」


 ということは宿を探さなきゃいけないわけだ。コインを大事にポケットへ入れる。


「ネリー、先に向こうで待ってるね」

「ええ、すぐに行きますから。変な人についていかないでくださいね」


 ……ネリーさん、母親ですか?

 そう心の中で突っ込みながら、壁際に寄りかかって待っていた。


 すぐにネリーも受付を済ませて戻ってくる。


「お待たせしました」

「よし、それじゃあ宿を探そうか」


 こうして俺たちは並んで歩き出し、明日の試験に備えることにした。



---


少し文を直します時間をください

申し訳ありません

m(__)mm(__)mm(__)mm(__)mm(__)mm(__)mm(__)m

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