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53話

オーディションの一次審査結果が届いたのは、募集締切から2週間後のことだった。


「めごたんのおかげで、オーディション受かった」


学校から帰宅した私に、累くんは言った。

手には、一次審査合格と書かれた1枚の合格通知。

どうやら、本当に受かったらしい。


「ほんと!?」


私は思わず飛び跳ねて、累くんへ飛びつく。


「うわっ」


累くんは慌てて紙を避けた。


「破れる破れる」

「お兄ちゃん!すごい!」

「まだ一次審査だからね」


そう言いながらも、累くんは少しだけ嬉しそうだった。

私は知っている。

その紙が。

その合格通知が。

未来へ続く大切な一歩だということを。


「次は合宿だっけ?」

「うん」


累くんは頷く。

けれど、その表情はどこか浮かない。


「……嫌なの?」

「嫌じゃないよ」


そう言ったあと、少しだけ視線を逸らした。


「ただ、ここから先は本当に実力勝負だから」


私は首を傾げる。


「今までも実力じゃなかったの?」

「今までは運もある。でも合宿は違う」


累くんは苦笑した。


「上手いやつばっかり集まるからね」

「お兄ちゃんなら、ぜったい大丈夫!私が保証する!」


(だって、国民的スターのセンターになるし!)


自信に満ち溢れた私の顔を見た累くんは、ほっとしたのか、ふっと笑った。


「でもね……どうしても、心配なことがあって……」

「なぁに?」

「……めごたんを置いて合宿に行くのが……心配で心配で」


あぁ、すっかり忘れていた。

感動していた気持ちが、一気に吹き飛んでしまった。

でも、今回ばかりは、正直、私も行きたい気持ちはある。

テレビでしか見れなかった、オーディション。

それが今、間近で見れるかもしれない状況なのだ。


「……ねぇ、お兄ちゃん」

「……うん?」

「今回の合宿って、マネージャーさんも行くの?」

「うん、まぁ、そうだね」

「じゃあさ……ー」


私の脳裏には“あの作戦”しか浮かんでいなかった。

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