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王様ゲーム(後編)

 王様ゲーム二回戦。


「「王様だーれだ!!」」


 ち、また外したか。今度は1番だ。


「今度の王様はあたしよ。さーて、どんな命令を出してやろうかしら……ねえ謙信?」


「番号で指名してね四葉さん……?」


 謙信を睨み付けながら思考する四葉。何やら不穏な空気が漂っているが、俺の安全のためにもなるべく優しい命令が欲しい。


「シンプルにいきましょうか。2番の人、一発ギャグをしなさい」


「何、僕だあっ!?」


「よし、当たったわ!」


 見事狙っていた人に当てた四葉はガッツポーズをする。反対に当てられた謙信は悲痛な表情をしていた。


 王様ゲームによくある命令の一つだが、これが地味にキツイ。この御時世、一発ギャグで笑いをとるのは至難の技だからだ。


 相当面白くなければスベってしまうことは必至。当たらなくて良かった。


「良かったな謙信。適役じゃねーか」


「まるで僕がお笑い担当みたいな言い方ですね!?」


「あら、そうじゃないの? あんた存在自体がギャグみたいなもんじゃない」


「存在がギャグって何だよ!? バカにしやがって、逆に笑わせたくなったぞ!」


 シーン…………。


「あんた、『逆』と『ギャグ』でダジャレでも言ったつもり? 随分面白いこと言うのね。笑い過ぎて凍死するところだったわ」


「いや今のはダジャレじゃねーよ!! スベッたみたいな雰囲気出さないでくれます!?」


「あはは。ダジャレはともかく、ボクは一発ギャグ楽しみにしてるよ?」


「ありがたいけど苺、それハードル上がるから……」


 いつもはありがたいはずの苺の気づかいが逆にプレッシャーになっていた。一方、皆が謙信に注目している中、一人だけキョトンとしているやつがいた。


「ねー純、イッパツギャグって何……?」


「あーそっか。一発ギャグってのはな、とっても笑える面白いことをすることなんだ」


「そーなの……! わくわく……!」


「おい純、余計にハードルを上げるな!!」


 あやめも目を輝かせて謙信の方を見る。さあ、お膳立ては済んだ。後は面白い一発ギャグをかますのみ。


「ええい、やってやるぞ!」


 スーッ……と深呼吸をする謙信。そして大きな声で、一発ギャグをかました。その結果……。


 シーン…………。


「はいしょーもない。次いきましょう」


「謙信、お前死んだ方がいいぞ」


「さすがにそれは、ちょっとフォローできないかも……」


「ねー純、謙信は何を言ってるの?」


「うわああああ誰か僕を殺してくれえええ!!!」


 皆の感想によって謙信のメンタルはズタボロにされていた。


「はいはい、気を取り直して次いくわよ」


「うう、次はもっと面白いネタを考えてやる……」


 紙くじを集めながら呟く謙信。まだ心折れてないのか、メンタル強すぎだろ。


「三回戦、これでラストだ。いくぞー。せーの!」


「「王様だーれだ!!」」


 気合を入れてくじを引き、すぐに手元を確認する。……おっと?


「ついにきた、俺が王様だ!」


 正真正銘、俺の手元の紙には『王様』の文字が書いてあった。最後の最後に王様を引けたのはラッキーだったな。さあ、どんな命令をだそうか。


「じゃあ命令。1番と2番は誰かにハグをする、でどうだ?」


「あら、意外と優しい命令をするのね。ハグする相手は自由でいいってこと?」


「ああ。最後はゆるーく終わろうぜ」


 たまには平和なオチもいいだろう。約一名、精神にえげつないダメージを負っているわけだしな。


「私1番……。純、ハグって何……?」


 お、一人目はあやめか。


「ぎゅーって抱きつくことかな」


 さて、あやめは誰を選ぶのだろうか。四葉辺りかな。


「分かった……! えいっ……!」


「うおっと! 俺かよ」


「へへ、ぎゅー……♪」


 迷わずこちらに突進してきたあやめ。ハグするなら同じ女の子にすればいいのに。まあ悪い気はしないけど。


 すると、背中の方にもぴとっ、とくっついてきたと思われる感触が。


 顔だけ振り向いて見ると、頬を染めた苺の姿があった。2番は苺だったのか。


「うう、これ恥ずかしいよお……」


「なら四葉に抱きつけば良かったじゃないか。どうして俺なんだよ?」


 まさか苺のやつ、実は俺のことが……!?


「こ、これはその。あ、あやめちゃんが純に抱きついたから、ノリでかな?」


「何だノリか……」


 好きで俺に抱きついたわけじゃなかったのか。ざ、残念だなんて思ってないさ!


 しかし、今の俺は美少女二人に抱きつかれている幸せな状態。


 命令したときはこんなことになるとは思っていなかったが、我ながら素晴らしい判断だ。


「じゃあ僕もノリで純に抱きつこっと!!」


「いやお前には命令してねーよ! ってうわ、バカ来るな謙信……ぐふぅ!?」


 今度はふざけた謙信が右側に抱きついてくる。幸せなムードはどこへやら、一気にむさ苦しくなる。


 ていうか、圧力かかりすぎて普通に苦しい……!


「あら、これはあたしも抱きつけばハーレムの完成ってところかしら」


「いや、これ以上抱きつかれたら苦しくて死にそうなんで来ないでもらえます四葉さん……?」


 三人でも物凄い圧力なのに、四人はほんとに圧死する……!


 ていうかハーレムじゃねーよ! 男一人混ざってるだろ!


「面白そうだから私も参加させてもらうわ」


「いやちょっと待っ……ぐえっ!?」


 ついに左側も、四葉に抱きつかれる。これで四人全員が、俺に抱きついているという謎の状態が出来上がった。


「ちょ……まじ……離れろって……うあっ!?」


 それぞれから力が加わり、バランスを崩したのか後ろに大きく傾く。


「わ、危ない!?」


「がはあっ!?」


 倒れる前に危機を感じたのか、後ろにいた苺がサッと避ける。よって俺はそのままダイレクトに床に叩きつけられることとなった。


 しかも三人に体重をかけられている状態でだ。当然これによる衝撃は凄まじく……。


「ガクッ……」


 俺は意識を吹き飛ばすには十分すぎるのだった。


「あ、純が気絶したぞ」


「大丈夫、純!? ごめんね、ボクが避けたばかりに!」


「ハグって、怖いのね……」


「あら、これはやりすぎたわね」


 こうして王様ゲームが終了したのだった。くそ、平和なオチを望んだはずが気絶オチかよ。


閲覧ありがとうございました。次回からは本編に戻ります。


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