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剣の世界〜とある村の一日〜  作者: なえみ
花の 編

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菖蒲の章 第一幕 おためし

さあ、誰に頼もう。


定期便。


その、お試し便。


やっぱり老ハンターさんは外せないよね。

絶対、連れて行って帰って来てくれる。


リーダーさんは忙しいかなぁ。

とりあえず聞いてみよう。


あと、馬さんに乗れるハンターさんだよなぁ。


うちのおじいちゃん。

念のため、農家の獣医さん。

仔牛が産まれる時期は無理だけど。


あとハンターさんが一人。


んー。

籐吾兄さんに頼むかなぁ。

なんだかんだで器用だし。


んー。


あと、大工さん。

鍛冶屋さん。

革職人さん。


えっと。


いち、に、さん、し、ご、ろく、なな……はち?


あれ?

わたしで、きゅう。

それに御者さん。


……。


キャラバンじゃん、これ。


えー、なんで?

お試し便なのに。


あー、もういいや。


老ハンターさん。

うちのおじいちゃん。

籐吾兄さん。

わたし。

御者は兄さんにやってもらお。


あとは積荷。

積んでなくてもいいけど、確認は必要よね。


とりあえず薬草。

保存食。

樽に水を詰めて積んでみよ。


んー、よし!


「おじいちゃーん!」

「ん?」

「明日、お試し便について来てください」

「あしたか?」

「なにかあるの?」

「いや、ないから大丈夫だ」

「んん? 大丈夫なのね」


まあ、大丈夫なら大丈夫なんでしょう。


次。

老ハンターさんは食堂かな。


「こんにちはー!」

「おや、菖蒲。いらっしゃい」


「老ハンターさん来てます? ……いますね! 老ハンターさーん!」

「なんじゃ、菖蒲か。どうした?」

「明日、お試し便出したいんで、先導お願いしてもいいですか?」

「どこまで行くんだ?」

「第一宿泊地までです」


「馬か?」

「馬さんです。どれくらいかかるか、どれくらい運べるか」


「それの確認ってわけだ」

「はい!」

「あい、わかった。引き受けよう」

「ありがとうございます!」


よし、一人。


「あ、それと女将さん!」

「なんだい?」

「保存食、少し持って行っていいですか?」

「ああ、好きにしな。また後で補充しといてくれればいい」

「ありがとうございます!」


よし。


あ、大工さんに荷車のこと聞かなきゃだ。


食堂を出ると、その横からトンテンカンと音が聞こえてくる。


「こんにちはー! 棟梁さーん!」

「んー? どうした菖蒲?」

「何作ってるんですか?」

「ん? 見ての通りの家だな」

「家ですか……家?」

「ああ、蓼のな」

「蓼さんの家……」


……へ?


あっ!


「ちょっと、また後で来ますね!」

「ああ?」


食堂へまっしぐら。


「蓼さん!」

「はい? なんでしょう?」

「うん、おめでとうございます!」


「ん?」

「家!」

「あ、はい」


で。

蓼さんのお腹を見る。


「ですよね!」


蓼さんが少し困ったように笑って、わたしの耳元に顔を寄せた。


「まだ、秘密ですよ」

「あー、わかりました」


わたしも小声で返す。

二人でにっこり。


そっかあ。

そっかあ。


……そうそう、棟梁さん!


また食堂を飛び出す。


「棟梁さーん!」

「忙しいやつだな、お前さんは」

「へへへ」

「で、なんだ?」


「馬さんの荷車なんですけど」

「おう、それがどうした?」

「明日、お試し便出したいんで見てもらおうと」

「あしたか?」

「はい、そのつもりで」


「わかった。後で見とこう」

「お願いします!」


「それと、戻ったらすぐ見せろ」

「戻ったらですか?」

「お試しなら、どこがどう傷んだのか見なきゃだろ?」

「あ、なるほど。はい! じゃあそっちもお願いします!」


よし。

大工の棟梁さんと話した後は――。


大事な馬さんに聞かなきゃ!


外苑へつながる出入り口へ向かう。


「馬さんに会いに来ました!」


当番のハンターさんに声をかける。


「毎日ご苦労さんだね」

「かわいい馬さんですから」

「今、ちょうど獣医さん来てるよ」

「あ、ラッキー!」


厩舎の方へ急ぐ。


「お疲れ様です!」

「おや、菖蒲さん。こんにちは」

「こんにちはです! どうでしょう? 馬さん。明日、お試し便出したいのですが?」

「お試し便?」


「あ、第一宿泊地までの、小さなキャラバンみたいなのです」

「小さなキャラバンね。馬達は問題ないよ」


「やった!」


馬さんの顔を撫でる。


「明日はよろしくね」


馬さんが、すりすりして来てくれた。


うん。

準備完璧!


……なんか忘れてる?


その日の夕方には、荷車をはじめ準備が整った。

わたしは荷車を前にして腕を組む。


――我ながら完璧!


明日が楽しみです。


朝。

今日も爽やかな風が村を通り過ぎていく。


いい天気!

絶好のお試し日和。


朝ご飯をみんなで食べて。

お試し便の話をして。

おじいちゃんと準備して。


さあ、出発。


……あれ?


「籐吾兄さんも準備してくださいよ」

「? おれ?」

「ですよ。荷車の御者してもらわないと、お試し便が動きませんよ?」


「え? おれ?」

「他にわたしに兄さんいませんよ」


「おれ、聞いてないけど?」

……。


「まあ、とにかく行きますよ! 早く準備して、馬さんのところに集合です!」

「ええ……」


――あ。

忘れてた? かな。


まあ、用意してくれてるからいいのかな。

うん。


先導に老ハンターさん。

荷車の御者を務める籐吾兄さん。

しんがりに、うちのおじいちゃん。


厩舎から外苑へ。

そのまま正門の横を通る。


「行ってきます!」

「はい、お気をつけて!」


衛兵さん達に手を振る。


さあ、外界。

やっぱり広い。


空。

雲。

草原。


その中を馬さん達は軽快に走ってゆく。


カタン。

カタン。

カタン。

カタン。


とっても軽やか。

景色も流れるように後ろへ消えてゆく。


太陽が真上に来る頃。

第一野営地に到着した。


「んーーーー」


荷車から降りて、大きく身体を伸ばす。


馬さんのところへ行って顔を撫でる。

馬さんも、すりすりしてくれる。


「頑張ってね」


水をあげた後は、近くの草をのんびり食べている。


「やっぱり、速いですねー」

「そうだな。ここまで違うとはな」


老ハンターさんも感心してる。


よしよし。

順調、順調。


「菖蒲ー!」

「はい?」


籐吾兄さんが荷車の方から顔を出している。


「昼飯は?」

「…………」


ん?

昼飯?

……。


「あーーー!!!」

「どうした?」

「忘れて来た……」

「え? 忘れた?」


こくこくとうなずく。


「なんだ? テーブルの弁当忘れたのか?」


おじいちゃんが聞いてくる。


「うん。忘れた」

「そうか。仕方がないのう。籐吾!」


「はーい」

「ちょっと留守番しとけ!」


「うす!」


籐吾兄さんは御者台に上がる。

おじいちゃんは馬で出かけて行った。


老ハンターさんも、草むらの中へ。


ガサゴソ。

ガサゴソ。


……。


しばらくして。

手に鳥をぶら下げて、おじいちゃんが帰って来た。


老ハンターさんも何やら収穫して戻ってくる。


「菖蒲! 火をおこせ」

「あ、はい!」


慌てて準備する。


おじいちゃんは手際よく鳥を解体して、串に刺して焼き始める。


老ハンターさんは採ってきた山菜を湯通ししている。


「菖蒲、皿持ってこい」

「はーい」


焼いた鳥。

山菜のおひたし。

味付けは素朴な塩味だけ。


でも。


「おいしい……」


心に染みる。


「すぐ出発するぞ。匂いにつられて来る連中には会いたくないからの」

「ごめんなさい」

「気にするな。野営は本来ならこれが普通だ」


凄腕のお二人さんは、何事もなかったようにお昼を調達して振る舞ってくれた。


やっぱ凄腕、恐るべし。


早々に火を片付けて、お試し便は再び出発する。


カタン。

カタン。

カタン。

カタン。


荷車のリズムも変わりない。


途中、休憩を挟みながら走り続ける。


と。


「あ!」


遠くに木の壁が見えてきた。


時は夕方。

でも、まだ太陽は赤くなっていない。


「見えました! 第一宿泊地です!」


正門前。

少し離れたところで止まる。

わたしが荷車を降りて、衛兵さん達へ挨拶に向かう。


二人いる衛兵さんのうち、一人がわたしを覚えてくれていた。


なんだろう。

素直に嬉しい。


わたし達はすんなり村へ入り、中央の広場へ。


宿屋さんの前へ到着したのは、空が赤く染まりだす、ほんの少し前だった。


荷車と馬さん達を三人に頼んで、わたしは宿屋さんへ。


「こんにちはー」

「いらっしゃい! おや、見た顔だねー。こんな時期にどうしたんだい?」

「はい、定期便のお試しに走って来てみました。今晩、お世話になってもいいですか?」


「もちろん! あんた達なら大歓迎さ」

「ありがとうございます! それと、これ」


一枚の紙を差し出す。


「これは?」

「蓼さんからのお手紙です」


「?!」


女将さんが紙を開く。

ゆっくりと字を追っていく。


その目から、涙がこぼれた。


「あの子は、うまくやってるかい?」

「はい。幸せそうにしてますよ」

「そうかい……うん。ありがとうね」


「あの、お手紙には?」

「うん。赤ちゃん授かったって」

「女将さんのお孫さんですね」


「うん……うん。わたしもおばあちゃんかあ」


「これからは温暖季も定期的にここに来ますから」

「ありがたいねえ」


「いえ、わたしが無理やり連れて行ってしまったようで、ちょっと……」


「そこは、あの子が決めた事。あんたには感謝だけだよ」

「ありがとうございます」

「こっちこそ、ありがとうね」


荷車へと戻る。


「宿屋さんは大丈夫です。今晩お世話になれます。もう入っても大丈夫だそうですので、いつでも準備できたら入っておいてください」


三人が手を上げる。


「それと、わたし役場に行ってきますから!」


そのまま役場へ向かう。


最初の、わたしの交易地。

なんだかもう、懐かしい気がする。


「こんにちは!」


受付で定期便のことを説明して、担当者さんをお願いする。


いつもの小部屋へ。

座ると、すぐに。


がらっ!


「やあ、やあ! 早かったですね! まだまだ先になると思ってました。こんなに早くおいでになるとは!」

「ありがとうございます!」


立ち上がって手を差し出す。


しっかりと握手。


「で? 今回はお試しという事ですか?」

「はい。実際走ってみて、問題なければ早速始めるつもりです」

「いやー、大した行動力だ。よくこんなに早く許可取りましたね」


「たまたま、うまくいっただけですよ」

「そういう事にしておきましょう」


「へへへ」


「では、早速お話を」

「そうですね。細かいところを確認しましょう」


日が暮れて。

役場での話も終わり、宿へ戻って来た。


「ただいまー」


おじいちゃんが手を上げる。


「お、ご苦労だったな」

「全部終わったか?」

「あとは、ひとつですね」


「そうか。今から行くか?」

「うーん……」


外はもう暗い。


「こうなると、一泊では足りませんね」

「そこは、もう一度考えないとな」


「ですねー」


振り返ると。

籐吾兄さんが、もぐもぐしている。


その前には、山盛りの晩御飯。


「……美味しそうですね」

「美味いぞ、全部」

「よかったですね」


口いっぱいにして、こくこくとうなずく籐吾兄さんでした。


洋品店かあ。

今日は行けなかったなあ。


「こんばんはー」

「いらっしゃい!」


ん?


「あの、キャラバンが来たと聞いて――」


わたしは顔を上げる。

この声!


「あ、洋品店のお姉さん!」

「あー、菖蒲さん! お久しぶりです! 来てると聞いたもので、押しかけてしまいました!」


「わあ、ありがとうございます! 行きたかったんですよ! 元気そうで」

「はい、元気元気です。それと、ありがとうございます。何から何まで」


「えー? お姉さんからそんなに言われると照れますよ」

「ほんと、感謝してます」


「しっかり稼がせてもらいますから、お気になさらずに」


お互い、顔を見合わせて笑う。


「それでですね、新作は……」


そこから。

話は尽きず。

遅くまで、宿のテーブルでお話し出来ました。



ゆるりとした、少しだけ湿気をはらんだ風が窓から入ってくる。


知らない天井。

次の日の朝。


「おはようございます!」

「はい、おはよう。眠れたかい?」

「はい、元気いっぱいです」


「よかった」

「あ、女将さん。これを」


わたしは持って来た保存食を、ずいっとカウンターへ差し出す。


「酢漬けかい?」

「はい。雨季からうちで作っている、親方印の保存食です」


「親方印?」

「はい。雨季の間に暇していた親方達を捕まえて作ってもらいました」


「作ってもらったのかい?」


女将さんが笑いながら尋ねる。


「へへへ。ほぼ強制ですねー」

「やっぱり。で? これを?」


「うちの村の食堂でも出しているので、よろしければこちらでも」

「姉の店で?」

「はい。どうでしょう? なかなか好評ですよ」


「ふーん。姉妹店で同じ物かあ」

「なんか、よくないです?」


「うん。いいね。もらうよ。これも定期的に?」

「はい。毎回納品しますので、次は空の容器と交換で」


「楽しみが増えたね」

「ふふふ。ありがとうございます!」


さあ。

あとは役場に挨拶して帰るだけ。


「じゃ! ちょっと役場に行ってきますね」


みんなが手を上げて応える。


「おはようございます!」


受付を済ませて。

今日は小部屋ではなく、入り口で。


「あ、おはようございます!」

「おはよう。今日は早いね」

「帰りですからね」

「あと一泊されていけばいいのに」

「そこ、次からは考えときます。あ、それとこれ」


「これは? 薬草?」

「はい。ついでに持って来た物なんです。お土産ですね」


「ありがたい。そちらの薬草は品がいいから」

「ありがとうございます! それが一番のお返しです」


「もう、出発されます?」

「はい。初めてなので、なるべく早く動こうかと」

「そうですね。それがいい」


よし。


「さて、帰りましょう!」

「あ! 菖蒲さーん!」


ん?


「あら、お姉さん。どうしました?」


洋品店のお姉さんが走って来る。


「これ、新作! 持って帰って!」

「あら、ありがと。でもわたし、まだ頼んでませんよ?」

「試作品ですよ」

……。


――あ。


これは、お姉さんに一本取られました。


お互い笑顔で手を振る。


女将さんも。

担当者さんも。


みんな笑顔。


これからの定期便。

笑顔も運べればいいなあ。


カタン。

カタン。

カタン。


軽快に荷車は走ってゆく。

馬さんは元気に走る。


もう少し休んだ方がいいのかな。

なんて思ってたけど。


行きと同じリズムで荷車が走る。


広い草原。

青い空。

風と一緒に、馬さんも進んでゆく。


なんだか、あっという間に野営地へ到着した。


「んーーー」


身体を伸ばして。

周りを見る。


何にもない。


「早いけど、お弁当にしましょう」


今日は大丈夫。

しっかり宿屋さんの女将さんから、手渡しでいただいて来ました。


みんなでお弁当を広げる。


ん?


籐吾兄さん。

なんだか足りなさそう。


「食べます?」

「いいのか? 菖蒲、足りるか?」

「わたし、みんなと同じだけは食べませんよ」


「なら、せっかくだから」


ほくほく顔の兄さん。


結局、お弁当ひとつと半分。

籐吾兄さんの口へと消えました。


「さあ、出発しましょう!」


カタン。

カタン。

カタン。


いつものリズム。


しばらくした時。


先導を走っていた老ハンターさんの手が上がった。


止まる。


「前方、ヘルハウンドだ」

「え?」


遥か前方。

草原の向こうに数頭のヘルハウンドが見える。


わたしは思わず身を縮めた。


「迂回するか。籐吾、横へ行けそうか?」

「大丈夫だと」


「迂回するぞ!」


荷車は道を外れる。

前方のヘルハウンドを大きく避け、脇の草原をゆっくり進んでゆく。


このまま。

このまま。


大きく避けて、再び道へ戻ろうとした時。


後ろから声が飛んだ。


「気づかれたな! こっちへ来るぞ!」


おじいちゃん。


「先導! 籐吾! 道に戻って走れ!」


おじいちゃんは馬さんの向きを変える。

馬上でロングソードを抜いた。


荷車が加速する。


タタン、タタン。

タタン。

タタン。


わたしは幌の後ろから顔を出す。


おじいちゃんとヘルハウンドが交差した!


ギラリ。


太陽が反射する。


二度。

三度。


そして。


おじいちゃんは馬さんの向きを変え、荷車の方へ。


疾走。


「速い!」


馬さん、あんなに速いんだ。


あっという間に追いついてくる。


おじいちゃんが手を上げる。

老ハンターさんも手を上げて応えた。


少しずつ速度を落とす。


カタン。

カタン。

カタン。


リズムが戻る。

わたしのドキドキは戻らないけど。


しばらく走って、休憩地で止まる。


「おじいちゃん! 大丈夫?!」


荷台の上から後ろへ声をかける。


「ああ、なんてことないさ。五頭ほどいたが蹴散らしといた。反対へ逃げたから大丈夫だろ」


「よかった……」


本当に。

よかった。


「でも、速かった! すごく!」

「あれくらいは、馬にとってはなんて事ない」

「最後のおじいちゃん! びゅーって!」

「あれが、本来の馬じゃよ」


「へえー……」


馬さんの速さまで体験できてしまった。


再び走り出す。


遠くに、いつもの緑の帯が見えてくる。


「あ!」


防護林だ。

軽快に近づいてくる。


緑の風が迎えてくれる。


林の間を抜けると、衛兵さん達が見える。


手を振る。


正門が見えた。


「おかえりなさい!」

「ただいま!」

「お疲れ様でした!」

「おつかれ!」


帰って来た。


そのまま食堂の方へ。


「棟梁さーん!」

「おー、菖蒲か! 帰って来たな」

「はーい、ただいまですー!」


「どうだった?」

「ばっちりです。後で、荷車お願いします!」

「ん。後で点検しておく」

「お願いします!」


そのまま村の中央へ。


「どうどうどう」


馬さん達が止まる。


二人が馬から降りる。

わたしも荷車から降りる。


「わたし、役場に報告に行って来ます。すみません、あとをよろしくお願いします」


みんなが手を上げて応えてくれる。


お試し便。

無事に帰って来ました。


役場の入り口で受付をして、リーダーさんを待つ。


「おかえりなさい! 菖蒲さん、どうでした?」

「速かったですよ! もう馬さんが、びゅーって走ってくれました」


「よかったですねー」

「はい!」


「問題は?」

「それがですね! お弁当を忘れてまして」


「…………それは大変でしたね」

「そうなんです。もう籐吾兄さんがしょんぼりしてですね」


「次は気をつけてくださいね」

「はい!」


「で?」


「で?」


「はい」


「あー、そうです、そうです」


何だっけ。

そうそう。


「まず、あまり重たい荷物は積まない方がいいみたいですね」

「重かったですか?」

「いえ。帰りにヘルハウンドに遭っちゃいまして」


「え?」

「いざという時を思うと、軽い方がいいですね。あとは、もう少し人も増やしたいですね」


「なるほど。他には?」

「あ、日程ですね。行く、帰るだけならいいんですけど、向こうで何にも出来ませんでした。やっぱり、もう一泊した方がいいです」

「ふむ」


「あとは、向こうの村の反応は上々です」

「よかった。定期便も迎えてくれそうですね。荷車はどうでした?」


「それは、後で棟梁さんに見てもらいます」


「馬は?」

「とても元気に走ってくれました。獣医さんに診てもらわないとですね」


「そうですね」


リーダーさんが、ひとつうなずく。


「じゃあ、お試し便は成功という事で報告して良さそうですね」

「はい! それでお願いします!」

「いつから始めますか?」


「んー……」


いつから。

定期的に。

分かりやすく。


安全に。


「あ、満月毎とかどうでしょう?」

「いいですね。もしもの時ですよね?」

「はい。満月なら、もしも暗くなっても、まだどうにかなるかと」


「では、次の満月からと報告しておきます」

「はい!」


決まった。


満月ごとに村と村をつなぐ。

荷物を運んで。

手紙を運んで。

美味しい物を運んで。

かわいい服を運んで。


できれば。

笑顔も運んで。


満月定期便。


決定しました!

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