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26話

累くんの、写真事件から1週間。

我が家には、ひとつの「ルール」が追加された。


【家の中での写真・動画撮影は禁止】


貼り紙は、マネージャーさん直筆。

赤ペンで二重線まで引いてある。

相当効いたらしい。


そして現在、リビングに珍しく累くんがいない。

静かすぎて、嫌な予感がする。

静かな時ほどこの家は危険な気がする。

私はそっと周囲を見渡した。

ソファの陰。

カーテンの隙間。

観葉植物の裏。

……いない。


「……お兄ちゃん?」


返事はない。

その時、自分の目の前で何かが光った。

ふと、光った棚の奥を見ると黒い小さな物体が置いてあった。


「……?」


次の瞬間。


――ピコン、ピコン、ピコン。


四方八方から音が響く。

テレビ台の裏、棚の上、クッションの隙間。

辺りを見回すと、至る所に同じ黒い物体があった。


「……え?」

「めごたん、動かないで」


振り向くと、そこには満面の笑みの累くんの姿だった。


「撮影してないから大丈夫だよ」

「いや、今シャッター音したよね?」

「自動保存」


意味がわからない。


「これは“写真”じゃない」

「じゃあ何?」

「記録」


あ、だめだ、この人。


「マネージャーさんに怒られるよ?」

「大丈夫。“撮影”は禁止だけど、“設置”は禁止されてない」

「……それ、いつ置いたの?」

「昨日」

「いつの間に?」

「めごたんが寝てる間」

「怖い!!!」


その瞬間。


――ピンポーン。


インターホンが鳴り、累くんの表情が一瞬で凍る。

案の定、やって来たのはマネージャーさんだった。


「こんにちは――」

マネージャーさんが、リビングに入った瞬間、動きが止まる。


「……何だこの家」


床、棚、壁。

至るところに設置された小型カメラ。


「……累」

「はい」

「これは?」

「防犯」

「誰から守ってる」

「世界から」


重い。

マネージャーさんは、静かに深呼吸した。


「……愛姫ちゃん」

「はい」

「逃げ道、覚えときな」


私は、真剣にうなずいた。



━━━━



その日の夜。

カメラはすべて撤去された。

……が

布団に入って目を閉じた瞬間。


――ピコン。


枕元から昼間聞いたあのシャッター音。


「……お兄ちゃん?」

「大丈夫」


暗闇から、優しい声。


「寝顔は撮らない」

「じゃあ何?」

「寝息だけ」

「それもアウトだから!!!」


この兄のシスコンは、もう誰にも止められない気がする。

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