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27話

夏の足音がしてきたある日。

今日は朝から教室がそわそわしていた。

クラスメイトが楽しみにしていた授業が、今日から始まるからだ。


キーンコーンカーンコーン


前の授業が終わると教室は一気にざわつき、数人のクラスメイトは、きゃあきゃあと走り回りだした。


「プールだー!!」


そう、今日からはじまるのは、水泳の時間。

中身がおばさんの私は、日焼けが気になる授業。

でも、さすがに小学1年生で日焼け止めを塗りたくる美意識高い系の女の子になりたくないので、なんとか日に当たらないよう過ごしていたのに……。


「はーい、みんな今からお着替えをはじめてくださーい! 男の子は隣の教室へ移動してください」


教室へ入ってきた担任の先生の声と同時に、机の横にぶら下げていたプールバッグが一斉に揺れ、着替えが始まった。

私は深いため息をつき、水着へ着替えるのだった。





プールの水面は、きらきらと光っていた。

先生の説明を聞きながら、私は自分の体を見下ろした。


細い腕。

丸い膝。

小さな足。


ちゃんと、小学1年生の子どもだ。

中身がどうあれ、この体はまぎれもなく6歳なのだと感じる。


「それでは、まずは足を入れて、バシャバシャしてみましょう!」


合図と同時に、プールサイドに並んで座り、足を一斉に水へ入れる。


「つめたーい!」


可愛い悲鳴があちこちから上がるのを聞きながら、私も足を入れる。


……冷たい。


思わず肩がすくんだ。


「めごちゃん」


隣にいた優くんが声をかけてきた。


「なに?」


その瞬間、彼は私に向け、器用に足で水をぱしゃっとかけてきた。


「……やったなー!」


わざと大げさに、水をばしゃばしゃとかけ返す。

さっきまでこの授業が憂鬱だったけど、優くんのイタズラで、楽しくなってきた。


きゃあきゃあ笑う声。

はねる水しぶき。

……楽しい。

ほんの一瞬、“中身”のことを忘れられる時間だった。


——その時。


「……?」


ふと、視線を感じた。

私は、プールから見える校舎へ顔を向ける。

そこは、3階の渡り廊下。

逆光の中に、誰かが立っている気がする。

目を凝らしてみるが、さすがに逆光と遠さで顔は見えない。

……でも、胸がざわついた。


「愛姫ちゃん? どうしたの?」


優くんの声で我に返る。


「あ、あそこに……お兄ちゃん……」


指をさした先を優くんも見る。

しかし、なにも見えなかったようで、視線を私に戻し首を傾げる。


「るいお兄ちゃん? 今、高等部も授業中だよ?いるわけないよ」

「……そう、だよね」


会えないはずなのに。

私はもう1度、校舎を見上げた。

そこには、誰もいなかった

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