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「それなら魅了にかからないようにしようぜ!」  作者: イチイ アキラ


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59 「氷の公爵子息」。氷適性、万々歳だから!


「それで僕、だけど……」

 メルヴィンの攻略法は。

「氷適性て、ハズレスキル、不遇職じゃない現在」

「それな、ですね」

 またリィナもうなずいた。ルカも。


 本来のメルヴィンはこの世界では不遇職であった「氷適性」に悩んでいたのが、最大の突付きところだ。


 けれども。


「僕、氷適性、万々歳だから!」

 遠いどこかで氷適性のもとである氷雪の神が嬉し泣き。

「それに僕が氷適性で、氷魔法得意として……畑凍らせるわけでなし? 悩む必要ないわけで?」

 かなり前からそのあたりは「原作通りならその僕、メンタル弱々、恥ずかしい頓珍漢じゃん」と、メルヴィンは既に悶え済み。今はもう心頭滅済み。

 それこそ、明鏡止水だ。

「そもそも、畑をたがやすのに魔法使いませんね」

 メルヴィンに付いてからコーディング公爵領にも供をしたことがあるルカも続ける。

「きちんと見廻り、領地に異変がないか皆の声を聞いて、きちんと予算を組んで。災害に備えたり最新の農機具などを取り入れたりすることが僕の役割!」

 それだな、とリィナも話しを聞いてうなずいた。

 公爵子息が長靴はいて鍬持って畑仕事、それは分野が違うというものだ。適材適所という言葉が世にはある。

 メルヴィンは領地を治める側であって、領民の皆様がつつが無くすごせるように整える側なのだ。

 ゲームの設定が、そのあたりが甘いとしか。

 おそらくメルヴィンの銀髪で冷たそうなビジュアルに合わせた「氷の(・・)公爵子息」という設定がつけられたのだろう。王太子の幼馴染で冷徹に腹心をつとめる、真面目なキャラクターとして。

 そこからの氷適性。

 まぁ、「氷の公爵子息」が、実はその氷適性に悩んでいるというのは、ゲームプレイ側には面白かったのだろうか。

「オーブンとかコンロとかに相性良い火適性、うらやましいとは思うよ。でも、菓子作りには氷適性ありがたいし」

 それにメルヴィンの家の料理長さんが火適性の持ち主なので。

「同じ属性が揃っているより、違う属性で助け合えるほうが良かったんだよね」

 オーブンを使うときなどは彼に助けてもらっている。

「そもそも、メルヴィン様が氷適性だったから……冷蔵庫がこの世界に爆誕したし、だから帝国の皇子様も記憶よみがえったんですよね……」

 ありがたーっ、とリィナに拝まれる。

 おかげで米が食えているわけで。



 しかし、これは本当にそうだとリィナは拝んだ手の向こう、眼鏡の奥でも思う。

 彼らと関わるようになり、話を聞いて。

 対策のあれやこれやも。

 この銀の髪の青年がすべて、だ。

 蝶の羽ばたきの一つで嵐が起きるという逸話もあるが、それにあたると思いもする。

 彼が前世を思い出さねばこの世界はどうなっていたか。

 帝国の後継者争いも、彼のおかげで記憶を取り戻した第三皇子の動きにより変わってきているという。

 同じように記憶を取り戻したリィナであるが、自分では彼のように行動できたかどうか。

 もちろん公爵という身分あるところに生まれ変わった差もあろうが、それだけではないのも彼には感じる。

 彼の陣営に入れたことは、生まれ変わってからの何よりの幸運だ。

 やはり拝んでしまう。感謝だ。


 彼ならきっと「主人公」には惹かれはすまい――強制力にも負けはしないだろう。


「さて、これが一番問題なタイプかもですが」


 リィナが「主人公」「取り巻きA」として見てきたところでのやっかいな「主人公」タイプ。

 第一がレオナルド目当ての突進突撃型。もしくは貴族ルールに不慣れを装う型。

 第二が二周目狙いのフリードリヒやもしかしたら総逆ハーレム目当て破廉恥型。リィナ内心呼称メルヴィンの地雷。

 第三が他の攻略対象狙い。

 そして第四の「主人公」は。


「天然の「主人公」さんです」


 天然。

 それはすなわち。


「前世の記憶を取り戻したわけでもなく、何か狙いがあるわけでもなく」


 この世界に産まれて生きている、ある意味ちゃんとした「主人公」だ。

 この世界のイレギュラーな自分たちではなく。

「それは、それは……なんか……」

 怖い。

 存在が強そう。

 思わず震える三人は、小さくうなずきあった。

「天然の主人公てことはつまり、この世界の主人公でもあるんですよね」


 それはきっと、強制力というものは――彼女の味方になるのでは。



 そうしてメルヴィンは思い知る。

 自分がこの世界を変えたということを。

 あちらこちら穴が空いている世界の無理やりな仕組みやしきたりなのは、彼らが足を落としやすいよう世界が(・・・)穴を空けて待ち構えていることを。


 凶魔獣や様々な封印や。

 世界の歯車が動いてしまっていることを。


 その――強制力を。



 これにて第三幕。

 対策した攻略対象たちの現在と。

 リィナ加入と「主人公」タイプ分けにて。


 メルヴィンも気がついていたり察知できてなかったりするポコポコ穴ぽこあいている設定なのは、彼らが足を落としやすいよう空いている強制力です、とこっそりと。皆様はお気づきかと。決して僕が忘れていたりだなんて…あははは。



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