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王様ゲーム(前編)

 休日。俺、謙信(けんしん)四葉(よつば)(いちご)、あやめの五人で溜まり場に集まっていた時だった。


「王様ゲームしようぜ!」


 突然、謙信が高らかにそう言った。


「急だな。別にいいけど」


「そうね。どうして王様ゲームなんかする気になったのよ」


 四葉が質問すると、謙信は待ってましたとばかりにニヤニヤしだした。


「ふっふっふ……。それはね、友達になったばかりのあやめともっと親睦を深めるためさ! どうだ、とてもいい提案だろう!」


「確かに悪くはないけど、言い方が何かムカつくわね」


「少しくらいカッコつけたっていいでしょ!?」


 しかし四葉の言う通り、提案自体は良いものだ。


「まあまあ、元気だして謙信。王様ゲームをやるのは賛成だけど、どうやってやるの?」


 四葉に出鼻を挫かれてへこんだ謙信を慰めながら、苺が間に入って話を進める。


「よくぞ聞いてくれた! 実はこんなこともあろうかと、ちゃんと用意してきたのさ!」


 するとさっきまでへこんでいたのは何だったのか、謙信はすぐに元気を取り戻して、王様ゲーム用とみられる紙くじを取り出した。


「おー、用意がいいじゃない。ちゃんと五枚あるわね」


「だろー? 何人でもいいように作ったからな! 予備もまだあるぞ!」


 だったらやる分には、不便は無さそうだな。後は……。


「あやめ、王様ゲーム知ってるか?」


「ううん、知らない……」


 やっぱり。あやめは記憶喪失なのでルールを知らないようだった。


「なら僕が教えてあげよう!」


 そう言った謙信は、得意気にルールを語りだした。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆


★王様ゲームのルール


①1~4の数字と『王様』の文字が書かれた五枚の紙くじを、一人一枚ずつ引いていく。


②『王様』と書かれたくじを引いた人は、一度だけ残りの四人に命令を出すことができる。ただし、指名は個人名ではなく1~4の番号で言わなければならない。


③王様の命令は絶対。(しかし、あまりにキツイ内容であれば命令し直し)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆




「という感じかな。分かったかあやめ?」


「うん、だいたい分かった……! 楽しそう……!」


「おーけー! じゃあ早速始めようぜ!」


 謙信は全員の準備が整うのを見計らい、部屋の真ん中にくじをおく。俺達五人はくじを中心に、円を書くように座った。


「僕が掛け声出すから、皆一斉に引いてくれ」


 謙信の言葉に、皆が頷く。


「よし行くぞ……せーの!!」


「「王様だーれだ!!」」


 各々(おのおの)、自分の引いたくじの番号を確認する。俺は3番か。


「よし、僕が王様だあ!!」


 ガッツポーズをする謙信。最初の王様はこいつか……。しょっぱなから一番危険な命令を出しそうなやつが王様になったな。


「では命令を出そう! 3番は王様にキスをブゴォッ!!?」


 命令を言い終わる前に、俺と四葉のダブル顔面パンチが謙信を襲う。


「「……次、変な命令を出したら分かってるな(わね)?」」


「は、はい! 肝に命じておきます……」


 俺達の殺気が伝わったのか、素直に言うことを聞く謙信。ふう、危なかった。もう少しでこいつとキスするはめになるところだった。


 謙信とキス……想像しただけで強烈な吐き気が。おえ。


「純、顔色が悪いけど大丈夫?」


「大丈夫だ。心配してくれてありがとな、苺」


「う、うん。無理はしないでね?」


 苺が俺の背中をさすさすしてくれる。ああ、この子は天使か。さっきの気持ち悪さが薄れていく。


「そ、それじゃあ、3番が右隣の人の頭を撫でる……でどうだ? これくらいならいいだろ?」


「まあ、そのくらいなら……」


 渋々了承しつつ、右隣にいる人を確認する。


「げっ、四葉!?」


 何てことだ。よりにもよって四葉か……絶対殴られる。


「『げっ!?』って何よ。あたしを撫でるのがそんなに嫌なわけ?」


「あ、いや俺じゃなくて。お前が嫌なんじゃないかって」


「……命令なんだから仕方ないでしょ」


 あれ、意外と嫌がってない? もしかして怒られないで済むのか?


「さっさとしなさいよ。あたしだって恥ずかしいのよ?」


「ああ、すまん! 速攻で済ませるから!」


 急いで四葉の元へと近づく。見ると、四葉の頬がほんのり赤くなっていた。うわあ、四葉も恥ずかしがってるんだ……! 何だか余計にドキドキしてきた。


 普段は毒舌が目立つ彼女だが、見た目は抜群に整っている。ピンク色の綺麗な長い髪と透き通った双眸(そうぼう)を持ちながら、肌も真っ白でツヤツヤ。学校トップクラスの容姿を誇っているとの噂もある。


 その白い頬が今は蒸気している。普段の彼女とのギャップもあって、とても可愛らしく感じてしまう。


 落ち着け俺、相手は四葉だぞ……! 何年も一緒にいるんだ、今さらドキドキすることなんてないはず。


「よし、触るぞ?」


 そっと手を、四葉の頭の上に乗せた。そのまま、出来るだけ優しく左右に動かす。


「んっ…………」


 四葉は抵抗することなく、されるがままに撫でられていた。何だよ、いつものこいつだったら嫌がってすぐ手を払いそうなのに。全然嫌そうな様子ないじゃないか。


『命令。篠田四葉の顎下(あごした)も撫でろ』


「(猫か!!)」


 頭を撫でている途中に、神(変態)の命令が下される。ああ、俺終わったな。今度こそ殺される。


「四葉、すまん!!」


「ん、何よ急に謝って……ひゃっ!?」


 命令通り、もう片方の手の指で四葉の顎下も撫でる。


「ちょ、ちょっと! それは恥ずかしすぎるわ……」


 何やら文句は言うものの、抵抗はしない四葉。こんな変態行為をしても殴られないなんて、奇跡だ!


 とはいえ、これを皆の前でやり続けるのは俺にとっても四葉にとっても地獄だ。ついに耐えきれなくなり、手を離した。


「あっ……」


 手を離した時の四葉の声が何だか切なそうだったのは、多分俺の勘違いだろう。


「悪い、調子に乗りすぎた!!」


 目一杯頭を下げる。神の命令とはいえ、頭だけでなく顎下まで触ってしまったのだ。幼馴染みとはいえ立派なセクハラである。一発は拳を食らう覚悟だ。


「もう、あそこまでやるなんてびっくりするじゃない……」


 しかし予想とは裏腹に、拳は飛んでこない。顔を真っ赤にしながら文句をいわれただけだった。


「あれ、殴らないのか……?」


「べ、別に殴るまではしないわ」


「そ、そうか? ありがとうな」


「え、ええ……」


 許してもらえてラッキーだ。俺はホッと胸を撫で下ろして、元の場所に座った。


「いいなあ四葉、幸せそう。ボクも撫でられたい……」


「ん、何か言ったか苺?」


「え!? な、何も言ってないよ?」


「そうか?」


 おかしいな。何か呟いていると思ったんだが。


「純、私も撫でてほしい……」


「うおっ、あやめ!?」


 いつの間にかあやめが目の前まで迫ってきていた。な、なに言ってるんだこいつは!?


「ん……。撫でて……?」


 こちらに頭を向けて、撫でてアピールをするあやめ。


「だ、ダメだ! そんな命令されてないだろ? それに命令していいのは王様だけだ」


「むー……。じゃあ我慢する……」


 説得が成功したのか、あやめはしぶしぶといった感じで元いた場所へと帰っていった。


「なかなかいいもんを見せてもらったぜ、四葉さんよ」


「……謙信、あんた覚えてなさいよ」


「いやいや。あんなに幸せそうな顔しておいて、その反応はないんじゃないの~? むしろ感謝して欲しいぐほぉっ!?」


「だ、黙りなさい! いいから二回目始めるわよ!」


「わ、分かりました……」


 腹を殴られた謙信は、殴られた箇所を押さえながら皆の紙を回収して、またくじを作っていた。


「それじゃあ二回目いいかー?」


 全員が頷く。


「よし、せーの!」


「「王様だーれだ!!」」


これからも章の終わりに番外編や過去編などを投稿しようと思っています。今後ともよろしくお願いします。

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