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30話
最近の累くんは、明らかに忙しそう。
朝、私が起きる頃にはもう家を出ていて、夜は私が寝たあとに帰ってくる。
今年に入って、私はキッズスマホを買ってもらった。
そのスマホに毎晩、電話はかかってくるけど、短い。
「めごたん、今日もちゃんとごはん食べた?」
「うん」
「そっか。えらいね」
「お兄ちゃん?大丈夫?」
「……大丈夫だよ……じゃあ、またね」
そう言うと、累くんは電話を切った。
“通話終了”の画面が、部屋のベッドに潜っていた私を照らす。
累くんの大丈夫は、だいたい大丈夫じゃないことを、妹の私は知っている。
私はスマホの画面を閉じて天井を見上げた。
音もなく静かで暗い部屋。
(忙しいだけ)
(大人になっただけ)
(何も変わってない)
自分に、そう言い聞かせる。
でも、今までとは違う何かが私を襲ってくる。
寂しいとも、怒ってるとも違う……
そんな感情が私の頭の中でグルグル渦巻いている。
「お兄ちゃん……」
私は返事が来ない兄の名を呼びながら、ゆっくり目を閉じ、寂しさを紛らわすように眠りに落ちた。




