3.久しぶりの登校
あれから約二か月が経って、俺はようやく退院した。
ようやくといっても、医者が言うには奇跡レベルの回復の早さらしい。
致命傷でもおかしくなかった程の大怪我を負ったというのに、特に後遺症が残るわけでもなく、わずか二か月ほどで完治するなどありえない、と言われたぐらいだ。
神も『このままだとお前は死ぬ』とか言ってたしな。本当に命が危なかったのだろう。
それでもこうして死ぬことなく、短期間で回復できたのは、あの神の力が働いたからなのだろうか。
そこはよく分からないが、とにかく復活することができたんだ。やっと学校に通える。
今は怪我のことは忘れて、これから始まる学園生活のことだけを考えよう。
そう切り替え、幼馴染たちと一緒に久しぶりに登校していた。
「もう怪我大丈夫なんだよね?」
「おう。心配してくれてありがとな、苺」
「ったく。最初に事故のことを聞いたときは、そりゃビックリしたんだぜ」
ため息をつきながら言う謙信。事故当時のことを思い返しているのだろう。
……俺の場合、思い出すだけで体がゾクッとする。
「そうね。さすがに無茶しすぎよ、純」
「はは、すまん四葉」
四葉は溜め息を付きながら呆れるように言う。野良猫を助けるためとはいえ、自分でも無謀な行動だったと思う。
「純が『僕は死にましぇ~ん』って言いながら迫りくるトラックを生身で受け止めようとした、なんて聞いたときは、さすがのあたしも驚いたわ」
「武田○矢か!!」
誰だよ、四葉にこんなくだらない嘘を教えたやつは! ドラマの見すぎだぞ!
しかも俺の場合、普通に轢かれちゃってるし。結果的には本当に死んでないけど。
「おかしいな、僕が聞いたのと全然違うぞ」
「当たり前だわ」
1ミリも事実と合ってないからな。というかリアルでやってたとしたら頭おかしい人じゃねーか。
「僕は、純が異世界転生を目指して『短い人生だったな……』と儚げに呟きながら自らトラックに突進していった、って聞いたんだけど」
「だとしたら俺ファンタジーの読みすぎだろ!」
確かに異世界っぽいところには行ったけど、別に狙って行ったわけじゃない。
てか本当に誰だよ、こいつらに出鱈目な事故の原因を吹聴しているのは。
「ぷっ……! こら二人とも、嘘つかないの」
少し笑いながら二人を注意する苺。
「ふん、冗談に決まってるじゃない」
「ははっ、そうだぞ! まさか本気にしてるんじゃないだろうな?」
「なんだ嘘か。脅かすなよ……」
良かった。もしこんな話がクラスメートにまで広まっていたら、完全に頭おかしい人だと思われていたに違いない。
「ふふ、純は猫を助けようとしたんだよね?」
「まあな。ちゃんと事実が伝わっててよかったよ」
ちなみにその猫は聞いた話によると、無事に保護されたらしい。
今は保健所に引き取られたとか。なんにせよ、助かったみたいでよかった。
「優しいのは純の魅力だけど、もう無茶はしちゃダメだよ?」
「そうだな、二度とトラックに轢かれたくないし」
俺だってあんな痛くて苦しい思いはもうしたくない。今回は命が助かったが、次も助かる保証はないからな。
「とか言って、また道路で猫かなんかが轢かれそうになってたらどうするのよ」
「うーん、そうだな……」
ジトッとした目で四葉が言う。確かに、あんな目には二度と遭いたくない。でも。
「助けちまうかもな。どんな命でも見殺しにはしたくないし」
「「…………!」」
例え命の危険があっても、目の前でそれが起こったらきっと助けに行くだろう。どんな動物であっても、目の前で死ぬところなんて見たくない。
「いやでも、それで死んじゃったら元も子もないよなあ」
「そうだぜ? お前、何も学んでねーじゃん」
「うるせえな謙信。ちゃんと気を付けるっつの」
同じ過ちを繰り返さないように気を付けることは前提として、できれば二度とそういう状況に遭遇したくないものだ。
「……あんな事故に遭ったのに、まだ猫の命を思いやるなんて。純は凄いなあ」
「……本当にお人好しなんだから。少しは自分のことも大事にしなさいよ」
苺と四葉が小さい声で何か言っていた気がするが、よく聞こえなかった。
「何か言ったか?」
「「何でもない」」
「お、おう」
ぴったりと息を合わせて言う二人。さすがは幼馴染と言ったところか。
なんやかんや話をしていたら昇降口まで着く。ついに俺は、久しぶりの学校に足を踏み入れた。
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※一応書いておきます。この作品はフィクションです。実在する人物、団体とは一切関係ありません。




