御形の章 第零幕 わたし
わたしの話を始めよう。
まずは、わたしのこと。
背は高い。
ここいらで背が高い人と聞けば、
男なら籐吾。
女ならわたしの名が出るだろう。
籐吾は高いと言うより、でかい、だけど。
見た目は――まあ、悪くはないと思う。
自分で言うのもなんだけど、
菖蒲の次くらいにはいいと思う。
菖蒲が別格なだけで。
ただ、色気がない。
わかってる。
性格のせいだろうな。
がさつ?
まあ、それも仕方がない。
簡単には治らない。
今さら無理して治すものでもないだろう。
恋バナかあ。
わたしには縁がない。
よね。
そんなわたしの周りでは、
雨の季節が終わった。
これまでの雨季は静かな世界。
雨が降って、
みんな家や店にいて、
外を歩く人も少なくなって。
雨音ばかりが聞こえる季節。
――だった。
今度の雨季は、まあまあ賑やかだった。
なんで?
うちの妹のおかげ。
朝から晩まで、
まあ、元気。
走り回ってる。
あっちにいたと思えば、
こっちにいる。
こっちにいたはずなのに、
あっちから帰ってくる。
そして、また出ていく。
ほんと、よく動く。
妹、菖蒲。
あ?
菖蒲って妹かって?
わたしの大事な大事な妹です。
そんな賑やかな雨季も終わった。
――賑やかな雨季ってのも変だけど。
雨が上がって、
少しずつ空が明るくなって。
暖かな風が吹くようになった頃。
食堂の蓼にも変化があった。
お腹に赤ちゃん!
聞いた時は驚いた。
でも、
とっても嬉しそうな蓼を見ていたら、
こっちまで嬉しくなった。
食堂の元気印がお母さんになる。
そっかあ。
お母さんかあ。
ちょっとうらやましい。
……いや。
すごくうらやましい。
いいなあ、赤ちゃん。
棟梁も家を作り始めた。
蓼と、
これから生まれてくる赤ちゃん。
二人が暮らす家。
少しずつ形になっていく家を、
通りかかるたびに眺める。
いいなあ。




