48話
夏休み旅行2日目。
海辺は、真っ青な空の下、白い砂浜がどこまでも続いていた。
波の音と、子どもたちのはしゃぐ声が混じり合って、まさに“夏休み”という感じだ。
「めごたん、これ」
部屋で、水着に着替え終えた累くんが差し出してきたのは、日焼け止めと帽子、ラッシュガードに浮き輪。
……多い。
私、小学生だよ。
「……お兄ちゃん?そんなに必要?」
「必要に決まってるだろ。紫外線は敵だし、海は危険だし、人も多いし」
そう言いながら、私の腕に日焼け止めを塗り始める。
日焼け止めの冷たさが肌に触れ、思わずビクッと反応してしまう。
「ちょっ……!お兄ちゃん!私、自分でできるよ!」
「動くな。ムラになる」
累くんは、真剣な顔で、念入りに、日焼け止めを塗る。
私は、それ以上言えず、その場を動かずにいた。
「……よし。はい、次」
今度は帽子を被せられ、顎紐をきゅっと結ばれた。
「お兄ちゃん……これ、苦しい」
「我慢」
即却下だった。
このままだと、楽しむものも楽しめなくなりそうだ……。
そう思っていると、部屋のドアがノックされ、返事をする前に、優くんが入ってきた。
「愛姫ちゃん!おはよ!準備できた?」
「うん!」
「じゃあ、一緒に海入ろ!」
「うん……行ッー」
「ダメ!!」
被せ気味に、累くんの声。
「「え?」」
私と優くん、同時に声を出す。
「波があるし、足取られるし、人も多い。危険だよ」
「浅いとこでも?」
「ダメ」
「僕も一緒にいるよ?」
「ダメ」
私の言葉もわ、優くんの提案も即却下される。
累くんは一度、深く息を吸ってから言った。
「“俺以外と”は、ダメ」
重い。
愛が、重い。
「累、過保護にも程があるだろ」
背後からマネージャーさんの冷静な声が飛んでくる。
「俺も見てる。大丈夫だ」
累くんは少しだけ黙り込んで、それから、私の肩に手を置いた。
「……絶対、深いところ行くなよ」
「うん」
「浮き輪、離すなよ」
「う、うん」
「何かあったらすぐ戻れ」
「……うん」
条件が多い……。
━━━━
ようやく、許可が出たところで、海へ駆け出した。
海に入ると、水はひんやりしていて気持ちいい。
波が足首に当たるたび、きゃっ、と声が出る。
「冷たーい!」
「だろ!」
優くんと並んで、ちゃぷちゃぷ歩いていると
「めごたん!!!」
浜から聞こえる、大声。
振り返ると、
日傘を差した累くんが、こちらを睨みつけていた。
「浮き輪、離れてる!!」
「え!? 離れてないよ!?」
「腕からズレてる!!」
……数センチですけど……。
「戻りなさい!!」
結局、5分も経たないうちに、浜へ強制送還された。
この人の過保護は、きっと、海より深い。




