サイドストーリーず 雨の日の二人と二人
雨の日の二人
「なー」
「んー」
「ねー」
「んー」
「籐吾、ひまだよー」
「天幕の下で剣でも振ってこいよ」
「やだよー。朝振ったもん」
「ねー」
「雨の音聴いたら落ち着くぞ」
「えー、あの、ぽったん、ぽったんを?」
「ぴっちゃん、ぴっちゃんだろ?」
「ぽったんだよ」
「ぴっちゃんじゃねえか?」
「んー」
ぽたん。
ぽたん。
ぴっちゃ。
ぽたん。
ぴっちゃ。
二人で雨の音を聴いている。
「どっちもなんか違うね」
「そうだな」
ぽた。
ぽた。
「ん? 雨止んだ?」
「んー?」
さーーーーー。
「いや、降ってる」
「降ってんだ」
「霧みたいのがな」
「霧って雨なんかね?」
「どっちも水だからな」
「粒の大きさ?」
「さあ?」
「風が止んだね」
「そうだな」
しばらく、二人で外を眺めている。
風のない雨。
細かな水の粒が、辺りを白く包んでいる。
「菖蒲は?」
「食堂に行くって出てった」
「あの男の子のとこか」
「大丈夫なのか?」
「菖蒲が心配?」
「妹がな」
「最近相手してもらえないからじゃないの?」
「なんだよ」
「なーんもねー」
「菖蒲は妹」
「そうだね」
「あいつ無理してねえかな?」
「なら、ちゃんと言えばいいのに」
「それは関係ないだろ」
「あるだろ? ないなら菖蒲もここにいるよ」
「そうなのか?」
「そうだよ」
「おれのせいか?」
「まあ、風邪みたいなものだろ」
「そうなのか?」
「たぶんね」
また、雨の音。
「帰って来るのか?」
「……やっぱ心配なんじゃない」
「おれの妹だからな」
「わたしの妹だからね。泣かすなよ」
「迎えに行くか?」
「……次はちゃんとしろよ」
「へいへい」
二人で立ち上がる。
風のない、霧のような雨が舞う中、家を出る二人。
風向きが変わる。
風がまた流れ始める。
風が霧を運ぶ。
雨季も一緒に。
⸻
もう一つの、雨の日の二人
「兄さん」
「ん?」
「最近、姉さんとはどうなの?」
「どうって?」
「なんか変わった?」
「なんにも変わらない」
「そろそろちゃんとしなきゃじゃない?」
「ちゃんとって?」
「えー、一緒になるとか」
「一緒に暮らしてるぞ」
「んー、赤ちゃんは?」
「それ、聞くのか?」
「姉さんの赤ちゃん、かわいいだろうね」
「おまえはいいのか?」
「なにが?」
「それでいいのか?」
「なに、わたしの赤ちゃんの事?」
「んー、まあ、うん」
じーーー。
「なんだよ」
「兄さんの赤ちゃん、かわいいだろうなー」
「……どうすればいい?」
「さあ? わたしに聞かないでよ」
「うーん」
「頑張れっては言わないんだ」
「言って欲しいのか」
「どうなんだろう。わかんないや」
「おまえの家はここだからな」
「うん、出て行くつもりはないから」
「そっか」




