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10、ダイヤル街

10話です。

特に夢を見ることもなく、俺は目を覚ました。

 視界に映ったのは、相変わらず俺の横でぷるんと丸まっているスライミー――ドラ。

 目がないせいで寝ているのか起きているのか分からない。いや、そもそも寝るという概念あるのか?


「おーい、起きろー」


 頭に乗せてみたら――『ポトン!』と落下。

 ……うん、寝てますねこの子。


 両手で持ち上げて、ぷにぷにこね回す。

 ドラの体は冷たくて柔らかく、妙に癖になる触感だ。指が沈んでは押し返され、スライムボールで握力鍛えてるみたい。

 しばらくコネコネしていると、「ピーー!」と甲高い鳴き声を上げた。

 よし、起きたな。頭に乗せて準備完了。


「よっと」


 ベッドから飛び降り、床に軽やかに着地。今日も魔神ボディの身体能力は健在だ。



---


 部屋を見回すが、ラルドさんの姿が見えない。

 まさか置いていかれた?いや、あの人なら先に朝飯食べてるだろ。

 とりあえず甲板に出て、潮風にでも当たってこよう。


 階段を上がると、すぐに海の匂いが鼻を突いた。

 以前よりも鼻が利くようになったせいで、海の潮気がきつい。船酔いじゃなくて“匂い酔い”しそうだ。


 船の先端にはラルドさんが背を向けて立っていた。

 海を見つめるその姿は、どこか渋くて――いや、違うな。背中から滲むオーラは完全に悪役フラグだ。


(……今振り返って「フハハハ!実は私は魔王軍四天王の一人ラルド様だ!」とか言い出したらどうしよう)


 そんな妄想をしながら近づくと、タイミングよくラルドさんが振り返った。


「おっと、ミツキか。その服、昨日と違うな?うん……どこかの貴族のお嬢さんみたいだ」


 ――普通に返された。うん、ちょっと期待してたんだよ、俺。

 「まさかお前が……!」的な展開を。


「いや、昨日友達になった人にもらいまして」

「ほう!もう友達ができたのか。そうかそうか、良かったなあ」


 ラルドさん。あなた俺の父親ですか?

 妙に親目線でほめてくるから、逆に照れるんですけど。



---


「そうだラルドさん、学校ってどんなところなんです?」


「そうだな……世界で一番大きな学校だ。読み書きから戦闘訓練まで、色々と学べる。確か名前は――フライハイト学園だったな。受験者は多いが……あれだけの魔法を使えるお前なら大丈夫だろう」


「そ、そうですかね……」


 期待されると逆にプレッシャーだ。

 でもラルドさんが保証してくれるなら、何とかなりそうな気がしてきた。


「――おっと、港が見えてきたぞ。荷物を下ろす準備をせんとな」

「あ、俺も手伝います」


 俺はラルドさんの後を追い、船内へと戻った。



---


 ◇ ◇ ◇


 港に船が到着すると、掛け声と共に船員たちが縄をかけて船を固定する。

 木の甲板がギシギシと揺れ、人々の喧騒と潮の匂いが入り混じる。

 荷物を降ろす手伝いをしていると、ラルドさんの商隊の荷馬車が近くに用意されていた。


「ふぅ……なかなか重労働ですね」

「ははは、だがいい運動になったろう」


 ラルドさんは涼しい顔だ。……この人、絶対若い頃は冒険者だっただろ。

 そう思いながら港を見回すと、人の数の多さに驚かされた。


 リーフ街とは比べものにならないほど大きな街。

 家々は石やレンガで作られ、通りには商人たちの呼び込みの声が飛び交う。

 異種族の姿も多い。人族、獣人、エルフ、ドワーフ……みんな当たり前のように同じ市場を歩いている。

 これだけ種族が混ざり合って暮らしているのは、やっぱり“世界の中心”にある街だからか。


「すごいだろう。この街はな、世界の中心にあるおかげで、いろんなものが集まってくるんだ。だからここまで発展したんだ」


 なるほど。世界の縮図みたいな街ってことか。

 住むには便利そうだな。……でも今は学校が先だ。



---


「ミツキさん」


 聞き覚えのある声がして振り向くと、船から降りてきたのはネリーだった。

 昨日の夜に出会った銀髪のお嬢様。俺がもらった服を見て、ぱっと顔を輝かせる。


「おはようございます。あ、服を着てくれたんですね!やっぱり似合ってます。天使みたいですよ。差し上げて正解でした」


 いきなりべた褒め。

 いやいや、そんなストレートに言われると照れるんだけど!?


「今からアプテットに向かうんですか?」

「そうだね。護衛としてラルドさんと一緒に」

「護衛……なるほど」


 ネリーがこっちを見て微笑んだところで、ラルドさんが首をかしげる。


「ミツキ、このお嬢さんは?」

「船で知り合った友達のネリーです。……こっちは護衛を頼んでくれたラルドさん」

「そうか。よろしく頼むよ」

「ええ、こちらこそ」


 二人が自然に挨拶を交わす。

 だからさ、ラルドさん……あなたは俺の父親なんですか?どう見ても娘を友達に紹介してるお父さんにしか見えませんよ。



---


「ネリー、お前さんも一緒に乗っていけ。どうせ一人でも二人でも変わらん」

「えっ……いいんですか?」

「ああ、乗りなさい」

「ありがとうございます」


 嬉しそうに頭を下げるネリー。

 こうして俺とネリーは荷台に並んで座り、ラルドさんの操る馬車は石畳の街道を走り出した。



---

「ウハハハハハハ、実は私はロリコンだったのだ。」←ラルド


「うん知ってる。」ミツキ


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