40話
私は、小学3年生になった。
累くんは、自分の卒業式の後、私と早々に学校を後にして、2人きりの卒業パーティーを開いた。
写真スタジオを借りての写真撮影会。
帰宅してからは、ジュースで乾杯して、大きなケーキも食べた。
どれも累くんのお祝いのはずなのに、なんだか私が主役だったような気もする。
「めごたん、おはよう」
今日は、新学期初日。
リビングでは、累くんが朝ごはんを作って待っていてくれた。
気づけば、累くんはすっかり料理上手になっていて、
このまま主夫になれそうなレベルだった。
私が席に着くと、美味しそうなご飯とお味噌汁、少しのおかず。
「お兄ちゃん、これなぁに?」
朝ごはの横には、小さな紙袋が置いてあった。
「あ、これはね。この前のお礼」
「お礼?」
「卒業式の後、写真ずっと付き合ってくれたでしょ」
「見ていい?」
「うん、もちろん」
私はワクワクしながら、紙袋を開けた。
中に入っていたのは、小さい茶色のクマのストラップ。
目がくりっとしているが、なんだか少し頼りなさそうな顔。
「……かわいい」
思わず声に出すと、累くんはほっとしたみたいに笑った。
「よかった。めごたん、クマちゃん好きでしょ?カバンにつけられるように、邪魔にならないサイズを選んだから」
私がクマが好きなのを知って、選んでくれたんだと思う。
私はその場で、ランドセルの横につけた。
クマが、軽く揺れる。
「……うん。ちゃんと、めごたんのそばにいる感じだね」
少し、変な言い方。
そう思ったけれど、そのときの私は、深くは考えなかった。




