11.人見知り対策会議2
意識を失った苺を保健室に送り届け、一人で教室に戻る。
「お、いたいた。どこ行ってたんだよ純~」
謙信と、隣に四葉がそれぞれ並んで席に座っていたので、俺も向かいの席に座る。
「苺と一緒に、他のクラスの人と話してた」
「そう。でも帰って来たのは、グランド役に意気揚々と立候補して落とされた可哀想な兵士さん一人だけみたいだけど」
「おい四葉、傷を抉るな」
俺が言って欲しくないところを的確に当ててきやがって。忘れようと思ってたのに。
「それで、主役のお姫様はどうしたの?」
「気絶したから保健室に運んだ」
気絶といっても、昼休みが終わる頃には復活するらしいが。
「「は?」」
二人が意味が分からん、といった表情をする。さすがに脈絡がなさすぎたので、これまでの経緯を説明した。
「という訳なんだ」
「ふーん、それでお姫様を保健室のベッドに運んで襲ったと。この変態野郎、死ねばいいのに」
「変な想像するな!!」
当たり前だが、ベットに運んだだけで変なことは何もしていない。想像だけで貶されるなんて理不尽だ。
「なるほどね、友達作りか~。確かに自分で友達を作れるようになったら、人への苦手意識も薄れるかもね」
謙信はちゃんと聞いてくれていた。なんだこいつ真面目ぶりやがって。
「冗談はともかく、このままだとあの子、緊張して演技なんてできないわね。何とかしないとダメだわ」
二人の意見を聞いた感じ、どっちも俺と同じような考えをしてるっぽいな。
「分かった、協力するよ!」
「もちろんあたしも協力するわ。で、あたし達は何をすればいいのかしら?」
助かった。この二人なら協力してくれると思っていた。
「ありがとう二人とも。早速相談させてくれ。今日話してた人と明日も会うことになったんだけど、今の苺じゃまた緊張して話せなくなりそうなんだ。だから明日までに何とか会話できるようになってほしいんだけど、どうすればいいか分かんなくてさ。二人にも考えてほしいんだ」
早速二人に相談する。さて、結構難解な問題だ。
難解な理由は、明日までに赤の他人と話す以外の方法で、苺が無理なくできる、あがり症の克服方法を探さなければいけないから。
二人も頭を悩ませている様子。うーん、どうすればいいんだ。早く何とかしないと神の命令を達成できないし、何より劇を成功させることができない。それだけは、苺のためにも避けたい。
「そうだ、僕達が変装して苺に話しかけるのはどうだ!?」
謙信が思い付いたように言う。
「変装ってどうやるんだよ」
「覆面を被る(キリッ)」
「不審者じゃねーか! 却下だ!」
覆面三人に話しかけられるなんて、苺からすると誘拐犯にしか見えないだろう。
「じゃあこうしましょう。純が覆面を被って苺に話しかけてるところを、あたしが殴り倒す。これならどう?」
「それ単に俺が殴られるだけじゃねーか! 苺のあがり症全く解決できてないだろ!」
この人はどれだけ俺のことが嫌いなんだろうか。一応小学校からの付き合いなのに……涙が出そうだ。
「おい二人とも、ふざけてないか?」
二人とも解決する気のない提案しやがって。本当に協力しようと思ってるのか?
「悪い悪い、ちゃんと考えてるって! でもなー、良い案が浮かばんのよな」
何だ、真剣に考えて浮かばなかっただけなのか。
俺も今のところ何も浮かんでないし、二人を悪く言うことはできない。
「一応あやめにも相談してみたらどうかしら?」
「いや、もうあやめには昨日話したんだ……って、あれ?」
そういえばあやめは、まだ苺と友達になったばかりだったな。昨日だって、苺はまだ完全にあやめに慣れている様子ではなかった。
つまり苺にとってあやめは、少し緊張はするもののまだ会話が可能な相手……!
「そうか、あやめと二人で話させればいいんだ!」
他人への緊張を克服する練習相手として、あやめはうってつけだった。
「なるほど、それが一番丁度いいかも」
「その手があったわね!」
二人も俺と同じ考えに至ったのだろう。
「よし。じゃあ苺が保健室から帰ってきたら、溜まり場に行くように言っとくよ。あやめにも事情を説明してそこに行かせるから、俺達は二人の様子を影で様子を見守ってようぜ」
「待って純。苺は気絶したって話だけど、具合は大丈夫なの?」
「ああ。興奮しすぎてちょっと目眩起こしただけらしいから、少し休めば完全復活するらしい」
「興奮? まあ、少し休むだけでいいなら良かったのかしら?」
「とにかく僕達は放課後、苺に見つからないようにこっそり純の家に集合だな」
「ああ。一応苺には少し遅めの集合時間を言っとくよ」
こうして放課後、苺の対他人(東条さん)克服大作戦が実施されることになったのだった。
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