4.いつもの日常
春休みを含め約三か月ぶりの学校生活だったが、思ったよりも順調に進んだ。
クラスについては、なんと奇跡的に謙信、苺、四葉の三人全員と同じクラスだった。おまけに去年からの顔見知りも多く、比較的すぐにクラスメートたちと馴染むことができた。
そして不安要素であった授業についてだが、先日中間テストがあったらしく、ほとんどの授業が新しい単元からだった。よって以前の授業の内容を使うことがほぼなく、何とかついていくことができた。
俺が入院している間の授業の内容は、苺や四葉が俺の分までノートをとってくれていたので、それを復習すれば問題ないだろう。二人には感謝だ。
こうして復帰後の不安要素は軒並み解消し、無事に普通の学校生活を送ることができそうだった。
そして時は昼休み。謙信、苺、四葉、俺の四人で机を囲んで、これから昼食をとるところだ。
「純、久しぶりの学校はどう?」
苺が話を切り出す。
「今のところ順調だな。これまで通り楽しく過ごせそうだ」
「そう、よかったね。ところで、お弁当は?」
机上には三つの弁当箱。俺以外の三人は弁当を用意していた。
俺も普段は弁当を持ってきていたので疑問に思ったのだろう。
「それが今日は持ってきてないんだ。久しぶりすぎて母さんが作るのを忘れたらしい」
「そうなんだ」
「だから食堂か購買に買いに行くしかないんだが、面倒だな……。というわけで謙信、チョコパイとおにぎり買ってきてくれ」
そう言って俺は謙信にお金を差し出した。
「いや行かねーよ!? 何普通にパシろうとしてんだ!」
「あたしバウムクーヘン欲しい」
「四葉さん話聞いてた!? 買いに行かないって言ってるでしょ!」
二人とも断られてしまう。つれない奴め。
「じゃあ自分で行くか。四葉、バウムクーヘン買ってこようか?」
「ええ、頼むわ」
「最初からそうしろよな……。純、ついでにサイダー買ってきてー。後でお金やるから」
「何だよ謙信、お前だって人をパシってんじゃねーか。まあいいや、了解。苺は?」
「ボクはいいよ」
何だ、遠慮することないのに。ちなみに苺は自分のことを『ボク』と呼ぶ。いわゆるボクっ娘ってやつだ。
「じゃあ行ってくる」
俺は購買へと向かい、教室を後にした。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ただいま」
数分後、教室に戻ってくる。
「「「おかえり」」」
「はい四葉。バウムクーヘンだ。お代はいらん」
「あら、気前がいいのね。ありがと」
「おう」
バウムクーヘンなんて120円くらいだし、気前がいいってほどでもない。
「ほら謙信も。おしるこだ。お代はいらん」
「いや僕サイダーって言ったよね!?」
文句を言う謙信。せっかく買ってきてやったと言うのに、なんて我儘な男なんだ。
「タダで買ってやったんだぞ。文句言わずに飲め」
「嫌がらせのために無駄使いするな! うえっ、このおしるこかぼちゃスープみたいな味する……」
飲んだ瞬間まずそうな表情をする。お気に召さなかったようでとても残念だ。
「えへへ、やっぱり純がいると楽しいね」
「まあ、退屈はしないわね」
「確かに賑やかにはなるな」
「な、なんだよ突然」
三人から口々に褒められ、少し照れくさくなる。どうして急にそんな話になるんだ?
「ううん。バラバラより、皆で一緒にいる方が楽しいなって思っただけだよ」
笑顔で言う苺は、本当に楽しそうだった。
「苺……。そうだな」
俺だってこいつらと一緒にいるときが一番楽しい。しばらくぶりに四人が揃ったことで、皆がそれを実感したのだろう。ただ、何か忘れてるような……。
「…………」
「おい純、どうしたよ。急に考え込んじゃって」
「いや、なんでもない。俺もお前らといるのが一番楽しいよ」
「へへ、よかった!」
いや、今は余計なことは考えずに、こいつらと楽しむことを考えればいいんだ。
学園生活への心配もなくなったことだし、青春を全うしてやろうじゃないか!
『命令。今日の放課後、一人で自宅倉庫二階の部屋へ行け』
……ああ、こいつの存在を忘れてた。
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