表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
45/54

45話

「……ただいま」


リビングに入ってきた累くんの声は、いつもより少し低かった。

リビングのソファにちょこんと座っていた私は、ぎゅっと服の裾を握りしめる。


「……お兄ちゃん……おかえりなさい……」

「……めごたん、スタジオに来てたんだって?マネージャーには、もう連れて来ないようにって言っておいたから」


淡々とした声。

責めるでも、怒るでもないのに、胸が痛んだ。


「……ちがう」


小さく、否定する。

その声に、累くんは私の横へ静かにやって来る。

怖くて、顔が見られない。


「愛姫ね……さっきね」


ああ、こういう時ばかり……。

自分が小学生だってことを思い出す。


「共演者の子に、嫉妬した」

「えっ……嫉妬?」

「お兄ちゃんが……遠くに行っちゃう気がして……嫌だった」

「めごたん……」

「だから……嫌い、なんて言って、ごめんなさいっ……」


声が震える。

言い終わる前に、ぽたっと、床に雫が落ちた。


「……お兄ちゃんのこと……大好きなのに……っ」


累くんは目を丸くし、しばらく俯むいて黙り込む。

次に動いたと思うと、そのまま膝をつき、私をそっと抱き寄せた。


「おにぃーー」

「お兄ちゃんね……愛姫に嫌いって言われたとき、正直、すごく怖かった」


抱きしめる腕が、わずかに震えている。

でも、愛姫と……しっかり名前で呼んでいた。


「俺……いなくなった方がいいのかな、とか……考えた。愛姫が、そんな風に思うわけないって、分かってるのに」


ぽろぽろと……今度は累くんの頬から、涙が落ちた。


「……ごめんね。俺も、ちゃんと話さなかった」


その顔を見て、私は崩れてしまった。


「お兄ちゃん……愛姫ね……う、う、うわぁぁん!」


柄にもなく、大泣きしてしまう。

累くんは、それ以上なにも言わず、ただ優しく、私の頭を撫でた。


「愛姫が嫉妬するくらいなら、俺は一生ここにいるから」


少し困ったように、でも、はっきりと。

私の小さな指が、累くんの服をきゅっと掴む。

私はしばらくの間、お兄ちゃんの腕の中で泣き続けた。



次の日、あのクマちゃんは、私のランドセルに付いていた。

GPSが付いているかは、聞かなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ