12.二人っきりでの会話(女子同士)
放課後。俺は昼休みに立てた作戦どおり、あやめと苺の二人に溜まり場へ行くように言っておいた。
そして少し時が経過した今。あやめは既に溜まり場にいて、苺が来るのを待っている。
一方見守る側(俺ら)はというと……。
「ちょっと、いくらなんでもここは狭すぎないかしら……?」
「仕方ねーだろ、クローゼットの中なんだから……! ここしか隠れるところないんだよ」
そう、俺と四葉の二人はクローゼットの中に隠れていた。
クローゼットとはいえ、この部屋で誰かが生活しているわけではないので、服は入っていない。俺が部屋を発見したときから置いてあった、ただのインテリアみたいなものだ。
だから二人でも入れたのだが、さすがに高校生二人が入る空間にしては狭かった。入れはするものの、どうしても腕とか足とかが触れ合ってしまう。
「(うう、純とこんなにくっついてる……! 恥ずかしい……)」
「ん、何か言った?」
「こんなドブネズミの臭いがする悪臭男が近くにいるなんて、耐えられないって言ったのよ」
「俺そんな臭かったのかよ!? すみません少しだけ我慢してください……」
毎日お風呂に入っているというのに、ここまで言われるなんて。もしかして俺が気づいてないだけで、周りはいつも『あいつ臭くね?』とか思ってたりしてるのか?
もしかしたら今も、暗くて見えないが四葉が超絶嫌そうな顔をしているかもしれない。うわ、急にめちゃめちゃ不安になってきた。後で謙信とか他の人にも聞いてみよう……。
ちなみに謙信は急用で来れなくなったらしく、今ここにはいない。あいつ、来たがってたのにな。
バタンッ……。
部屋の戸が開く音がする。誰か来たみたいだ。
きっと苺だろうが、クローゼットの中にいるので部屋の中を見ることができず、確認できない。
「あ……。こ、こんにちは、あやめちゃん」
「ん……」
ぎこちない挨拶が聞こえる。やはり苺が来たようだ。
「じ、純達は一緒じゃないの?」
「今日は来ないよ……」
「そうなんだ……ってえええ!?」
俺達が来ないこと(本当はいるのだが)を知らなかった苺は、当然ながら驚いているようだった。
「来ないって、あやめちゃん以外の皆が来ないってこと……?」
「うん、そう……。今日は私たち二人きり……」
「そ、そうなんだ」
「…………」
しばらく沈黙が続く。おい、どっちでもいいから何か話題出せ。じゃないと作戦が成り立たないだろ。
「じ、じゃあ」
ようやく、苺の方が口を開く。お、ついに自分から話せるようになったのか?
「三人もいないんじゃ仕方ないし、ボクもう帰ろうかな……」
かと思ったら、沈黙に耐えかねて帰ろうとしてるだけだった!
やばいぞ、苺が帰ろうとすることを想定してなかった! このままでは作戦失敗に終わってしまう!
「(ちょっと、まずいんじゃないのこれ……)」
四葉も同じ危機感を抱いているようだった。二人に聞こえないように小さな声で話しかけてくる。
「(ああ。このまま苺が帰ったら、人見知りを克服できないまま明日になっちまう。何とかしないと……)」
「(どうする? あたし達が突撃して強制的に引き留める?)」
「(いや、それだと苺のためにならないだろ)」
「(ならどうしようっていうのよ!)」
「(それが分かんねーから困ってるんだろ!)」
どうしようもない状況に俺らが慌てふためいていると。
「わ!? な、何、どうしたのあやめちゃん!?」
何やら苺の素っ頓狂な聞こえた。な、何だ? 今度は何が起こったんだ?
「何って、抱きしめてる……。ぎゅー」
「そ、それはわかるけど……!」
どうやらあやめが苺に抱きついているようだ。いきなりどういうつもりなのだろうか?
「仲良くなりたいのぎゅー……」
「へ?」
「苺と仲良くなりたいのぎゅー……」
「あやめちゃん……」
どうやらあやめなりのスキンシップだったらしい。確か、俺にも初対面の時抱きついてきたっけ。
「やっぱり私と二人きりだと嫌……?」
「そ、そんなことない! ボクだってあやめちゃんと仲良くなりたい……けど」
「けど、緊張しちゃうの……?」
「……うん。ごめんね、人見知りで……」
苺は申し訳なさそうにそう言った。
「じゃあ、緊張しなくなるまでずっとぎゅーしよ……?」
「ふえ?」
「ずっとくっついてたら、そのうちきっと落ち着くから……」
「あやめちゃん……」
「そしたら、苺といっぱいお話しできるようになる……。そうなれたら私、とっても幸せ……」
「そこまで思ってくれてたなんて……。ありがとう、あやめちゃん。ボクもあやめちゃんといっぱいお話しできるようになりたい」
「ホントに……?」
「うん。だ、だからボク落ち着くまで、抱きしめてくれる?」
「ん、分かった……! ぎゅー……」
「ボ、ボクも。ぎゅー……」
そこからしばらくの間、二人は抱き合っていたようだった。
「(なんだこの甘々な展開は!?)」
まさかこのまま二人は、いけない関係になってしまうというのか……!?
「(死ね、変態)」
ゲシッ!
「(ぐはぁっ!?)」
興奮していたら、四葉に横腹を殴られた。理不尽だ……。
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