43話
家に帰ると、累くんはもう帰宅していた。
「おかえり」
「……ただいま」
リビングの空気が、少しだけ重い。
「寄り道、したよね」
「……うん。でも、ちょっとだけで……」
怒られると思った。
でも、累くんは、ため息をついただけだった。
「約束、覚えてる?」
「……寄り道しない」
「そう。心配だから、言ったんだよ」
累くんは、私のランドセルを受け取ると、そっとクマのストラップを外してテーブルの上に置いた。
なんだか、クマちゃんにじっと見られている気がする。
……もしかして。
「お兄ちゃん……どうして、寄り道分かったの?」
嫌な予感が頭をよぎる。
この転生後の体にも慣れてきたせいで、うっかりしていたが、この兄はシスコンだ……。
累くんは、少しだけ、困った顔をした。
「……めごたん、驚かないで聞いてね。このクマちゃんの中に、GPSが入ってる。わかる?居場所が分かるやつ」
嫌な予感は的中した。
「……なんで……?」
「迎えに行けない日も、ちゃんと無事か分かるようにね」
累くんは、クマちゃんを手に取る。
「めごたんに何かあったら、俺、耐えられないから」
「……プレゼント、じゃなかったの?」
「もちろん、プレゼントだよ。……めごたんが、嫌な思いをしないようにね」
そう言うと、累くんは、再び、クマちゃんをランドセルを付け直した。
見た目は、何も変わらない。
いつも通り、可愛いまま、私がどこへ行くのかを見ているように、揺れていた。
私は、ぎゅっと拳を握る。
「……息苦しい」
「え?」
累くんの表情が、固まった。
「どこに行っても、お兄ちゃんの気配する」
「見てないよ?」
「見てるでしょ!!」
一瞬の沈黙。
「……めごたん」
私は、顔を上げて、はっきり言った。
「お兄ちゃん、嫌い!」
言ってしまった。
空気が、凍った。
累くんは、何も言わず、ただ数秒、私を見て
「……そっか」
それだけ言って、部屋を出ていった。
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次の日。
朝起きると、家が静かだった。
リビングに行くと、テーブルの上にメモ。
【めごたん、いってらっしゃい】
ランドセルには、あのクマちゃんの姿はなくなっていた。




