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37話

ドラマがテレビ放送された翌日の登校日。

教室に入った瞬間、空気が、ほんの少しだけ違った。


チラチラとした視線が、私に集まる。

ひそひそとした声も、耳に入った。


……気のせい、じゃない。


席に着くなり、優くんが近づいてきた。


「愛姫ちゃん、おはよう」

「……おはよう」


いつもと同じ挨拶のはずなのに、どこか様子が違う。


「ねえ、愛姫ちゃん。昨日のドラマ、見た?」


……来た。

私はランドセルの中身を机に移し替えながら、内心で小さく息を吐く。


「見たよ。私が映ってたやつでしょ?」

「やっぱり! お父さんが言ってたんだ」


さすが、累くんのマネージャーさん。

息子にまで、情報共有は欠かさないらしい。


「SNSでも、ちょっと話題になってたよ」


SNS……。

昨日、累くんがやけに頑なに見せてくれなかったやつだ。

そんなに、書かれていたんだろうか。


転生前の私は、累くんのことしか見ていなくて、

他のキャストへの反応なんて、きっと気にも留めていなかった。


「へぇー。私、SNSやってないから分からないや」

「みんな噂してたよ。愛姫ちゃん、一般入学かと思ってたけど、芸能関係者なんじゃんって」


それは、やめてほしい。

思わず、机に突っ伏す。


それでも、心も体も小学2年生の優くんは、容赦なく続けた。


「愛姫ちゃん」

「……なぁに?」

「……芸能界、興味あるの?」


不意打ちだった。

私は顔を上げて、間髪入れずに答える。


「ない」

「返事、はやっ!」

「だって……キラキラしてるのは、テレビの中だけだし。私は、今のままでいい」


優くんは、少し意外そうに目を瞬かせた。


「そっか。でもさ……お兄ちゃん、もうすぐ卒業なんでしょ?」


その一言で、胸の奥が、きゅっと縮んだ。


卒業。

分かっていたはずなのに、ちゃんと向き合っていなかった言葉。


「兄妹共演できて、安心すると思ったけど……」


優くんは、悪気なく言う。

その無邪気さが、逆に刺さった。


……そうだ。

累くんは、もうすぐいなくなるかもしれない。

卒業して、進路次第では、一人暮らし。


最近、シスコンも少し落ち着いてきたし、

妹離れも、目前なのかもしれない。


そう思うと、胸の奥に、じわっとした寂しさが広がった。


(……帰ったら、聞いてみよ)


私は、ぎゅっと手のひらを握った。

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