47話
私の目の前には、青い海が広がっていた。
天気は快晴。
空も海もいかにも夏という色をしている。
「すごーい! 綺麗〜!」
ここは、国内でも人気のリゾート施設。
お金持ちしか泊まれないような、ホテルの上層階だ。
これが、噂で聞くオーシャンビューってやつか。
私は、ベランダから見える景色を精一杯背伸びをして、眺めていた。
そんな私を見かねて、累くんはひょいっと、私を抱っこした。
「お兄ちゃん、ここ、どうやって予約したの?」
「事務所の社長にね……休みが欲しいって頭を床に擦り付けたら、優待券をくれたんだよ」
「それって……」
「??」
「いや、なんでもない」
……それ、土下座って言うのでは?
小学生には似合わない、その言葉を私は飲み込んだ。
それにしても、こんな凄い場所の優待券をくれるなんて……さすが、将来を期待されてるだけあるなぁ。
「めごたんと、2人きりの夏休み……」
累くんは、そう言って微笑むと私の頭を撫でた。
が……その体をクルッと室内へ向ける。
「……と、思ったのに……どうしてマネージャーさんと優くんがいるんですか!!」
累くんの鋭い視線の先には、ソファでくつろいでいるマネージャーさん親子の姿があった。
「社長が、せっかくならって、俺にもくれたんだよ」
累くんは私を室内へ降ろすと、マネージャーさんの座るソファへ近付いた。
「なら、せめて休みをずらすとか、できなかったんですか……?」
「無理だろう。お前と俺は同じスケジュールで動いてるんだから。累が休みの日は、自動的に俺も休みだ」
……ごもっともです。
累くんとマネージャーさんの言い合いが続く。
すると、優くんが私の側へ駆け寄り、ぽんぽんっと肩を叩いてきた。
「愛姫ちゃん、夏休みも一緒だね!」
「そうだね」
「あとで一緒にアイス食べようよ」
「うん!いいよ」
その会話を、累くんが聞き逃すはずもなく、優くんを睨みつける。
「お兄ちゃん……?」
「……」
その目はずっと、アイスを冷凍庫から取り出す優くんへと向けられる。
「……お兄ちゃんってば」
「……!!」
累くんは、私の問いかけには答えることはなく、なにを思ったのか、目を丸くしたかと思えば顔が一気に青ざめた。
彼はマネージャーさんの腕をぐっと引っ張り、2人で少し離れた場所へ移動する。
マネージャーさんへ必死になにかを訴え、時々こちらをチラチラ見ては、優くんを睨んでいる。
まさか……嫉妬でもしているのだろうか。
「はい、愛姫ちゃん」
「ありがとう」
優くんに差し出された、棒付きのバニラアイスをひと口。
ひんやりとした冷たさと、バニラの甘さが口の中に広がる。
何歳になっても、生まれ変わっても美味しいと思えるのは幸せだ。
「バカタレ!この子らは、まだ小学3年生だぞ!」
直後、マネージャーさんの大声と共に、累くんの頭に拳が落ちた。
……やっぱり。
この夏休み旅行、どうなることやら。
少し先が、不安です。




