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9.人見知り対策会議

 文化祭についての取り決めをしたHRも終わり、放課後。


 俺と苺、そしてあやめの三人は溜まり場に集まっていた。ちなみに謙信と四葉は用事があるとのことで、今はいない。


「はああああ……。ボクの人生終わった……」


 また深いため息。今日は何回、このため息を聞いただろうか。苺のソフィア姫役が決まったときからずっとこの調子だった。


「そんなに気を落とすなって。主役に選ばれたんたぜ? 皆も苺なら適任だって言ってたし、自信持てよ」


「主役だからダメなんだよー! お姫様役なんて目立つ役、恥ずかしくて出来るわけがないじゃないかあ!」


 何とか慰めようとするもすぐに反論され、逆効果に終わってしまう。苺はひとしきり大きな声で文句を言うと、また深いため息をついた。


「ねー純、苺はなんでこんなに落ち込んでるの……?」


 あやめも苺の様子が気になるようだった。


「それがな。苺のやつ、文化祭の演劇でお姫様役をやることになっちまったんだよ。人前に出るの苦手なのにな」


「ぶんかさい……? おひめさま……?」


「あーすまん、分かんないか。まあ簡単にいうと、皆の前ですごい人の真似をしなきゃいけなくなって、それが恥ずかしくて嫌だーって話だ」


「そう……。大変なんだね……」


 だいたい理解したのか、あやめは同情したようにそう言った。


「苺にとっては相当きついだろうな」


 しかしいくら嫌でも、もう決まってしまったことだ。苺には酷だが、何とか元気を出してもらってソフィア姫役を受け入れてもらうしかない。


 と、俺が考え込んでいると。


「ねー苺、ちょっといい……?」


「ど、どうしたのあやめちゃん?」


 あやめが苺に話しかける。話しかけられた苺はというと、出会って数日なのでまだ少し慣れていないのか、若干キョドっていた。


「苺はどうして、人と話すのが苦手なの……?」


 あやめが口にしたのは、純粋な疑問だった。


「え、急に言われても。そ、それはなんというか……すごく緊張するからかな……?」


 そう、苺は他人と対面すると過度に緊張してしまう。つまりあがり症なのだ。昔、まだ苺と出会ってすぐの時に教えてもらった。


 大人数の前で話すことが苦手なのも、同様の理由だった。


 ということで、今回の演劇を成功させるためには、そのあがり症を何とか克服しなければならない。


「よし、苺。苦労はするだろうが、何とか演劇を成功させるぞ」


「どうやって? 今さら役を変えてもらうのは無理だと思うよ?」


「ああ、姫役はやるしかない。だったら姫役を緊張せずにやれるようになればいいんだ」


「それができないから困ってるんじゃないか!」


「なら文化祭までの約一か月間で、できるようになればいい」


「え?」


 苺が表情に疑問を浮かべる。


「いいか、苺。お前は他人を前にすると緊張でテンパってしまうから、人との会話や人前で何かをすることが苦手だ。だから劇の本番までに他人に慣れて、それを克服しよう」


「他人に慣れるって、どうやって?」


「簡単だ。文化祭までの一か月で、俺たち以外のいろんな人とたくさん会話をして、友達を作るんだ!」


「ええっ!?」


 苺が驚きと悲痛の混ざった声で叫ぶ。知らない人との会話が苦手な苺には悪いが、緊張を克服する一番の方法は『何度も同じことをして慣れる』、これしかない。


 人に慣れることができれば、大衆の前でも過度に緊張せずに演技ができるようになるかもしれない。


「そ、そんな! 話すだけならともかく、友達なんてハードル高いよ!」


「そうだな、友達を作るのはあくまで目標だ。今はまず、いろんな人と会話して少しでも緊張感に慣れるところから……」


『命令。今週中に鶴日苺の友達を作れ』


 俺の言葉を遮って、無慈悲な神の命令が脳内に下される。


「……と言いたいところだけど、やっぱり今週中に友達をつくろう」


「何でちょっとフェイント入れたの!? しかも今週中って、今日水曜日だからあと二日しかないよ!?」


 俺も鬼畜だとは思う。しかし神の命令は絶対。従わなければならないので、俺にはどうしようもなかった。


「頑張ろうな、苺! 俺も全力でサポートするから!」


「え~、本当に言ってる?」


 愕然とする苺。可哀想だが、俺には励ますことしかできない。


「まあ……純がそう言うなら頑張る……」


「ありがとう、苺!」


「うう……にしても今週中に友達を作れって、理不尽だよ……」


 恨めしそうに文句を言われる。俺は心の中で何度も謝ったが、いじける苺もちょっと可愛いと思ってしまった。


閲覧ありがとうございました!

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