第二節 忘れ物
キャラバン隊参加だって!
それも――御形さんと一緒!
交易品の販売管理。
すごい!
わたしが選んで、買って。
それを持って旅をして、あちこちで売るんだ。
しかも。
御形さんと一緒に。
役場からの帰り道。
歩きながら考えているだけで、顔がにやけてくる。
「素敵……」
思わず声に出た。
うん。
素敵。
御形さんと一緒に旅。
……あ。
「そうだ! 報告に行かなきゃ!」
まずはお店へ戻る。
店先には――
「籐吾さん!」
相変わらず、ちょこん。
いや。
あの大きな身体が、相変わらずお店の中にはまっている。
「籐吾さん! わたし、キャラバン隊に参加が決まりました!」
「おう」
「で、御形さんに報告してくるんで!」
「うん」
「お店番よろしくお願いします!」
「え?」
「じゃ!」
返事も聞かず、わたしは店の外へ飛び出した。
御形さんは、今日は西の櫓にいるはず。
走る。
御形さんと旅。
御形さんと一緒。
何日も一緒。
朝から夜まで一緒。
すごい!
西の櫓が見えてきた。
目を凝らす。
――あ、いた!
「御形さー……!」
いや、待って。
「はあ、はあ、はあ、はあ……」
走ってきたから息が切れてる。
一度、大きく息を吸う。
すうー。
吐く。
「ふうーー……」
よし。
改めて。
「御形さーん!」
櫓の上から、御形さんがこちらを見る。
「んー? おー、菖蒲か? どーした?」
「御形さーん!」
「うん?」
「わたし、キャラバン隊参加が決まりました!」
「お! おめでとう!」
「御形さんもですよねー!」
「まあな」
「一緒でーす!」
「おう」
「一緒に寝たり起きたりです!」
「う? まあ、確かに」
「頑張りましょう!」
「まあ、ほどほどにな」
ほどほどになんてしていられない。
さあさあ。
明日から忙しくなりそう。
何を持っていく?
交易品は?
売る物はどうする?
向こうで何を買う?
どれくらい持っていけばいい?
値段も考えなきゃ。
準備しなきゃ。
何から始めよう。
あー、楽しみ!
御形さんとキャラバン。
御形さんと一緒に旅。
……。
…………。
でも。
なんだろう。
何か忘れているような。
「…………あ」
籐吾さん!
お店に置いたまま!
「…………」
ま、いっか。
籐吾さんだし。




