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38話

私が家に帰ると、リビングに累くんがいた。

制服姿で、進路資料を広げている。


「おかえり!めごたん!」

「ただいま」


私は迷わず、累くんの隣に座った。


「……どうしたの?めごたん。悲しいことでもあった?」

「……あのね、お兄ちゃん」

「ん?」

「卒業……したら……どうするの?」


累くんのペンが、ふと止まった。

顔を上げると、頬が真っ赤になっている。

照れとは少し違う、喜びを必死に隠しているような表情——

あ……。

まるで、私が当落発表の瞬間に、歓喜していた顔みたい…。


「お兄ちゃん?」

「……心配してくれてたの?」


今にも泣き出しそうな、震えた声。


「俺は、どこにも行かないよ。仕事も、事務所の推薦でそのまま、今のお仕事を続ける」

「……引っ越し、とかは?」

「しないよ。仕事が増えても、ちゃんとここから通う」


よかった。

転生前と同じルートだ。

少なくとも今のところは。

累くんは、私の気持ちに気づいたのか、少し笑うと、そっと私の頭を撫でる。


「俺は、どこにも行かないよ」


優しい、兄の言葉だった。

もうすぐ、お兄ちゃんは高校を卒業する。

大人の芸能界へ足を踏み入れる。

私は、妹として、ファンとして、彼を支え導く義務がある。

もうすぐ、新しい物語が始まろうとしている。


「ねえ、そんなことより。めごたん」

「ん?」

「……あのエキストラの時の衣装、お兄ちゃん、買い取ったんだけど……今から着てみない?」


あぁ、こちらもまた、始まろうとしている。


「……うん、いいよ」


この後、衣装姿の写真撮影会は、2時間にも及んだ。

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