表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/29

29話

また時は巡り、私は小学2年生になっていた。

学校生活は順調で、2年生になってもクラス替えはなかったから、席も友だちも変わらなかった。

教室の窓から見える景色も、チャイムの音も、1年生の頃と同じ。


一方、我が家では、少し違うことがあった。


「行ってきます」


玄関で靴を履きながら言うと、後ろから聞き慣れた声がする。


「行ってらっしゃい、めごたん。帽子忘れてる」


振り返ると、累くんがしゃがんで、黄色い帽子を差し出していた。

ネクタイはきちんと締まってるけど、どこか眠そうな顔。

私が前世の記憶を得てから2年……。

15歳だった累くんは17歳になり、たった2年で一気に大人の顔に成長している。

行動は2年前から変わらず、妹LOVEだけど……。


「ありがとう」


帽子を受け取ると、いつものように私は頭を撫でられる。


「今日は夜遅くなりそうだから」

「……うん」


最近、こういう日が増えた。

累くんの、アイドルとしての歩みは確実に進んでいる証拠ではある。

それは良い事、なんだろうけど……。

少し、パパに似てきたな。

累くんは私のランドセルを一瞬だけ持ち上げる。


「重くない?」

「だいじょうぶ」

「ほんとに?」

「ほんと」


確認が多いのは、いつものこと。

だけど最近は、その確認が“早送り”みたいに感じて寂しくなってきた。


「じゃあ、行ってきます」


私は、累くんに気持ちを悟られないよう、いつもの笑顔で家を出た。



━━━━



学校に着くと、仲良しの優くんがもう教室にいた。


「愛姫ちゃん、おはよー」

「おはよう、優くん」


2年生になって、優くんは少しだけ背が伸びた。

前歯が抜けて、しゃべると少し息が抜ける音がするのが少しかわいい。

私は、ふと窓の外を見る。

高等部の建物の方角。

見えるわけないのに、つい兄の姿を探してしまう。


1年生の頃は、同じ敷地にいるっていう安心感があった。

でも最近は、違う。

(今は居るのかな?)

(もう、お仕事行っちゃったかな?)

なんて、考える時間が増えた。


「愛姫ちゃん?大丈夫?」

「うん、大丈夫だよ」

「愛姫ちゃんのお兄ちゃん、忙しいみたいだね。僕のお父さんも忙しそうだもん」

「……うん」

「少し寂しいよね」


累くんが忙しくなれば、自動的にマネージャーさんも忙しくなる。

だから、マネージャーさんの息子である優くんにも影響が出ているんだろう。

父に似てしっかり者の優くんの口から“寂しい”が出るなんて。


「……うん」


子どもならではの悩み。

私たちは少し分かり合えた気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ