24話
給食当番の白い帽子は、少しだけ大きかった。
頭にかぶると、目の前がちょっと暗くなる。
「めごちゃん、ここ押さえて」
優くんが、後ろからエプロンの紐を整えてくれる。
「ありがとう」
そう言うと、優くんは少し誇らしそうに胸を張った。
給食室の前には、列ができていた。
お皿がぶつかる音。
スープのいい匂い。
(……懐かしい)
前世でも、給食は嫌いじゃなかった。
むしろ、好きだった方だ。
「いただきます!」
先生の合図で、クラスメイトが一斉に手を合わせる。
今日のメニューは、カレーライス。
小さな牛乳パックとサラダ付き。
「カレーだー!」
「やったー!」
あちこちから、歓声が上がる。
隣を見ると、優くんはカレーを口に頬張っていた。
「優くん、早いね……」
「うん!!カレー好き」
口の端に米粒をつけたまま言うから、思わず笑ってしまう。
「お米……ついてる」
「え?どこ?」
慌てて拭く姿が、完全に小学生だった。
(ああ、本当に……)
この教室にいるのは、私以外みんな小学生なんだ。
━━━━
給食も食べ終わり、私は空になったお皿を見つめる。
勿論、全部食べた。
「めごちゃん、全部食べられたね!」
先生が、少し驚いたように言う。
「好き嫌いしないなんて、えらいね」
(“えらい”って……)
前世では、誰にも言われなかった言葉。
でも今は年齢的にも、言われる立場なんだ。
「……ありがとうございます」
そう答えながら、私は思う。
ここでは、私は“できて当たり前”じゃない。
少しできただけで、褒められる存在。
それは正直、悪くない。
むしろ……ちょっと、楽かも。
学校は、まだ慣れない。
でも“小学生として過ごす”という生活は、思っていたより、悪くないのかもしれない。




