菖蒲の章 第零幕の前
あの大雨の救援隊の大混乱から。
やっと。
ほんとうに、やっと。
倉庫の中が片付いた。
「ふう……やっとなんとかなったかなー」
もう、独り言でも声に出してしまうくらい大変だった。
あの時は仕方がなかった。
あれやらこれやら。
必要な物を、とにかく倉庫から持ち出した。
それはいい。
仕方がない。
必要だったんだから。
問題は、その後。
余った物を持って帰って来てくれた。
そこまではいい。
でも。
何でもかんでも倉庫へ戻した。
最初にそれを聞いた時は、ちょっとめまいがしたくらい。
別に置いておいてくれればいいのに。
わたしが元の場所へ戻すだけなのに。
なのに。
「あ! なのに、入れ込んだ?!」
わたしの第一声。
「いや、お手間を減らそうと思いまして」
「手間増えてるし!」
「はい、すみません」
そんなわけで。
わたしは倉庫の中を、あっちへ行ったり、こっちへ行ったり。
「それ! あっちの三段目!」
「これ、どこですかー?」
「そこ! そーこ!」
「こっちは?」
「それはこっち!」
救援の時より忙しいんじゃないの?
そんなことまで思いながら、ひたすら片付ける。
持ち出した物。
戻って来た物。
使った物。
余った物。
数を確認して。
場所を確認して。
元へ戻して。
ようやく。
ようやく、あの惨状がなんとか落ち着いた頃。
雨季が終わった。
「終わったー」
…………。
どっちが?
――どっちもよ!
倉庫も終わった。
雨季も終わった。
外には久しぶりのおひさま。
雨に濡れ続けていた道も、少しずつ乾き始めている。
さてさてと。
わたしは倉庫を出て、そのまま役場へ向かった。
雨季が終わった。
なら。
次にやることがある。
「リーダーさーん」
「はい? なんでしょう」
「あの、例の定期便なんですけど!」
「ああ、菖蒲さんが言ってた。ついに始まるんですか?」
「いやいや、まだ許可も取ってませんよ」
「え?」
え?
「菖蒲さんが計画ですよね」
「ですよ?」
「じゃあ、始めましょうよ」
……ちょっと待って。
「許可は?」
「わたしが取っておきますよ」
「内容は?」
「あ、聞かれたら困りますね!」
困るんじゃない。
「持って来てますよね、計画書。見ときましょう」
「持って来てますけど……」
わたしは抱えていた計画書を見る。
いや。
そうじゃなくて。
「あの、どこかに聞いたり、確認とかは?」
「?」
なんで首を傾げるの?
「菖蒲さんの計画ですよ?」
「ですよ?」
「なら、誰も文句なんて」
「文句じゃなくて確認……」
「うーん」
リーダーさんが腕を組んで考え込む。
考えるところなの?
そこ。
「じゃあ、聞きましょう。こっちの部屋へ」
「あ、はい」
先に歩いていくリーダーさんの背中を追いながら。
わたしは思う。
――大丈夫? リーダーさん!




