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41話

新しいクラス、新しい席、新しい教科書。

小学3年生の生活は、思っていたよりも、あっという間に日にちが過ぎる。


「めごちゃーん!」


ある日の帰り道。

クラスメイトの女の子数人に呼ばれて振り向く。

ランドセルの横で、累くんから貰ったクマのストラップが、ゆらっと揺れた。


「そのクマ、かわいいよね!」

「そうでしょ!いとこのお兄ちゃんにもらったの」


そう言うと、「いいな〜」と声が上がる。

ちょっとだけ、誇らしかった。


そのまま友達と校門を出て、少し歩いたところで、見慣れた人影が立っているのに気づいた。

帽子を深く被り、メガネとマスク。

顔はほとんど隠れているのに、分かる。

……はたから見たら、ちょっと不審者かもしれない。


「ごめん。私、お迎え来てたみたいだから、先に帰るね」

「あ、そうなの?」

「うん、ばいばい!また明日〜」


友達に手を振ってから、その“不審者”のもとへ駆け寄る。


「お兄ちゃん!」

「めごたん、お疲れさま」


マスクを外したその人は、やっぱり累くんだった。


「今日もお迎えに来たよ」


今日“も”……。

その一言に、少しだけ引っかかる。

考えてみれば、彼は卒業してから、ほぼ毎日、こうして私の事を迎えに来ている気がした。


「歩いて帰れる距離なのに……」

「いいでしょ。心配なんだから」

「私、もう3年生だよ?」

「俺にとっては、ずっと可愛い妹なの」


そう言って、累くんは笑う。

笑顔はいつもと同じなのに、どこか逃げ道を塞ぐみたいだった。


「あ、そうだ!このクマちゃん、さっきも褒められたんだよ」

「そっか。良かったね。ずっと付けてて」

「……うん?」


また、気になる言い回し。

でも、その違和感も、推しの嬉しそうな顔を見たら、どうでもよくなってしまう。

今日も私は、何も考えずに、累くんと並んで家へ帰った。





「あ、そうだ。めごたん」


帰り道、ふと思い出したように、累くんが言う。


「来週から、お迎えできない日があるかもしれない」

「お仕事?」

「うん。ちょっと大切な仕事が入りそうで」

「……そっか。ちょっと寂しいね」

「めごたん、ちゃんと寄り道しないで帰れる?」

「うん、大丈夫だよ」

「よし。お兄ちゃんとの約束だからね」


その“約束”の重大さを、私はまだ知らなかった。

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